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「ガザからの続報」

土井敏邦ジャーナリスト

(撮影・ガザ住民)
(撮影・ガザ住民)

 イスラエル軍の空爆によって激しく破壊されたパレスチナ・ガザの近況は全く報道されなくなったが、ガザ在住のジャーナリストが住民の生活と心情を6月下旬に報告してきた。

 今回は、ハマスのロケット弾攻撃に賛同する住民と反対する住民、双方へのインタビューである。

【ヌセラート難民キャンプの住民・1】

(Q・自己紹介を)

私はアリ(仮名)で、39歳です。ヌセラート市の市場で、野菜売りをしています。

(Q・最近の市場の景気はどうですか?)

 品不足で野菜の値段が急騰しています。イスラエルがあらゆる検問所を封鎖し、物資を載せたトラックがガザに入ってこれないからです。野菜の値段は上がる一方、買い物客はとても少ないです。住民に金がないからです。

(Q・先の戦争で何か被害を受けましたか?)

 4人の子ども全員が、戦争のたえに精神的な問題とパニック症状を起こしました。今もまだ精神的に苦しんでいます。

(Q・先の戦争をどう見ていますか?)

 イスラエルはガザの私たちに圧倒的な暴力を使いました。イスラエルの戦闘機や大砲のためにたくさんの無辜の住民を殺害されました。しかしパレスチナ側の軍事抵抗は徐々に改善されていると思います。先の戦争ではハマスら武装勢力はよくやりました。

(撮影・ガザ住民)
(撮影・ガザ住民)

(Q・パレスチナ側のロケット弾も無実の女性や子どもを殺害しました。あなたは軍事闘争に賛成ですか?)

 パレスチナ側がわずかなイスラエル市民を殺すと、イスラエルはパレスチナ人市民をたくさん殺します。政治的な選択肢を選ぶより、軍事的な選択肢の方がいいと思います。

 PLOのアラファト時代、または現在のアッバス時代には、政治的な手段でやってきたけど、何一つ達成できなかった。イスラエルと和平を達成できなかったんです。

(Q・戦争中またはその後に政府からの支援を得ましたか?)

 はい、二度もらいました。冷凍したチキンと、二度目は食料セットの石油シリンダーです。

(Q・イスラエルの過激派がエルサレムで暴行を振い、昨夜またイスラエルがガザを空爆しました。また戦争が起きると思いますか?)

 はい。子の数ヵ月のうちに、また新たな戦争が再び起きると思います。前回の休戦はとても脆く、長続きはしないでしょう。

(海外に向けて、どういうメッセージがありますか?)

 UNRWAや負傷者や障がいを抱えた人にサービスを提供しているNGOを支援してほしい。またガザで精神的なリハビリを提供している組織を支援してほしいです。

(撮影・ガザ住民)
(撮影・ガザ住民)

【ヌセラート難民キャンプの住民・2】

(Q・自己紹介を)

ムスタファ(仮名)で48歳、農民です。

(Q・先の戦争でどういう被害を受けましたか?)

ポケットに1シェケル(34円)もなく、(戦争期間中の)11日間、家に閉じこもっていました。私と他の7人の家族が金も食料もなく、どうやって生き延びたか想像できますか?家族の中で私だけが稼ぎ手で、決まった月給もありません。ただ雇い主から日当をもらうだけです。だから戦争中、家にはまったく食料も金もありませんでした。戦争中は働けなかったからです。

(Q・戦争中はどうやって生き延びたのですか?)

戦争3日目から戦争終結まで、我が家にあったのは一種類の食料でした。UNRWAから支給された1袋の米だけです。だから毎日、米を料理して食べていました。米だけです。しかも飲めるのは塩っぽい、汚染された水だけです。金がなく、きれいな水を買うこともできませんでした。

(撮影・ガザ住民)
(撮影・ガザ住民)

(Q・仕事についてもう少し教えてください。毎日の仕事で日当を得ているんですか?)

私は子どもの時から農場で働いてきました。一年を通して働く仕事がありましたが、夏場は一番仕事があったし、収入も多かったです。日が長く、長時間働けるからです。最近はイチジクやブドウ畑で働きました。日当は20~30シェケル(700~1005円ほど)です。

(Q・子どもは何人ですか?)

 6人です。息子2人、娘4人です。

(Q・将来、子どもたちの教育はどうしますか?)

 今は学校へ行っていますが、2人の息子が成長して筋肉がついてきたら、学校を中退して、私と農作業を手伝ってほしいと考えています。ガザでは教育なんて役に立ちませんから。教育を受けても、みな失業しています。

(Q・いつか境界が開放されて、あなたは仲間たちがイスラエルで働けると思ますか?)

 そうは思いません。この封鎖は何年も続くと思います。希望なんかありませんよ。自分たちの状況がよくなるとは思いません。ハマスやイスラム・ジハードはイランのエイジェント、奴隷として活動していますから。彼らは愚かなロケット弾攻撃で、パレスチナの大義の正当性をぶち壊しました。一方、PA(パレスチナ自治政府)も、ガザに対して経済制裁を課しています。

(Q・ハマス政府からこの戦争中、または戦後、支援をもらいましたか?)

 いいえ。彼らはハマスを支持する隣人たちすべてに食料セットを与えました。しかし私はハマス支持者ではないために排除されました。

(Q・海外へのメッセージは?)

 UNRWAを支援してください。UNRWAがガザ地区の大半である貧しい人たちにサービスをを増やすことができるようにです。

(撮影・ガザ住民)
(撮影・ガザ住民)

ジャーナリスト

1953年、佐賀県生まれ。1985年より30数年、断続的にパレスチナ・イスラエルの現地取材。2009年4月、ドキュメンタリー映像シリーズ『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成、その4部の『沈黙を破る』は、2009年11月、第9回石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞。2016年に『ガザに生きる』(全5部作)で大同生命地域研究特別賞を受賞。主な書著に『アメリカのユダヤ人』(岩波新書)、『「和平合意」とパレスチナ』(朝日選書)、『パレスチナの声、イスラエルの声』『沈黙を破る』(以上、岩波書店)など多数。

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