生活の質(QOL)低下させない「減薬」を!~持続可能な社会保障制度に向けて

(写真:アフロ)

10月から新たな社会保障に充てる財源を確保するため消費税が10%に引き上げられた。子育て世代に対し幼児教育の無償化などを図り、全世代型の社会保障制度へ舵を切る政策だ。一方、日本の社会保障制度を持続可能にするためには、新たな財源確保とともに、医療、介護、年金の給付額をいかに抑制するかが求められている。

2018年度の歳出は約98兆円、社会保障関係費は約33兆円(33.7%)だ。そのうちの35.8%に当たる12兆円を医療費が占める。厚生労働省の「平成30年度 医療費の動向」によると、医療費42.6兆円のうち調剤費が7.5兆円(17.6%)となっており、医療費抑制のためには調剤費の削減が不可欠だ。

多額の調剤費の理由のひとつに過剰投薬が指摘されている。長寿時代には慢性疾患の高齢者が増え、対処療法的に処方された薬が数多くあるからだろう。薬局では高齢者が抱えきれないほど大量の薬を受け取っている光景を見ることも珍しくない。

過剰投薬は薬剤費や残薬の増加につながるばかりでなく、多剤併用による副作用のリスクを高める。高齢施設では複数の薬を服用している高齢者も多く、薬剤管理が難しい。施設では薬の数を減らすため、有効な薬効成分を含まない見せかけの薬「偽薬」を代替投与することで「減薬」し、実際に症状が改善されたケースもあるという。

本来は、新薬の有効性を確かめる臨床実験に使われる「偽薬」だが、服用したという精神的な安心感が病状の改善に役立つことがある。「プラセボ効果」というそうだ。昔から『病は気から』といわれているが、プラセボ効果の科学的根拠に関する研究も進んでいる。

慢性疾患が増大する人生100年時代には、「かかりつけ医」とともに「かかりつけ薬局」が必要だ。複数の薬剤管理を総合的に行い、患者側の視点に立った丁寧な説明が求められる。非細菌性の感染に対する抗生物質の多用が、その有効性の低下につながることも正確につたえるべきだろう。

服薬を減らす「減薬」は、医療における調剤費の抑制と同時に、慢性疾患等に苦しむ高齢者に対する副作用軽減に役立つ。単に社会保障給付費を削減するのではなく、高齢者の生活の質の向上を前提とした減薬に努めることが重要だ。人間には自然治癒力があり、薬はその手助けをすることが基本ではないだろうか。

大津市のプラセボ製薬は「偽薬」だけをネット販売している会社だ。最近ではその需要が増えているそうで、「偽薬」を減薬の手段として活用することもひとつのアイデアだろう。同社代表の水口直樹さんは、『「偽」は人の為と書き、やさしいウソを売っている』と述べている。