監視社会化と日韓約束否定:中韓の確信犯的暴走

 単なるスローガンに聞こえた「中国の特色ある社会主義」が国民を縛り付ける監視社会化の実体を備えてきました。日本との国家約束を切り捨てる韓国ムン政権の暴走も確信犯的な「脱・西側社会」に見えてきました。中韓両国の向かう先は、これまで主導的だった西側の自由主義社会とは相容れません。同時に両国の経済基盤が揺らいでおり、無理無茶を通せるかは経済的安定が保てるかに係っていると指摘できます。

《中国の「監視社会化」はここまで徹底》

 ◇街頭の監視カメラで顔認証し行動分析

 2017年に中国で赤信号で横断歩道を渡るとカメラで顔認証されて顔写真と氏名が街頭大型ディスプレイに晒されるようになったと報じられた驚きと違和感を、第569回「中国の目指すSF的な個人行動管理社会が見えた」で書きました。当時は監視システムが何をしているのか想像するしかありませんでしたが、TechCrunchによる《中国のとあるスマートシティ監視システムのデータが公開状態になっていた》が実情を暴露してくれました。中国クラウド上のデータベースに鍵が掛かっていなかったのを、研究者がたまたま発見した結果です。

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 《このシステムが監視しているのは、北京東部の少なくとも2つの小さな住宅コミュニティ周囲の住民たちだ。その中でも最大のものは市の大使館地区として知られるLiangmaqiao(亮馬橋)である。このシステムは、顔認識データを収集するように設計されたカメラを含む、いくつかのデータ収集ポイントによって構成されている。公開されたデータには、人々がどこに、いつ、どのくらいの時間滞在していたのかを個別に特定し、ある個人の日々の生活を割り出せるだけの詳細なデータが、誰でも(もちろん警察でも)アクセスできるかたちで含まれていた》

 顔認証を使って多数派の「漢族」か、受難の渦中にある少数民族「ウイグル・ムスリム」かなど民族を判断し、人相や表情まで記録していると言います。赤信号での横断晒しもの化は表面に現れた枝葉末節に過ぎませんでした。

 ◇国民に点数を付けて管理する社会に

 監視カメラによってイベントに集まった群衆から指名手配者が大量に逮捕されたとの報道も見ますが、最大の目的は普通の人の行動を監視して管理する社会実現です。

ニッセイ基礎研REPORT《あなたの‘信用’、何点ですか?―中国12都市をモデルに進む「社会信用システム」とは?》を見ましょう。

 2020年までに国民の社会秩序を確立させる「社会信用システム」の構築を目指していて、2018年1月から南京・蘇州・成都・杭州など12のモデル都市でスタートしたと言います。山東省威海市の例が詳しく述べられており、模範レベルが「1150点以上」、普通レベルは「1000-1049点」、警告レベルなら「801-949点」、最低の不信用レベルが「800点以下」です。減点項目が圧倒的に多く、加点が少ないのが特徴的で、減点・加点項目一覧を以下に引用します。

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 例えば、社会信用システムの判定によって移動の自由が奪われます。中国では航空券や列車乗車券の購入に身分証明が必要です。2019年3月にThe Guardianは社会信用システムの落後者に対して「2018年末までに1750万回の航空券購入を禁止」「550万回、列車乗車券の購入を禁止」と報じています。海外に出るためのパスポート交付ももちろん受けられません。

 AI監視システムが習近平政権が推進する経済外交構想「一帯一路」のインフラ整備に加えられる形で輸出されているとの指摘があり、市民社会の歯止めが利かぬ途上国などで人権抑圧が広まる可能性があって不気味です。ニューズウイーク日本版の《中国が世界54カ国にAI監視技術を輸出》をご覧ください。

 ◇新疆ウイグルでのイスラム教徒抑圧

 中国全土に広がりつつある監視システムを一段グレードアップしたシステムが新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒抑圧に使われています。住民の乗り物にGPS位置情報発信装置を付けさせるなどして移動を把握、住民が自分の地域から離れると公安当局にアラームが通知されるとか、スマートフォンに当局のアプリを強制的にインストールさせ使用状況を監視するなどです。100万人ともいわれる住民が職業訓練と称される強制収容所に送られ、イスラム教徒のアイデンティティーを奪う生活を強いられる一方で、収容所外にいる住民も厳しい監視下にあります。

 抑圧される側が地獄なら抑圧する側も地獄――なんとも悲惨かつ過酷と感じさせたBitter Winterの《圧力をかけられた新疆ウイグル自治区の漢族の職員が首つり自殺》を紹介します。

 抑圧側である漢族の《公務員は勤務時間を除く毎週土曜日と日曜日に指定されたウイグル族のホストファミリー宅で過ごすことになっている。さらに、およそ150元(約2,500円)相当になる米、小麦粉、または子ども服と靴を持参する必要がある。それを1か月に4回、休まず行わなければならない》。つまり週末の休みを無くし、かつ自前で土産を用意してスパイするためにホストファミリー宅に入り込む任務が課せられています。親が強制収容所送りが相当か、判断するために子供から日頃の言動を聞き出すと言います。それでいてホストファミリーと和やかに過ごした写真を毎週提出するよう義務付けられています。

