変わる結婚・出産と伝統的「家族」観~消えた「生涯未婚率」

(写真:アフロ)

先日の新聞各紙は、今後、政府は「生涯未婚率」という用語を原則として使わないと報じた。「生涯未婚率」とは『50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合』で、45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均値で表される。5年に一度実施される国勢調査を基に公表されており、2015年時点では男性23.4%、女性14.1%となっている。

政府が公表する「厚生労働白書」や「少子化社会対策白書」では、すでに同用語の使用を中止し、「50歳時未婚率」と表記している。もともと同用語が使われた背景には、わが国では結婚と出産がセットで捉えられており、女性の出生力が低下する50歳を生涯未婚年齢とみなしたのだろう。

この見直しの背景には、男女ともに平均初婚年齢が上昇する晩婚化の進展や、出産とは別に50歳をこえて初めて結婚する人の増加など、結婚やライフスタイルの多様化がある。最近では著名人の熟年結婚が話題になるなど、社会全体の結婚に対する既成概念も崩れつつあるようだ。

一方、西欧や北欧では事実婚の割合が過半数を超えている国もあり、結婚を法律婚にかぎるのは社会の実態と乖離している。それらの国では結婚の試用期間として事実婚から結婚生活をスタートし、家族の成熟とともに法律婚に移行する人も少なくないからだ。

わが国は少子高齢化という人口構造とともに、家族の形ともいえる世帯構造の変化が著しい。「世帯」とは『住居及び生計を共にする者の集まり』だが、その規模を示す平均世帯人員は、2015年時点で全国が2.38人、東京都ではすでに1.99人(区部は1.91人)と2人を下回っている。

2015年国勢調査による家族類型別一般世帯割合は、「単独世帯」が34.5%、「夫婦のみ世帯」が20.1%と、二人以下の世帯が過半数を超えている。多くの人は「家族」とは複数人で構成されるものとイメージしているかもしれないが、ここでも家族の現状は大きく異なる。

NHKテレビ『きょうの料理』という番組で使用されるテキストでは、以前は4人分のレシピが掲載されていたが、現在では2人分が多い。食事づくりのレシピをみても、近年の日本社会が小規模世帯を中心とする「縮小する家族」の時代を迎えていることがわかる。

日本国憲法では同性婚は想定していないとされるが、世界的には同性婚を認める国が増えている。今日の結婚や家族を巡る状況は多様になり、伝統的家族観にも大きな影響を与えている。変わる「家族」の姿を理解することは、現代社会を読み解く上できわめて重要だ。

かつて夫婦と子ども二人の家族を「標準世帯」と呼んだ。30年以上前の家族社会学では父親や母親がいない「ひとり親世帯」を「欠損家族」と称していた。結婚や出産など家族のあり方は時代とともに大きく変わり、関連する用語も実態に合わせて適切に見直さなければならないだろう。