6年目の変化―阪神タイガース・Tigers Girlsの新ディレクター・SARIさん

新ディレクター・SARIさんを囲むTigers Girls

■新ディレクターはSARIさん

いつもニコニコ
いつもニコニコ

 阪神タイガースTigers Girlsタイガースガールズ)が誕生して6年目。今年は新体制で活動している。メンバーは毎年マイナーチェンジしているが、大きく違うのはディレクターが代わったことだ。

 創設時からディレクターとしてチームを指導し、まとめてきた島田若枝子氏が退き、これまでキャプテンやバイスキャプテンを歴任してきたSARIさんが新ディレクターとして就任した。

 島田ディレクターが作り上げてきたものを継承しながら、SARIディレクターの経験や意思、オリジナリティを生かした新たなTigers Girlsが躍動している。

 そんな新ディレクター・SARIさんを紹介する。

メンバーのサポート
メンバーのサポート

 Tigers Girlsがいるところには必ずその姿がある。ニコニコと見守り、彼女たちがパフォーマンスを発揮しやすいように、さりげなくサポートする。

 昨年は“あちら側”にいて、スポットライトを浴びる存在だった。未練はないのだろうか。

 「正直、もうちょっと現役で踊りたいという気持ちがなくはなかったけど、2014年にTigers Girlsができるときから携わらせてもらって、思い入れもある。だから、ディレクターの機会をいただけたことが何より嬉しかった。踊りたい思いはこれからのメンバーに託していきたい。このメンバーのためなら頑張れると思ったので、決断した」と微笑む。

昨年まではここにいた
昨年まではここにいた

 選択肢として、ディレクターをしながらも他の現場で現役として踊ることもできなくはなかっただろう。

 しかし「Tigers Girlsは大切なチーム。中途半端にしたくないし、しっかりチームと向き合っていきたい。ディレクターとしては初心者なので、チームに全力を注力したい」と、100%入れ込むことを選んだという。

■ストロングポイントを探す

グラウンドの華
グラウンドの華

 「もえD(島田氏の愛称)はメンバーひとりひとりをしっかり見てくださっていたので、安心してパフォーマンスができていた。1対1のコミュニケーションもたいせつにしてくださっていた。それらをしっかり引き継ぎたい」と、基本は“島田路線”の継承だ。

 島田氏はひとりひとりの良さを引き出し、伸ばしてきた。たとえばSARIさんの場合はどうだったのだろう。

サポート
サポート

 「わたしって、いいところでもあり悪いところでもあるけど、パフォーマンス、MC、車(リリーフカー)の運転…どれもが可もなく不可もなくできてしまう。でも誰かより秀でているもの、自分が自信を持てるものがなかなかなくて…。それがネガティブポイントだったけど、ストロングポイントを一緒に探してくださった。もえDとは『オールマイティになんでもできるのはいいけど、これっていう自信のあるものを見つけられないとダメだよね』という話をしてきた」。

ひとりひとりのストロングポイントを伸ばす
ひとりひとりのストロングポイントを伸ばす

 「これという自信のあるものを見つける」―。

 まずダンスのスキルでは、ジャンプテクニックを認めてもらった。そこでさらにそれを伸ばすことに取り組んだ。自らスタジオを借り、メンバーのアドバイスも聞きながら自主練習に汗を流した。

 「できるようになると自信も生まれてくる」。自信を持つことでまた、輝きも増した。

■もうひとつのストロングポイントはキャプテンシー

強烈なキャプテンシーを持つ
強烈なキャプテンシーを持つ

 ストロングポイントはさらにある。「キャプテンシー」だ。初代キャプテンとして率先して行動で方向性を示し、チームメイトを引っ張っていくことに腐心した。

 「言葉で引っ張るのは苦手だけど、行動で示していくことだな、と。それが自分のキャラクターだと思ってやってきた」。

この笑顔にメンバーは安心する
この笑顔にメンバーは安心する

 控えめに語るが、SARIさんのキャプテンシーはおそらく自身が考えるより鮮烈である。Tigers Girlsが発足して初の合同練習の場で、すでにそれは発揮されていた。

 言葉で何ごとかを指示するということがあったわけではない。しかし周りをぐいぐい引っ張っていく“なにか”を放っていた。だから初代キャプテンに就任したことが発表されたとき、やはりと納得したものだ。

