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外出自粛・リモートワークで自宅フィットネス需要が急拡大 任天堂Switchが世界的な品薄に

土橋克寿クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)
米国Amazon.comにおける『リングフィットアドベンチャー』の価格推移
米国Amazon.comにおける『リングフィットアドベンチャー』の価格推移

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、不要不急の外出自粛要請やリモートワーク導入などが続く中、自宅で気軽にフィットネスができるNintendo Switch用ソフト『リングフィットアドベンチャー』の品切れが欧米日中を問わずに発生しています。

米国では2月に入ってからネットでもリアル店舗でも品切れが相次ぎ、3月20日の調査時点では270ドルまで価格が上昇しました。なお、今年正月時点では新品が79.99ドル、中古が59ドル前後でした。欧州や中国でも、感染拡大期のタイミングの違いによるズレはあるものの、品薄状況は同様です。同ソフト自体の需要増に加えて、コロナウイルスによる中国での生産の遅れによる出荷遅延、2019年12月末時点で累計販売台数4800万台を超えたNintendo Switch本体についても同様の品薄状態が発生していることが拍車をかけています。

◆リングフィットアドベンチャーとは

リングフィットアドベンチャーのプレイ画像、任天堂公式サイトより
リングフィットアドベンチャーのプレイ画像、任天堂公式サイトより
リングフィットアドベンチャーのプレイ画像、任天堂公式サイトより
リングフィットアドベンチャーのプレイ画像、任天堂公式サイトより

過去にも体を動かす室内ゲームは色々と世に出てきましたが、これほどの人気を集める『リングフィットアドベンチャー』とは何なのか?2019年10月発売の同ソフトには、両手で握って操作するリング状コントローラー『リングコン』と左太腿に巻きつける形でもう一つのコントローラー役を担う『レッグバンド』が付属されており、これら2ヶ所にSwitch基本セットの付属コントローラー『Joy-Con』をセットして遊びます。

バネの利く特殊素材でできたリングコンに内蔵された「力センサー」が押しこんだり引っ張ったりといった力の動きを、Joy-Con内蔵の「加速度センサー」や「ジャイロセンサー」がリングコンの上下左右や傾きの動きを認識します。同様に、レッグバンドに装着したもう一つのJoy-Conが屈伸や足踏みなどの下半身の動きを認識します。これらにより、腕や足周りだけでなく、肩、胸、腹、背中、尻などの体全体の各部位にかかった力や動きを認識し、『リングフィットアドベンチャー』のゲーム世界と連動させています。

冒険RPG構成のメインストーリー編「アドベンチャーモード」では、腕・足・腹・ヨガの4カテゴリー40種類以上の体を動かす技「フィットスキル」が用意されており、その動きに合わせて主人公が攻撃や回復しながら敵と戦います。例えば、スクワットではしっかりと腰を落として運動すると攻撃威力が上がったり、敵からの攻撃に対して、しっかりとお腹に力を入れてリングコンをお腹に押し込めば、防御してダメージをより減らせたりと、“手本に近い姿勢”で運動を促す仕組みになっています。この「アドベンチャーモード」は、1日30分程度のプレイで約3ヶ月のボリュームです。

ユーザーの利用場面を想定した気配りもみられます。例えばリングフィットアドベンチャーでは、ユーザーがその場で足踏みすることで主人公が移動(ジョギング)するのですが、そうなると他の部屋や階下に足音が響いてしまわないかという心配が生じてきてしまいます。そこで同ゲームでは、ユーザーの屈伸の動きで主人公が移動する「サイレントモード」でも遊べるのです。

かくいう筆者も、年始からこのゲームのユーザーです。週2〜3回、各20分間ほど利用していますが、この約3ヶ月間の体脂肪率や内臓脂肪レベルの計測値はゆるやかに減少しています。1ユーザーの個人的感想としては、『リングフィットアドベンチャー』ほどの満足度を抱いたフィットネスゲームはこれまでありませんでした。

◆自宅でのオンラインエクササイズやVRリズムゲーム

Peloton公式サイトより
Peloton公式サイトより
Peloton公式サイトより
Peloton公式サイトより

様々な施設やイベントが、世界各地で休館・営業中止となっている中、濃厚接触を危惧されるスポーツジムも大きな影響を受けています。ただその厳しい局面において、米エクササイズサービス提供企業Peloton(ペロトン)が健闘しています。2019年9月にNASDAQへ上場した同社は、このほどの市場全体の大暴落で株価を一時落としたものの、既に昨年末段階まで株価を戻しました。(※3月20日の調査時点)

同社はエクササイズ・バイク(1台約22万円)と、トップレベルのインストラクターによるクラス(月額約4000円)を提供しており、ユーザーは自宅にいながらライブ感ある有酸素運動を楽しめます。リアルな部屋の大きさに制限されず、リアルタイムのライブ再生やストリーミング再生で提供されるため、人気インストラクターのクラスももれなく受講できます。クラブ系エクササイズは、オフラインに限れば国内でも人気に火が付き始めたが、オンラインはまだ目にする機会が中々ありません。今後に期待したいところです。

Beat Saber公式サイトより
Beat Saber公式サイトより

また違うところでは、VR/AR領域からのアプローチにも目が離せません。チェコ発の「Beat Saber(ビートセイバー)」は、前方から流れてくるキューブを、手に持った光る剣で次々に斬っていく人気VRリズムゲームです。テンポの良い音楽が流れる中で、スターウォーズ風の光る剣を様々な方向へ切りつける爽快感があり、ついつい何曲もプレイしてしまいますが、気づけば汗だくになってしまうほどの運動量を得られます。同ゲームの開発元企業は、19年11月にFacebookが買収しましたが、ゲーム自体は様々なVRプラットフォームで提供されています。例えば、PlayStation Storeでの価格は3259円(別途PS VR端末が必要)です。

このほど、日本企業でもリモートワークが急拡大しています。会社オフィスまで通勤しなくなり、ここ最近は自宅での作業が続いてるという方もいらっしゃることでしょう。ただリモートワークは意識しないと運動不足になりがちです。手軽に室内で気分転換しつつ、健康リスクを回避できる手段を持っておくことは、長い目で見れば非常にオススメです。

クロフィー代表取締役、テックジャーナリスト

1986年東京都生まれ。大手証券会社、ビジネス誌副編集長を経て、2013年に独立。欧米中印のスタートアップを中心に取材し、各国の政府首脳、巨大テック企業、ユニコーン創業者、世界的な投資家らへのインタビューを経験。2015年、エストニア政府による20代向けジャーナリストプログラム(25カ国25名で構成)に日本人枠から選出。その後、フィンランド政府やフランス政府による国際プレスツアーへ参加、インドで開催された地球環境問題を議題に掲げたサミットで登壇。Forbes JAPAN、HuffPost Japan、海外の英字新聞でも執筆中。2018年7月に株式会社クロフィー設立。

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