 《和田地区のある公務員がBitter Winterに話したところによると、同僚の1人は、ウイグル人ホストファミリー宅に滞在する任務のために、麻痺で寝たきりの両親の世話をする時間がなくなったという。妻が出産でに入院し、他に面倒をみられる人もいないので部署に休暇を願い出たが、部署の幹部に却下された。この件で彼は悲壮感を抱いた。逃げることもできない果てしない政治的任務に、個人の自由を奪われたように感じた。家庭生活の中で直面した困難と葛藤はますます重くのしかかり、解決できないほどになった。彼は次第に沈みがちになったが、所属部署が彼の苦境を懸念することはなかった。最後には精神上のストレスが極度に達し、彼は首をつって自殺した》

 米中貿易摩擦の中でファーウェイへの制裁が明確な形になりつつあります。米国は次の制裁対象として監視システムメーカーを考えていると伝えられました。

《韓国ムン政権は戦後秩序破壊が目標》

 ◇「正義は我にあり」で暴走、譲らず

 韓国が文在寅(ムン・ジェイン)政権になって2年、青年層の深刻な就職難を背景に登場しただけに「雇用政府になる」と標榜してきたのに成果を出していません。1月の雇用状況は最悪で、失業者数122万4000人は過去19年間で最多、前年同月に比べ20万人以上増えました。経済指標の悪化が次々に伝えられる中で決定的だったのが4月末に飛び出した「第1四半期マイナス0.3%成長」発表でした。

 中央日報の《【社説】「最低賃金は罪がある」…韓国経済成長率、次から次へと下方修正》はマイナス成長発表を受けて内外各機関が経済成長率予測を軒並み下げていく状況にいたたまれない思いです。

 《下方修正する理由はほとんど口をそろえる。輸出減少と予想より深刻な最低賃金の引き上げによる副作用だ。特に、2年間29%も上がった最低賃金は韓国経済に悲鳴をあげさせた。雇用惨事を起こし消費を萎縮させて貧富格差を拡大した。昨年「最低賃金の引き上げによる肯定的な効果が90%」といった文在寅(ムン・ジェイン)大統領の診断とは完全に違う状況だ》

 国際通貨基金(IMF)は「2年間で29%も上げれば、どんな経済体でももたない」とまで言っています。売り上げ増が無いのに賃金だけ大幅に上げれば立ち行かなくなって人減らしか廃業が自然の成り行きです。ところが、ムン政権の掲げている所得主導成長論は労働者の賃金を底上げすれば消費を活発化でき、景気が良くなると考えます。

 輸出不振、設備投資低迷、消費委縮が重なった現在、朝鮮日報など大手メディア、経済界、政界の重鎮などが所得主導成長論の撤回を求めています。しかし、ムン大統領は聞く耳を持たないようです。「方向は間違っていない、成果を出すにはもっと施策の速度を上げるべきだ」と考え、2019国家財政戦略会議では「我々の経済力に自信を持ってよい」と語りました。見たくないデータや数字は見ない主義のようです。

 ◇反日を左派政権維持のテコに

 戦後最悪と言われる日韓関係は経済的な制裁・報復合戦に入りかねず、そうなれば手が付けられなくなるとメディアや政界から危惧する声が上がっています。ところが、いわゆる徴用被害者の最高裁賠償判決から半年以上も対応策を検討していたはずの韓国外交部が「日本企業が判決を履行すれば何ら問題がない」と言い出し、河野外相が「事の重大性を理解していない大変な発言だ」と批判する事態に至りました。朝鮮日報の《強制徴用:3カ月ぶりの韓日外相会談、終始重苦しい雰囲気に》が伝えています。

 請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決したというのが日本政府の立場であり、韓国政府もムン政権になるまでは同じ立場でした。前政権と結んだ慰安婦問題合意までも実質的に無効化したムン政権の意図は「日韓請求権協定は認めない」であり、主に保守政権が作った戦後秩序を破壊したいのだと考えるしかありません。朴正熙政権が朝鮮戦争の廃墟から成し遂げた経済発展「漢江の奇跡」が教科書から消され、在韓米軍の撤退もありうるほど米韓首脳の信頼関係が悪化しても格段の手を打つでもない姿勢から透けて見えます。

 日韓関係を修復するどころか、反日感情を保守勢力を叩く手段として駆使しています。日本統治に抵抗した「三・一運動」100周年に向けてムン大統領が「親日清算、正義のある国に進む始まり」と強調しました。保守系を「独裁の子孫」と呼び、土着倭寇(わこう)という不思議な蔑称が保守系の野党第一党幹部に投げつけられるのを見ると、とても西側の自由主義社会とは見えません。国民情緒法が司法判断をも左右する韓国では「あいつは親日」と非難するだけで口を封じるか、少なくとも口を重くさせられます。

 ウォン為替レートの大幅安が象徴する経済の悪化にもかかわらず、現在の左派政権を長期化させるのがムン政権が目指すところであり、反日のテコは使いどころが多いでしょう。国家間の約束は守らない、普通の話し合いもできない――こんな国とは極力、関りを減らすしかありません。日韓首脳会談をしても話がかみ合うとは考えられません。