皇帝・習近平では法定退職年齢引き上げは困難

 中国の国会、全人代で国家主席の任期を撤廃する憲法改正を見て、先行きの独裁不安もさることながら法定退職年齢の引き上げという超不人気政策実現は遠のいたと感じました。善政を敷かない皇帝では持たないからです。中国の定年制度では男性60歳、女性55歳で退職して年金生活に入ります。65歳以上を高齢者とする世界の趨勢と乖離し、年金積立金の不足と相まって年金制度は遠くない将来に持続可能でなくなります。2011年から15~59歳の生産年齢人口が減り始めている状況もあって、法定退職年齢引き上げを本当はせざるを得ないのですが、独裁者が言い出して懐が痛む庶民の納得を得るのは極めて難しいでしょう。

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 中国社会科学院人口・労働経済研究所などの公表データから、中国の60歳以上と65歳以上人口、それに日本の65歳以上人口がそれぞれ全人口に占める割合予測をグラフにしました。65歳以上同士で比較すると、中国は日本から30年遅れで高齢化に突き進んでいます。ところが、中国の60歳以上人口のグラフは急カーブで立ち上がり、日本の65歳以上に対して2015年段階で20年遅れ、2030年には15年遅れ、さらに2050年には追い付いてしまいます。

 日経新聞の《中国、集団指導体制に幕 国家主席の任期撤廃》は《選挙のない中国で権力の暴走を抑える最後の歯止めがなくなり、トウ小平氏が敷いた集団指導体制は習近平(シー・ジンピン)国家主席のもとで事実上、幕を閉じる。世界は習氏の体制が2030年を超えて続くのを視野に、中国と向き合わざるをえない》と書きました。

 そうです、2030年には、現在の日本の65歳以上と同じ割合26%余りで中国には60歳以上が存在する社会になり、年金制度は崩壊しかねないとされます。全人口14億人に対して60歳以上が3億7000万人。小国が多いアフリカの独裁国家と違って強権支配だけでは持ちませんし、共産党支配が国民を豊かにしたと統治の正当性を主張してきた経緯が皇帝・習近平を束縛します。

 2016年に書いた第544回「東アジア諸国の生産年齢人口が減少に転じる」で欧米とアジア各国の高齢化進行予測をまとめています。15~64歳の生産年齢人口で65歳以上を支える老年人口指数のグラフを掲げたもので、現役2人で高齢者1人を支える水準に中国が達するのは2050年です。しかし、15~59歳の生産年齢人口で60歳以上を支えるのだとするならば、中国は2035年に「現役2人で高齢者1人」になってしまうのです。日本では2025年にそうなる予測です。

 ただし、以上は中国の年金でも政府が認めるきれい事の部分です。2015年の第482回「国家のエゴが歪ませた中国年金制度は大火薬庫」で、金沢大で書かれた中国人研究者による学位論文が「現状で破綻同然である」と主張していると伝えました。年金資金は地方政府が管理していて、資金が流用されている恐れが大と言います。年金制度は都市部の労働者向けに整備されており、農村部では始まったばかりであり月額で千円ほどと社会保障にはなり得ない水準です。