「紙幣刷新」、その目的は何か?~ キャッシュレス化に「棹さす」政策を!

(写真:アフロ)

新元号「令和」への改元が迫っている。昭和天皇が崩御された「平成」の改元時は、服喪のため自粛ムードが社会全体を覆っていたが、今回はまるで年越しイベントのようなにぎやかさだ。そんななか政府は4月はじめ、新紙幣の発行を2024年度に行うと発表した。

今回の紙幣刷新は改元とタイミングを合わせたわけでなく、ほぼ20年ごとに行うものらしい。日本でも最近はキャッシュレス化が進み、現金を扱う機会が減っている一方で、新紙幣発行の目的は何だろうか。それはキャッシュレス化を促進するのか、それとも逆行するのか。

政府は紙幣の偽造防止を強調するが、偽造が多い中国で偽札が減少した理由は偽造防止技術の成果ではなく、キャッシュレス化が進んだ結果だ。今回の紙幣刷新の目的が偽造防止なら、むしろその財源はキャッシュレス化推進のインフラ整備に充てるべきだろう。

日本は諸外国に比べてキャッシュレス決済比率は低く、政府は2025年までに欧米並みの40%に引き上げることを目標にしている。自販機、小売業のレジ、金融機関のATMの改修等による経済効果も見込まれるが、今後のキャッシュレス化の進展のなかでは効果も限定的だろう。

また、今回の紙幣刷新の背景には、50兆円とも言われる「タンス預金」を消費や投資に向けさせることがあるようだ。キャッシュレス化を促進し、家庭で膨大な現金を死蔵させないためには、高額紙幣の廃止についても議論すべきだろう。

日本は人口減少時代になり、労働力不足が懸念されている。少子化対策とともに労働生産性の向上が必須で、付加価値額と可処分時間の拡大が重要だ。現金決済による無駄な会計処理や現金管理コストを削減し、行政サービスの効率化により時間の浪費を防がなくてはならない。

行政サービスの電子化を目指して導入されたマイナンバーカードが普及しないのも、キャッシュレス化の遅れがひとつの要因ではないか。日本郵政(JP)は2020年から窓口で切手や葉書の購入にキャッシュレス決済を導入するが、パスポート申請等に必要な印紙の購入はできない。

現金大国日本では偽札が少なく、日本円の信頼性は高い。その結果、高い現金依存度が続くことは社会コストの削減にマイナスだ。地方創生にも期待される行政サービスの電子化が遅れることで、国民生活の時間の浪費や質の低下を招いてはならない。

『流れに棹さす』とは、「流れを加速」することで、「流れに逆行」するというのは誤用だ。今回の紙幣刷新がキャッシュレス化に逆行し、誤った「棹さす」ことにならないことを願うばかりだ。少子高齢化・人口減少時代を乗り越える真にキャッシュレス化に「棹さす」政策が求められる。