左打者は任せろ!―高宮和也投手

キャッチボールをする高宮投手

■やり甲斐を感じる毎日

「めちゃくちゃやり甲斐がありますね」。こう興奮気味に話すのは高宮和也投手だ。プロ9年目の33歳が、かつてないほどの充実感に満たされる日々を送っている。

2006年、希望枠で横浜(現DeNA)ベイスターズに入団も2010年オフ、トレードでオリックスバファローズに移籍。そして2013年、平野選手のFA移籍に伴う人的補償によって、タテジマに袖を通すことになった。

昨年は1試合のみの登板に留ったが、今年は4月29日に昇格、5月6日のドラゴンズ戦で6年ぶりの白星を手にした。しかしチーム編成の都合もあり、同27日に抹消。その後、なかなか声がかからず、8月に一度昇格するも、2試合に登板しただけで降格。そしてようやく終盤の8月31日に再々登録された。当初は“敗戦処理”という役目を担っていたが、調子の良さが認められ、徐々に勝ちパターンに組み込まれるようになった。

冒頭の言葉は9月19日のドラゴンズ戦、大量リードとはいえ初めて勝ちゲームでの登板後に吐露したものだ。それまで1点ビハインドでの登板を重ね、無失点を続けた後、手にしたポジションだった。

■勝負を賭けたシーズン

背水の覚悟で臨んだシーズンだった。春先にやや肩を痛めて不安はあったが、軽症で済んだ。何より、昨秋から取り組んできたフォーム修正に手応えを感じていた。「投げ終わりで後ろに体重が残っていたのが、前に乗るように意識した。そうすることで、ボールも前で放せるようになった」。

ポイントは投げる時の歩幅だ。「広すぎたから、踵から着いていた」と気づき、1~2センチ狭めた。すると、つま先に体重が乗るようになった。

これまでは「球が放れるのが早かったので、高めにしか強いボールが投げられなくて、低めは弱くて垂れていた」のが、「変化球が低めに集まるようになったし、低めに強く投げられるようになった」というのだ。

1軍で勝負できる自信もあった。しかし序盤の8試合で抹消となった。「打たれて抹消じゃなくて、兼ね合いだったから。『すぐ呼ぶ』とは言われたけど、なかなかで…年齢的にもチャンスは少ないやろうと思っていたし、落ちた時はモチベーション上げるのがむずかしかった。それでも、ファームで結果を出すしかないなと思ってやっていました」。

しかし、なかなか訪れない吉報に痺れを切らし、危機感も不安も感じた。ただ、準備だけは怠らず、状態はキープしていた。

2度目の登録は2本のホームランを打たれて2試合で抹消となったが、ここでも「失点したのは、これと5月のジャイアンツ戦の2試合だけや。トータルの成功率で、自信持っていこう!」と自らを鼓舞した。

やっと巡ってきた3度目の昇格。途中から左投手が高宮投手だけになったこともあり、「大事なところを任せてもらって、信用してもらえているのを感じる」と、チームに貢献できる喜びに、思いきり腕を振った。「やり甲斐がある分、緊張もする。チームに迷惑かけないようにって、すごいプレッシャーがあるけど、プレッシャーは気にしないようにとは思っている」。

高宮投手の好投の要因に、「左バッターのインサイドを攻めるシュートが放れるようになったからなぁ。あとは経験もあるしな」と、山口投手コーチはシュートの習得を挙げる。高宮投手も「以前からちょこちょこは使っていたけど、本格的には今年からかな。割合も増えた。基本的には外で勝負したいので、踏み込まれない為の内。上手く内が使えているので、外で勝負ができている」と話し、左打者のインサイドへのまっすぐと、上手く投げ分けもできているという。

今季は自己最多タイとなる22試合に登板して、2.89の防御率は自己最高だ。「実質、春と終盤しか投げてないから。もっと投げられたなという思いはある」。調子は悪くないという自負から、夏場の登板がほとんどなかったことが悔やまれるという。

■尊敬する先輩、吉見祐治さんの分まで…

プロ入りして初めてのポストシーズンは、やはりいつもとは違うようだ。クライマックスシリーズのファーストステージ前夜は「『あぁ~、明日からか~』って、多少興奮して、寝付けんかった」と笑う。残念ながら登板機会はなかったが、チームは初のファイナルステージに進出した。恐らく東京ドームでは出番もあるだろう。

コンディショニングは万全だ。ここまで自分の体と対話し、悪くなる兆候も察知できるようになった。体を大きく使って投げる高宮投手は、疲れてくると肩甲骨の周りが張り、動きが悪くなる。そうすると途端に投げる球に影響する。肩甲骨の動きがバロメーターなのだ。大きな故障になる前に未然に防ぐこともベテランの技だ。決戦に向けて、しっかりと整えた。

初めてのこの大一番を、最も見て欲しい人がいる。先日、戦力外通告を受けた吉見投手だ。「横浜でもずっと可愛がってもらってて、プライベートでもよく会うしね」。つい先日も食事を共にしたそうだ。

ずっと仲の良かった先輩と、また同じチームでプレーできると喜んだのも束の間だった。「1年しか一緒にできなかった」と淋しそうに話す。「ファームでもなかなかチャンスがもらえない中、絶対に腐らないし、練習の一つ一つが真面目で、口には出さないけど諦めてなかった。最後まで野球に対する姿勢は変わらなかった。勉強になるし、鑑やった。見ているだけで自然と学べた」。

言葉ではなく、その姿勢で多くのことを教えてくれた吉見投手から、エールを送られた。「今、チャンスを掴みかけてるんやから頑張れ。応援しているから!」と。

「吉見さんの分まで頑張りたい!1年でも長く…」。それを叶えるためには、まずはファイナルステージでの活躍が不可欠だということを、高宮投手は自覚している。

練習中の高宮投手
練習中の高宮投手