メンバーに感謝してきた
メンバーに感謝してきた

 ただ、Sariさん本人は謙虚だ。

 「ありがたいことにメンバーにすごく助けられていた。たいへんなこともあったけど、今思うと、そんなことなかった。楽しかったし、やりがいもあった。本当にメンバーに助けられ、救われていた。メンバーとして活動した5年間を振り返ると、ひとりのシーンはまったくなくて、いつも必ず隣にメンバーがいた」。

 口をついて出てくるのは、メンバーへの感謝の言葉ばかりだ。

■Sariさんの“軸”

“もえD魂”を継承
“もえD魂”を継承

 そんなSARIさんだから、ディレクターに抜擢されたのだろう。

 「もえDからも『6年目、新たな飛躍が求められていると思う。とはいえ歴史ある球団の一部。そのプレッシャーも大きいと思うけど、頑張って』と言われている。もえDと5年間、一緒に活動してきて、その中で感じたものが大きい。もえDを裏切れないし、もえDの思いをたいせつにしたい」。そう言って、表情を引き締める。

その日の出演ボードをチェック
その日の出演ボードをチェック

 思いを受け継ぎつつ、自分なりの“軸”がある。

 「チームに対してもチームメイトに対しても、リスペクトの気持ちを持つというのをたいせつにしている。それって自分に自信がないとできないことで、そのためにはやるべきことをやる。プロとして当たり前のことだけど、それをどれだけ濃くしていくか」。

 ただの仲良しグループではない。お互いにしっかり指摘をし合う。それはリスペクトしている仲でないと言えないし、聞き入れられない。

 ルーキーも6年目も同じだと言いきる。この“軸”を今後もさらに強化していきたいという。

■プロ意識とは

ガールズを誘導
ガールズを誘導

 SARIさんは「プロ」という言葉を何度も強調する。

 「こうしたいという思いが強ければ、それが楽しいに繋がる。その思いをたいせつにしたい。だからといって、のびのびさせるのとは違う。のびのびさせるのは楽だけど、甘えが出ると違う方向にいく。そこはもう一度、プロとして歩んでいくために土台をしっかり作り直していきたい」と、プロとしての厳しさを求める。

 プロ意識のひとつとして、個々に考えるということを重視している。

 たとえば球場外周「ミズノスクエア」にあるステージでは、毎試合前、イベントを行っている。その中でTigers Girlsのダンスコーナーもあるが、そこに“あること”を取り入れた。

ミズノスクエアでのダンスパフォーマンス
ミズノスクエアでのダンスパフォーマンス

 これまではあらかじめ決めたダンスを踊っていたが、その中に「8拍×4の空白の時間」を作ったのだ。

 「やりたいことがある子が自発的に使う時間。ポンポンを持たずにバリバリ踊るとか、バトンを持ってパフォーマンスするとか。ジャンプ系が得意、ターン系が得意、それぞれの持ち味を生かしたダンスを披露する。自分からやりたいと思うことが重要」。

 自主的に考えるということを求めている。

ファーム甲子園では選手と一緒にお出迎え
ファーム甲子園では選手と一緒にお出迎え

 個々に練習してきたものをレッスンで発表し、SARIさんが見てステージに出せるか判定する。人数も特に決めていない。

 「曲は同じでも、毎日違うパフォーマンスを届けられる。見にきてくださっている人にも『また一緒か』じゃなく、『また来たい』って思ってもらえる。メンバーもその曲に対しての思い入れや愛着がわくし、それがまた、よりお客さまに楽しんでもらいたいに繋がる」。

 15~20分間のステージ中のひとコマだが、そこにこれほどまでの思いが詰まっている。

■春季キャンプに初参加

笑顔を振りまく
笑顔を振りまく

 毎年進化しているTigers Girlsだが、今年はシーズン前にまた一歩、前進した。沖縄の春季キャンプに初参加したのだ。

 「選手の方たちががんばっているところで、ガールズもチームの一員として応援したいというのが、ひとつの目標だった。いつか行けたらいいな、沖縄でもファンのみなさんに会いたいなと思っていた」。

 宜野座村の球場で、グリーティングやステージ、見学イベントのアシスタントなど精力的に動いた。キャンプに訪れたタイガースファンもガールズと身近に接することができて、大喜びだった。

■SARI’s history

ダンスと音楽が大好きだった少女時代を過ごした
ダンスと音楽が大好きだった少女時代を過ごした

 Tigers Girlsへの、またタイガースへの熱い思いを語ってくれるSARIさんだが、彼女はどのようにしてチアの道に進んだのだろうか。幼少期からを振り返ってもらった。

