米朝間で主人公妄想を膨らませる韓国ムン大統領

(写真:ロイター/アフロ)

 時代考証も無くこうであったらとファンタジーを描く韓流ドラマを地で行って、韓国ムン大統領が米国と北朝鮮の仲を取り持つ主人公妄想に陥っています。金正恩氏が「強盗のような制裁封鎖」と言い出しているのにです。15日に飛び出した日米含めた7カ国による東アジア鉄道共同体提案といい、誰からも歓迎されない現実離れぶりがここまで行くと失笑の対象になります。

 朝鮮日報日本語版の《板門店宣言の国会批准求める文大統領に米国から懸念の声》はこう伝えています。

 《政府は6月12日の米朝首脳会談以後、米朝間の非核化交渉を見守る姿勢を取ってきた。しかし最近は、9月の南北首脳会談開催合意や今回の光復節式典祝辞を機に、南北関係改善を通じて米朝交渉を促進するという方向に転換した》《大統領は祝辞で「南北関係発展は北朝鮮と米国の関係進展の付随的効果ではない」と述べ、「非核化に進展があって初めて、南北関係改善が可能になる」という米国の見解に遠回しに反論した。文大統領はさらに、「韓半島(朝鮮半島)問題は我々が主人だという認識が重要だ」と語り、「運転手」以上の役割を宣言した》

 トランプ大統領は米朝関係は良いとの立場を変えていませんが、17日付の聯合ニュースの《金正恩氏「強盗のような制裁封鎖」 視察先で異例の言及》は《6月の朝米(米朝)首脳会談以降、北朝鮮はメディアを使って制裁への不満を表しているが、金委員長自ら「強盗のような制裁封鎖」という強い表現で制裁に言及したのは異例だ》と報じました。

 北朝鮮から依然として非核化の具体的な措置が出て来ないのに、米国から不思議な発言が今月流れました。朝鮮日報の7日付《ボルトン補佐官「1年以内の非核化、金委員長が文大統領に約束」》です。

 《ボルトン補佐官はこの日、米国フォックスニュースに出演し「今年4月27日に板門店で開かれた南北首脳会談で、金正恩委員長は文在寅(ムン・ジェイン)大統領に非核化の約束をした。1年以内にそうするつもりだと約束した」「従って現時点での焦点は、金正恩委員長がシンガポール米朝首脳会談でトランプ大統領に行った約束を守らせること」と語った》

 これまで報道されなかった「1年以内約束」ですが、韓国政府はきちんと説明しようとしません。米朝首脳会談を実現させるために韓国が米国に流した「妄想」の疑いが拭えません。逆に北朝鮮側はこのところ「南は金のかからない交流行事ばかり言ってくる」と不信感を募らせており、北朝鮮に対しては「首脳会談で非核化の意思さえ示せば国連制裁は緩む」と仲人口を使った可能性があります。

 米国側でかつて対北朝鮮の責任者だったジョセフ・ユン氏がワシントン・ポスト紙に15日に寄稿しています。《米国と北朝鮮はどうすれば失望のサイクルを崩すことができるか》(英語)です。首脳会談後の米朝の不満と非難の応酬をこう理解します。

 《不満の根底には、トランプ大統領と金正恩氏がシンガポールで合意したことに対する根本的に異なる理解がある。北朝鮮の「非核化」についてトランプ政権は、単純な2段階、完全かつ即時の非核化の後に、制裁が解除されて利益をもたらすとした。しかし、金氏は、段階的なプロセスの合意とし、それが米国との正常な外交的、政治的、経済的関係をもたらすと信じた。これには朝鮮戦争の停戦協定に代わる終戦宣言や経済制裁解除、外交的承認、安全保障、平和条約などが含まれる》

 両者の決裂を防ぐためには外交プロセスを拡大する措置が必要で、効果的なのは平壌とワシントンに相互に外交連絡事務所を開設することであろうと説いています。局面打開に南北首脳会談が役立つと考える北朝鮮専門家はいそうにありません。

 そもそも北朝鮮は南北交流すべては歓迎していません。第582回「北朝鮮が米に苛立つのは体制保証への無理解か」で北朝鮮が求めるのは《締め上げられている国際制裁の解除と、支配層が自由になる資金や物資が欲しいだけでしょう。韓国との南北交流も南の文化や豊かさを見せる場面は極力排除しないと国民に動揺を招きます》と指摘しました。韓国ムン大統領が言う南北の鉄道や道路を連結して往来を自由にする展望など望んでいるとは考えられません。