滋賀ユナイテッド・上園監督(元阪神タイガース・2007年 新人王)、ホーム初勝利を挙げる

ホーム初勝利を喜ぶ上園啓史監督とモスキート選手、前本飛翔選手(撮影:城 裕一郎)

■本拠地での初勝利

勝利のハイタッチ (撮影:城 裕一郎)
勝利のハイタッチ (撮影:城 裕一郎)

勝った。滋賀ユナイテッドBC、7試合目にしてホームゲームでの初勝利だ。

試合終了の瞬間、上園啓史監督の表情には喜びより安堵感の方が色濃く表れていた。

「かろうじて勝てた。これまで負けた試合はすべて四球からの大量失点。なんとかギリギリのところで耐えた」。四球は7コ出したが、崩れなかった選手たちを讃えた。

■前回の対石川戦

円陣 (撮影:城 裕一郎)
円陣 (撮影:城 裕一郎)

本拠地で開幕したが黒星スタートし、2戦目にビジターで初勝利を挙げた。しかし、そこから引き分けを挟んで3連敗と苦しい戦いを強いられている。

ホーム開催4試合目となったきのう4月27日、守山市民球場石川ミリオンスターズを迎えた一戦は、絶対に負けられなかった。

石川とは2度目の対決だ。前回の対戦では初回、先発の中瀬祐投手が1アウトしか取れず5失点で降板したあと、飛田登志貴投手が6回2/3のロングリリーフで試合を作った。

五回に3点返し、5―3の九回に石川浩選手が相手のクローザー・寺田光輝投手から2ランを放って追いつき、延長戦に持ち込んだ。

2番手以降の投手陣は得点を許さず、5-5の引き分けで終えている。

■踏ん張った投手陣

モスキート選手の2ランにベンチも沸く (撮影:城 裕一郎)
モスキート選手の2ランにベンチも沸く (撮影:城 裕一郎)

常々「先行逃げ切り」を標榜する上園監督だが、今回の対戦では初回から相手のミスにつけ込み、先発・多田野数人投手(元日本ハムファイターズほか)から3点を奪った。

さらには三回に前本飛翔選手のソロ弾、五回にケビン・モスキート選手の2ランで3点追加した。

大量点にも守られ、先発の飛田投手は「変化球に張ってくるだろうと思っていた。1回ずつと思って初回から全力でいった」と打たせて取る投球でリードを守った。

飛田登志貴投手 (撮影:城 裕一郎)
飛田登志貴投手 (撮影:城 裕一郎)

「前回、変化球でカウントを取って、まっすぐを速く見せる組み立てをしていたので、今日もどの段階で相手が変化球狙いに変わってくるか…」と振り返った上園監督は、継投のタイミングをずっと伺っていたという。六回、一死一、三塁となったところでスイッチを決断した。

「難しい状況ばかりで投げさせている」と申し訳なく思いながらも、保田拓見投手に託した。保田投手は3四球でランナーを2人還してしまったが、なんとか1点リードを保って次の回も抑え、後ろにバトンを繋いだ。

鈴木志廣投手 (撮影:城 裕一郎)
鈴木志廣投手 (撮影:城 裕一郎)

八回のマウンドに上がった投手を見て、スタンドはややどよめいた。開幕投手を務め、上園監督が先発の軸として期待している鈴木志廣投手が出てきたのだ。

ここまで先発した3試合では四死球で崩れ(8コ、6コ、5コ)、勝ちを逃してきた。「いい投球を続けていても1イニングでやられる展開ばかりだったんで、なんかきっかけになれば…」と話す指揮官の配慮から、リリーフ待機をさせていたという。

そんな親心に応えた鈴木投手は1イニングをしっかり0点に抑えた。「これまでチームに迷惑をかけてきた。3試合、同じやられ方をして…」と相当ヘコんでいたことを明かす。

「今日は勝ちに貢献して少しでも返したいと思って、マウンドに上がった。とにかく先頭は絶対に出したらあかんと思って」。先頭打者を打ち取ったあと四球を与えたが、そこで崩れず次打者をしっかり併殺に仕留めた。

「まだまだ返せてないけど…」とは言いながらも、次に繋がる手応えにやっと笑顔を見せることができた。

平尾彰悟投手 (撮影:城 裕一郎)
平尾彰悟投手 (撮影:城 裕一郎)

1点という最小リードで登板したクローザーの平尾彰悟投手は相変わらずの安定ぶりを見せ、無失点イニングを5に延ばした。

「流れがあまりよくなかったので、先頭を出すと向こうも盛り上がる。とにかく先頭は大事に」と、最初の打者を2球で片付けた。3番・アセンシオ選手にはファウルで粘られたが、杉本拓哉捕手と相談し、「当たってるけどジャストな感じはなかったので外でいいんちゃうか」と思いどおりにサードゴロを打たせた。