 4歳のころ、近所に開校したバレエスクールに見学に行き、即、「入りたい」となったそうだ。憧れのトゥシューズを履くことができたことが一番の感動だったという。

 「小さいころのビデオを見ても、常に歌って踊っている。音楽も大好きだった」。

 そのころから、よくミュージカルに連れていってもらっていたが、中学2年のときに見た劇団四季の「キャッツ」が運命の出会いだった。劇中の演出でラム・タム・タガーという猫にステージに連れていかれたSARIさんは、そこで違う世界を見て感じた。

 「いつもは客席から見ているけど、はじめてプロの舞台から客席を見た。そのとき、『わたしは、こっちの世界で生きていくんやな』と思った。単純だけど(笑)」。

ガールズのさまざまなお仕事
ガールズのさまざまなお仕事

 そこで、ミュージカルスクールに行き始めるようになった。

 「歌やセリフ、ダンスもジャズ、ヒップホップ、タップ…いろんなジャンルのダンスに触れられて、抵抗がなくなったのが一番大きい」。

 大人になったら舞台女優になりたい―。そう心に決め、中学高校でもダンス部でバレエやヒップホップに打ち込んだ。午後6時に下校したあとは、9時まではスクールという生活を続けた。

大忙し
大忙し

 高校卒業後、スクールの本科生に進むという選択肢もあったが、他の世界も知りたいと考えた。スクールを主宰する先生に憧れていたこともあり、先生の出身である大阪体育大学に進学し、創作ダンス部に入った。ここで表現力などを磨き、幅が広がったという。

 大学ではスポーツマネジメントを専攻していたので、スポーツに関わる機会が多かった。そこで「チア」というものを知った。

 「大好きなスポーツと大好きなダンスに携われる。これ以上のものはない」。天職だと思った。

 3年のときには、あるプロスポーツチームにインターンシップで行った。その一環でチアと関係する仕事にも携わった。もう目指す方向は確定だ。

 卒業後、bjリーグ・大阪エヴェッサのオーディションを受け、チアとして2年間活動した。そこでキャプテンも努め、さまざまな経験を積んだ。(実は今も時々見にいっては刺激を受けているという。)

■新ディレクターの手腕に注目

今年から取り入れているダンスの前の円陣
今年から取り入れているダンスの前の円陣

 その後、Tigers Girlsの発足にともなってオーディションを受け、現在に至る。

あらためてディレクターになっての日々を問うと、「これまでと全然違う。目を配ることもそうだし、責任が大きい。みんなのことを考える時間がさらに増えた」と答える。

 「気をつけているのは平等。出番も業務も平等に振り分けること。難しいけど、メンバーは理解してくれている。突出した子だけを出すのではなく、18人ひとりひとりのよさをみなさんに見てもらいたい。“何年目”という部分のものさしもなくはないけど、“何年目”より“思い”をたいせつにしたい」。

 その“思い”をしっかり見るのもまた、ディレクターの役目である。

チームワークはバッチリ
チームワークはバッチリ

 試合直前、グラウンドでのパフォーマンス。今年は始める前に円陣を組んでいる。

 「お互いの顔を見て安心するし、モチベーションが上がるから」。これもSARIさんのアイディアだ。その画像を、SARIさんは自身のスマホの待ち受けにしている。

 タイガースを愛し、タイガースファンを愛し、そしてメンバーを愛する新ディレクター・SARIさんの手腕に、今後も注目だ。

SARI*プロフィール】

2011年 大阪体育大学体育学部卒業(スポーツマネジメント専攻)

     bjリーグ大阪エヴェッサ エンターテイメントダンスチーム「bt」に合格。

2012年 bjリーグ大阪エヴェッサ エンターテイメントダンスチーム「bt」に2シーズン目合格。同年キャプテンを務める。

2013年 Tomoko Kojima Cheerdance Academyにてチアダンス講師として指導を始める。

2014年 阪神タイガースオフィシャルファンサービスメンバー「Tigers Girls」に合格。初代キャプテンを務める。

     以降、2018年まで5シーズン活動。現役5シーズンのうち3シーズン(2014年~2016年)に渡りキャプテンを務める。

2018年 阪神タイガース タイガースアカデミー ダンススクールの講師として指導を行う。

ほか、 社会福祉法人つつみ会「たんぽぽ学園」「たんぽぽ中条学園」「たんぽぽtriangle学園」にてチアダンス講師を務める。

(撮影はすべて筆者)

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