どうする、中高年の「ひきこもり」~「8050」問題を解く社会的支援と自立した親子関係

(写真:アフロ)

5月28日、川崎市多摩区で登校のためスクールバスを待っていた児童などが殺傷される事件が起こり、6月1日には東京都練馬区で元農水省事務次官による長男殺人未遂事件が発生した。一見すると共通点のないような二つの事件だが、いずれも死亡した前者の51歳の容疑者と後者の44歳の被害者が、長くひきこもり状態にあったということが世間の大きな関心を集めている。

「ひきこもり」というと若い世代を想像する人も多いだろうが、今年3月に公表された内閣府『生活状況に関する調査』(平成30年度)からは意外な実態が見えてくる。広義の「ひきこもり」とは『自室や家からほとんど出ない状態や近所のコンビニ、趣味の用事以外に外出しない状態が6か月以上続くこと』と定義される。同調査の推計では、40~64歳の中高年のひきこもりが全国で約61万人と、平成27年度調査で推計された15~39歳の約54万人を上回っているのだ。

ひきこもりの期間は5年以上が51.0%と半数を超えており、ひきこもりの長期化が窺える。ひきこもりになったきっかけ(複数回答)は、「退職」が36.2%と最も高く、就業状況との関係が深い。中年のひきこもりが多い理由として、バブル崩壊後のいわゆる「就職氷河期」に安定した仕事に就けなかったことが大きいだろう。政府は経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の中で同世代の就職支援を強化し、今後3年間に30万人の正規雇用者を増やす計画だ。

これまで主に家庭内で対処してきた介護や子育ては、徐々に社会的取り組みが進んでいる。しかし、「ひきこもり」はひきこもる人と家族の高齢化により、80代の親が50代の子を支えるという「8050問題」が深刻化する一方、今でも家庭内の問題とみなされがちだ。ひきこもる人の半数はだれかに相談したいと思っているものの、適切な相談先が見つからないなど、社会の支援体制も十分とはいえない。

ひきこもりは本人はもちろんだが、家族の苦痛も大きい。この状況を家庭内にとどめず、社会として捉えることが問題解決には不可欠だろう。子育てや介護がそれを担う人への社会的支援が必要なように、ひきこもりには周辺家族への支援が重要だ。練馬の事件でも、容疑者は周囲に相談することもなく社会的に孤立し、『親は子が成人してもすべて自ら責任を負うべき』という誤った規範に呪縛されていたのではないだろうか。

親の子育て責任は無限に続くのではない。そうでなれば若い世代も子どもを産み育てることを躊躇するだろう。親子は別人格であり、子は親の所有物でも一心同体でもない。確固とした「子離れ」と「親離れ」による互いの存在を尊重することが重要だ。「ひきこもり」問題解決のためには、社会による支援とともに、自立した親子関係を築くことが鍵になると思う。