多死社会の「最期」を考える(その2)~超高齢社会の医療と介護

(ペイレスイメージズ/アフロ)

増大する高齢者医療費

厚生労働省「平成27年度 国民医療費の概況」(平成29年9月13日公表)によると、平成27年度の国民医療費は42兆3,644億円と社会保障給付費の36.9%を占め、対国内総生産(GDP)比は7.96%、国民一人当たり33万3,300円となっている。

国民医療費全体の36.8%が入院医療費、34.2%が入院外医療費、18.8%が薬局調剤医療費で、訪問看護医療費は0.4%だ。対前年度比では総額3.8%の増加で、薬局調剤医療費が9.6%、訪問看護医療費が18.2%と高い伸びを示している。

年齢階級別医療費は65歳以上の高齢者が59.3%を占め、そのうち6割は75歳以上の後期高齢者の医療費だ。一人当たり医療費は、65歳以上が74.2万円、65歳未満の18.5万円の4倍にのぼっている。75歳以上は92.9万円と65歳以上平均の1.25倍になっており、高齢者の長寿化が医療費の増大につながっている。

また、都道府県別一人当たり国民医療費は、高知県が44万円あまりで最も多い。一方、埼玉県が29万円と最も少なく、次いで千葉県、神奈川県と東京圏近郊の地方自治体が続いている。

厚生労働省は、2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定で、在宅医療と介護の充実を図るために、「かかりつけ医」の診療報酬や高齢者の自立支援のリハビリサービス等の介護報酬を引き上げる。

在宅医療は全体としてみると、ふくらみ続ける社会保障費の抑制につながる可能性が高い。病院と「かかりつけ医」の適切な役割分担のもと、多死社会の「死の質」(QOD)を高める在宅医療の充実が求められる。

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拡大する「老々介護」

平成30年2月分『介護保険事業状況報告(暫定)』をみると、平成30年2月末の65歳以上要介護(要支援)認定者数は640万人だ。65歳以上75歳未満の前期高齢者が74万人、75歳以上の後期高齢者が566万人で、後期高齢者が全体の約9割を占めている。

全高齢人口3,484万人の要介護等認定者率は18.0%だ。前期高齢者の4.2%に対して後期高齢者は8倍近い32.6%にのぼる。要介護者等が大幅に増加する大介護時代の到来は、高齢者の長寿・高齢化によるところが大きいのだ。

厚生労働省『平成28年 国民生活基礎調査の概況』(平成29年6月27日公表)の「主な介護者」をみると、「同居する家族」が58.7%を占める。同居家族の続柄は「配偶者」が25.2%、「子」が21.8、「子の配偶者」が9.7%だ。

「主な介護者」の3分の2は女性で、男女ともに7割は60歳以上だ。「同居の主な介護者」と要介護者の年齢別の組み合わせは、「70~79歳」の要介護者では同年代の者による介護が半数近くにのぼるなど、「老々介護」が広がっている。

「同居の主な介護者」の要介護度別の介護時間は、「要介護3」以上では「ほとんど終日」が最多となっている。「同居の主な介護者」の約7割は日常生活の悩みやストレスを抱えており、要因は「家族の病気や介護」が7割以上と最も多く、次いで「自分の病気や介護」が3割程度だ。

要介護者等のいる世帯の構造をみると、「単独世帯」が28.9%、「夫婦のみ世帯」が21.9%、あわせて半数を超えている。一人暮らしの高齢者が増える中、「主な介護者」として「介護事業者」の割合が増加しているものの1割程度にとどまっている。

今後も介護における家族が果たす役割が大きいことに変わりはなく、中心となる担い手が自らも介護を要する可能性が高い高齢者だ。大介護時代は要介護者が増えると同時に、「老々介護」にあたる高齢介護者の増大が見込まれ、その支援がきわめて重要になるだろう。

高齢介護者の支援には、適切な福祉用具の利用やレスパイト(休息)ケアの充実が欠かせない。介護保険サービスを巧く組み合わせ、介護者に過重な負担をかけないこと、孤立させないことなどが必要だ。また、介護には、要介護者の身体だけでなく介護者の身体に大きな負担や危険がおよばないための「ケアする技術」が重要である。

超高齢社会がもたらす大介護時代を乗り越えるためには、「老々介護」を支える高齢介護者が安全に安心して介護できる社会システムをつくることが急務である。

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「キュア」から「ケア」へ

戦後、日本人の平均寿命が大きく延びた背景には、医療の進歩と保健衛生状態の改善がある。それにより乳幼児の死亡率および成人の病気・ケガによる死亡率が大幅に低減した。また、日本は医療の国民皆保険制度を導入し、多くの人が良質の医療サービスを享受できた結果、世界有数の長寿国になった。

2000年には高齢化の進展に伴い、40歳以上を被保険者とする公的介護保険制度も導入された。高齢化による介護ニーズは一部の高齢者の問題ではなく、日本社会の普遍的な課題になったからだ。

高齢社会の医療は、急性期に対して慢性期の需要が高まっている。高齢社会では、高度医療を担う大学病院等の特定機能病院などの大病院だけでなく、高齢者の慢性疾患にきめ細かく対処する「かかりつけ医」や在宅診療などを行う地域医療機関の役割が大きい。

最近では、高度医療機関が地域医療機関と適切な役割分担をし、円滑に本来の機能を果たすために、大病院の受診には「かかりつけ医」の紹介状が必要になっている。

平成27年6月、厚生労働省は『保健医療2035提言書』を出し、2035年までに必要な保健医療のパラダイムシフトのひとつとして、『キュア中心からケア中心へ』を挙げている。

そこには『疾病の治癒と生命維持を主目的とする「キュア中心」の時代から、慢性疾患や一定の支障を抱えても生活の質を維持・向上させ、身体的のみならず精神的・社会的な意味も含めた健康を保つことを目指す「ケア中心」の時代への転換』が掲げられている。

近年では高齢化による老衰死が増え、「最期」を住み慣れた自宅や地域で迎える人や看取る人も少なくない。長寿化が進む中で、多死社会の幸せな「最期」を迎えるためには、「キュア」から「ケア」への保健医療のパラダイムシフトの促進が求められる。