禁煙やレジ袋の廃止、「デファクト」で読み解く現代社会~企業の価値基準もみえてくる

(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

「デファクト スタンダード」(事実上の標準)は、社会の状況や時代の価値観を強く映し出す。喫煙に関しても、以前の航空機や鉄道などの交通機関では「喫煙」、近年は「禁煙」がデファクトだ。企業の事務所や会議室なども同様である。今年7月1日、受動喫煙防止法が一部施行され、学校、病院、行政機関などの敷地内の禁煙はマナーからルールになった。

6月29日、G20大阪サミットが閉幕、2050年までにプラスチックごみの海洋投棄をゼロにするという『大阪ブルー・オーシャン・ビジョン』が宣言された。これまでコンビニエンスストアでは無償もしくは一部有償でレジ袋を配布していたが、今後は原則廃止の方向に向かうだろう。プラスチック製のストローやコップ、皿なども紙製がデファクトになる日も近いかもしれない。

環境ジャーナリストの枝廣淳子さんが発行するメルマガ『Enviro-News from Junko Edahiro』のNO.2700(2019.06.30)では、茨城県守谷市の「すばる調剤薬局」の「レジ袋削減活動」を例示し、デファクト設定を活用して人々の行動を変えるアプローチを紹介している。同薬局では利用者の啓発ポスター記載の文言を、『レジ袋が必要ない方はお申し出ください』から『レジ袋必要の方はお申し出ください』に変更したところ、82%のレジ袋削減につながったという。

行動経済学が教えるように、デファクト設定を変えることが人々の行動を大きく左右する。枝廣さんは、これは多くの人々がデファクト設定に従う傾向が強いことを利用した「ナッジ」(nudge)効果で、人の行動を変えたいときには『選んでほしい選択肢をデフォルトにする』ことが有効だと指摘している。

逆にデフォルトに選ばれた選択肢から企業の価値基準などを窺い知ることもできる。NHKの放送受信料は12か月前払で口座振替にすると割安になる。そのために本制度を利用する人も少なくないのだが、年一度の口座振替は事前・事後の確認通知もなく行われる。

NHKふれあいセンターに問い合わせところ、「希望者には事前通知を出す」との回答だった。NHK受信料の口座振替の場合、「特に希望する人以外は事前通知を出さない」のがデファクトなのだ。年金生活者など受信料を負担する人たちの中には、不意の支払いにより日常の暮らしに支障をきたすこともあるのではないだろうか。

不特定多数にかかわる放送受信料の特性から、NHKの受信料収納のデファクト設定にみる経営姿勢には、視聴者の認識と大きなズレを感じる。「デフォルトにどんな選択肢を選ぶか」は、人々の行動を変える「ナッジ効果」に加え、われわれが企業の価値基準をチェックするリトマス試験紙としての効果もきわめて重要だと思われる。