ラストも難なくショートフライで締め、「シンプルに嬉しい」と白い歯を見せた。

「クローザー」という持ち場を「最後にマウンドに立っていられるので好き」と言い、「ピンチを抑えられたら気持ちいい」と度胸満点だ。チームの勝敗を左右するポジションに、この上ないやり甲斐を感じている。

■ヒーローその1…ケビン・モスキート選手

モスキート選手の1号2ラン (撮影:城 裕一郎)
モスキート選手の1号2ラン (撮影:城 裕一郎)

一方、攻撃陣では3番・前本選手、4番・モスキート選手が期待どおりの働きをしてくれた。決勝弾をレフトへ放り込んだモスキート選手は、「(ショートゴロに打ち取られた)前の打席とまったく同じ配球だったんで、ストレートがくるかなとイメージして準備していたので反応できた」と“読み勝ち”であるとニンマリだ。

開幕は2番でスタートしたが、4番に座って4試合目となる。「4番ということは意識していない。それよりいいスイングをしてチームに貢献したい」とフォアザチームの精神を強調し、「勝つことによってチームが一つにまとまってきている」と勝利を喜ぶ。

ヒーローインタビューを受けたあと、新しく覚えた日本語の「オツカレ~」や「オオキニ~」を披露して笑いを誘っていた。ムードメーカーでもある。

■ヒーローその2…前本飛翔選手

動画チェックをしながら立ち上がりバットを振る前本選手
動画チェックをしながら立ち上がりバットを振る前本選手

打線の核である前本選手は試合後、録画された映像に見入っていた。自身の打席を見返しながら、バットスイングを繰り返す。毎試合後の恒例行事だ。

このところやや調子を落とし気味だった。それでも1試合1本は打ってきたが、この日は明らかに復調し、3安打を記録した。しかもその内訳は本塁打1本に二塁打が2本だ。

「ちょっと大振りになってたんです。監督からも『スイングが大きい』って注意されて、コンパクトに振るよう意識したら、徐々に手応えが出てきました」と話す。

前本選手も第1号 (撮影:城 裕一郎)
前本選手も第1号 (撮影:城 裕一郎)

バットの出方、ボールをとらえる感覚が違ってきたそうで、「バットだけパーンと出る感じ」と擬音を交えて説明してくれる。

「2打席目のホームランのとき、インハイに(対して)ヘッドが返せて、その感触がよかった」と“その感触”をそのまま次の打席の初球で、ライト線を破る2ベースに繋げた。

足でも魅せる。バックホームが逸れたのを見逃さず、セカンドから一気にホームを陥れるシーンもあった。「足は武器」と言い切り、積極的で思いきりのいいバッティングとともにNPBへ上がるためのアピールポイントとしている。

今後もギラギラ感を前面に出してチャンスをモノにしていく。

■陰のヒーローは・・・?

杉本拓哉選手
杉本拓哉選手

もうひとり、“陰のヒーロー”を紹介しておこう。スタメンマスクで4投手をリードした杉本選手だ。

本来は外野手登録で、これまでは試合途中からマスクをかぶってきたが、ここ2試合はアタマからキャッチャーとして出場している。

内外野手でスタートした高校時代だったが、先輩が卒業したあと新チームにキャッチャーがいなかったため引き受けた。大学2年まで続け、3年からは外野に戻った。その経験と肩の強さを買われ、滋賀では再びキャッチャーも兼任するようになったが、「常に試合に関わっているので、難しい」と悪戦苦闘する日々だ。

心がけているのは「ピッチャーが投げやすいように」ということ。特にボールが続くときなど、「どうしてあげたらいいのか…」と頭を悩ませている。

しかし「どこをやるにしても全力でやっていきます!」と常に前向きに取り組み、投手陣からの信頼を深めつつある。

■アピールしまくって勝利を掴む!

勝利インタビューを受ける上園監督 (撮影:城 裕一郎)
勝利インタビューを受ける上園監督 (撮影:城 裕一郎)

「負けが込んでいたので(4敗)、きょう本拠地で勝てたことは大きい。4連戦のアタマが取れたんで、明日もいい形で入りたい」と次戦に向けて意欲を燃やす上園監督。「もっともっと良くなると思う」と、チームとしての手応えも掴みはじめている。

だからこそ、選手個々には注文をつける。この日もNPBのスカウトが視察に訪れていたことに触れ、「毎日がアピール。そういう面では、大学や社会人より(アピールのチャンスは)多い。プレーひとつひとつがぬるいというか軽い。練習も含め、見られているってことをもっと意識した方がいい。アピールするチャンスはいっぱいあるんだから」。チームの勝利を考えつつも、選手の夢を後押しする。

それぞれが必死にアピールすることがチーム力アップに繋がると信じ、新人監督はきょう、初の連勝に挑む。

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