■4年連続、安芸キャンプからのスタート

今年も高知県は安芸でキャンプインした。これで4年連続になる。沖縄・宜野座の1軍キャンプではなく、あえて安芸キャンプを自ら選んだ訳を、安藤優也投手はこのように語る。

今年も安芸スタートの背番号16
今年も安芸スタートの背番号16

「沖縄だとマスコミの数もファンの数も違う。雰囲気が“競争、競争”ってなるでしょ。そうするとボクも闘争心に火がついちゃって…。(ブルペンで)隣の人よりいい球を投げようとしてペースが乱れてしまう。ベテランだからゆっくりやればいいと言われるんだけど、自然とペースが上がってしまう。こっちだと自分のペースでやれるという利点があるから」。自分自身の性質を熟知した上での選択なのだ。

「それに3年間、順調に過ごせたのでね」とも付け加えた。かつては3年連続開幕投手を務めるなど先発ローテーションの軸として活躍していた安藤投手だが、2013年からは中継ぎに再転向となった。その年から安芸でキャンプをスタートし、3年連続50試合以上の登板を果たしていることも要因の一つだという。

■2016年、駆使する新球はカーブ

連日80球前後、投げ込む
連日80球前後、投げ込む

ベテランと言われる年齢や立場になっても、「毎年研究して、新しいものを出していきたい」という前向きな姿勢は、ルーキーの頃から変わらない。15年目のシーズンを迎える今年、新たに取り組んでいるのが「カーブ」だ。もともと持ち球ではあったが、「レベルの低いカーブを中継ぎで投げるのは怖い。それで打たれたら後悔する」と、ほとんど使ってこなかった。

しかし数年前から福原忍投手のカーブを見ていて「使えたら面白いし、楽になるな」と考えるようになった。「カウントを整えたり、バッターの目線を変えたりはできる」。安藤投手のこれまでの主な変化球といえばスライダー、シュート、フォークなどだ。「左右と落ちる球なので、目線を上にズラすことができるかなと。今までにない目線のズラしができたり、『こういう軌道もあるんだ』とバッターが迷ってくれたりしたらいいかな」という発想からだ。

キャッチボールから丁寧に
キャッチボールから丁寧に

また「目指すべきところは“勝負球”とは思っていない」とは言うものの、状況によっては勝負球にもなり得る。

第2クール最終日のブルペンでも、カーブを磨くべく投げ込んだ。打席に立った山田勝彦ファームバッテリーコーチが再三、「いいよ〜。福原よりいいよ〜」と声を上げるくらいに、精度は上がってきている。「プロ入りの初め頃よりはいいカーブになってきているけど、フクさんのカーブと比較したらフクさんに失礼。目指すべきところは“勝負球”とは思っていないんで」とは言うものの、勝負球にも使えそうだ。

■ウェイトトレーニングで追い込む

ダッシュ!
ダッシュ!

新しく取り組んでいるのはカーブだけではない。金本知憲監督の意向で、今年からウェイトトレーニングに力を入れるというチーム方針が打ち立てられた。安藤投手も「ここ最近はそんなにやっていなかったけど、今年は例年になくやっている」と、レッグプレスやスクワット、ランジ系のトレーニングを「結構、重たい負荷で」こなしている。

ランニング!
ランニング!

1クールに1回、徹底的に追い込むのだが、安藤投手は3日目に組み込んでいるそうだ。「次の日はもう体が動かない。4日目の今日はホントしんどかった。体が動いてくるまで、時間がかかった」。そう明かしたのは第2クール最終日だ。

しかし、それもプラスに捉えている。「不利な体の状態でも、いかにいいパフォーマンスを出していくかが、リリーフにとって大切。先発は自分の調整で、ある程度コンディショニングできるけど、リリーフは万全の状態なんてない。常にどこか張っている中で投げる。だから、そういう意味でもいい練習ができているんじゃないかな。実戦向きかな」と笑顔で語る。

実際、最も体がきつい第2クール最終日に入ったブルペンで、前日より好投を見せた。「疲れの出ている中でも投げていかないといけないし、パフォーマンスも出していかないといけない。そうした中で得るものもある」というのだ。

■安芸での投手陣のリーダー

後輩たちの信頼は絶大
後輩たちの信頼は絶大

投手陣では福原投手に次ぐベテランで、安芸では最年長だ。練習中も気さくに若手に声をかけ、ルーキーをいじって笑いをとるなどしている。「ルーキーはサインプレーとか分かってないんで確認してあげたり、気づいたことは言うようにしている」。だが技術的なことは「コーチもいるし、自分からというより、訊いてきたら答える」というように留めている。ただ、訊きやすい雰囲気は作っているので、後輩たちも積極的に安藤投手に寄っていく。

ボール拾いも厭わない
ボール拾いも厭わない

第2クール最終日の夜には「投手会」の開催を決めた。「ご飯食べながらワイワイとね。私生活の中で、どういう性格や人間性なのか知りたいしね。野球以外で出てくるものだから」。投手陣のリーダーとしての自覚が、投手一人一人に広く目を向けさせる。

「プロの世界に入ってくる子ばかりなので、みんな力がある。その力が出せるか出せないか。自分の1年目はどうだったかなぁ…って、自分がやってきたことを照らし合わせたりね」。野球に対する姿勢や考え方を見て、できるアドバイスはする。「自分が正解ではないけど、『もうちょっとこうしたら』とか、『オレだったらこうする』という一つの案として」話すという。

ただ、「まずは自分で考えることが大切」とのスタンスは保っている。「若いうちから考える力をつけないといけない。人から言われた練習は、身についたと思ってもついていないものだから」と促す。「自分で考えて、それをブレずに信じてやること」。自身もそうしてきたのだ。

■進化を求め続けるあくなき姿勢

最年長の福原投手の存在は「1コ上なので色々野球の話をするし意見交換もする」と、刺激にも励みにもなっている。しかし学ぶのは先輩からだけではない。「岩本なんか、いいカーブを投げるし、見ながら勉強している」と、年齢を問わず吸収できるものは何でも取り入れようと貪欲だ。

ロングティー!
ロングティー!

第2クールに訪れた江夏豊臨時投手コーチは「安藤がなぜ15年もやれるのか、そういうところを若い人たちは考えてくれれば、少しでも工夫するんじゃないかな」と安藤投手の低めへのコントロールを、独特の表現で讃えた。

当の安藤投手は「一日一日、1試合1試合必死。積み重ねているだけ」と控えめに話すが、そこには常に自身の成長を追い求めて、周りを観察し、考え、工夫し続ける姿がある。