日本型キャッシュレス社会の行方~ガラパゴス化への懸念

(写真:アフロ)

消費増税とキャッシュレス化

ようやく日本のキャッシュレス化が進みそうだ。2019年10月に予定する消費税の引き上げに対する経済対策として、クレジットカードなどによるキャッシュレス決済に5%のポイントを還元する案が検討されているからだ。

日本のキャッシュレス決済比率は約2割と低く、政府は2025年に4割程度に高めることを目標にしている。キャッシュレス社会の進展は消費者にとって便利なばかりでなく、小売業などの会計処理の省力化や金融業の現金保有コストの削減など、生産性の向上につながる。

また、近年増加している訪日外国人にも便利で、キャッシュレス化の促進は国内消費を拡大する観光施策としても有効だ。特にキャッシュレス先進国である中国や韓国からの訪日客の消費を促すためには不可欠だろう。

中国のカードレス型キャッシュレス社会

昨年、中国・北京を訪れた時、キャッシュレス化の現状を目の当たりにして驚いたが、今年、上海で経験したさらに進むキャッシュレス化には目を見張るものがあった。中国では日常生活で現金を使う機会はほとんどないという。

中国人ガイドは、『最近、中国人は現金を持ち歩かないから、スリや窃盗は減った。外国人観光客ばかり狙われるから注意して!』と言っていた。また、『割り勘の支払いや子どもの小遣いもスマホで済ます。だからスマホは命の次に大事だ』と、笑いながら語っていた。

日本も最近はクレジットカードやデビットカード、交通系電子マネーを使う機会が増えてきた。中国との相違点は、日本はカードによるキャッシュレス化が中心だが、中国ではカードレスを前提としたスマホによるモバイル決済が普及していることだ。

シェアリング・エコノミーとキャッシュレス化

キャッシュレス社会の実現は、カード方式でもカードレス方式でも消費者や事業者などに大きなメリットがあるが、波及効果という点では大きく異なる。たとえば中国ではスマホを使った自動車・自転車のライドシェアや民泊などのシェアリングサービスが急速に広がっている。

今後、インターネットを介してモノや空間、技能など個人の遊休資産を共有・利用するシェアリング・エコノミーの拡大が見込まれるが、シェアリングサービスは、モノやサービスの需要者と供給者のマッチングと料金決済が必要だ。中国のスマホ決済はキャッシュレス化だけでなく、シェアリング・エコノミーの拡大促進という側面も大きいのだ。

スマホが日常生活の決済手段となった中国では、スマホのモバイルバッテリーをレンタルするサービスも普及している。日本では同様のサービスはまだ少ないが、スマホがなければ暮らしが成り立たない中国社会ではバッテリー切れは致命傷になるからだろう。

ガラパゴス化しないキャッシュレス社会へ

日本でもようやくカードレスのキャッシュレス化の動きが始まった。金融機関がQRコードを使ったスマホ決済で連携することが決まり、2020年に本格稼働するという。また、日本と中国の大手IT企業によるスマホ決済の導入に向けた提携も進んでいる。

スマホ決済は加盟店の手数料を大幅に引き下げられることからもキャッシュレス化に向けた普及が期待されるが、日本のキャッシュレス化は中国などと比べると後塵を拝する。その理由のひとつは日本のキャッシュレス化には、社会コストの削減や生産性の向上に加えて、シェアリング・エコノミーの拡大という明確な将来像が見えないからだろう。

国内でしか使えなかったり、シェアリング・エコノミーの拡大につながらないキャッシュレス化は、ガラパゴス型キャッシュレス社会かもしれない。今後の業界規制の見直しも含めた消費増税に伴う日本型キャッシュレス社会の行方を注視していきたい。