非核化査察団に移動・行動の自由がポイント

寧辺の核施設(写真:ロイター/アフロ)

 突然の米朝首脳会談実現へのニュースで沸き立っていますが、北朝鮮の非核化検証はとても難しく、査察団に移動・行動の自由が約束されるかが実現のポイントです。トランプ大統領が首脳会談をするとかは枝葉末節です。これまでの「失敗の歴史」では寧辺の核施設へ国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れていても、それ以外の場所に核物質を隠していました。今回はさらに既に核弾頭を何個かは持っていて、ミサイル(ICBM)への搭載が問題なのですから、査察団は自由に動き回って「隠していない」と確認しなければなりません。北朝鮮の国民にも認めていない「移動・行動の自由」を外国人に保証するのは、ほぼ不可能です。

 日経新聞の《「核査察の受け入れを」 官房副長官》は《北朝鮮は2009年にIAEA監視要員を追放して以降、査察の受け入れを拒否している。日米両政府は非核化を検証する上で、まずは寧辺の核施設への査察受け入れが不可欠とみている》とするのですが、実際には査察のハードルは従来以上に高くなりました。

 ロイターの《アングル:北朝鮮との非核化対話、「失敗の歴史」繰り返すか》は米国が何かを与えては約束が守られず、裏切られた経緯をまとめています。

 《2007年2月に開かれた6カ国協議で、北朝鮮は、重油提供と引き換えに原子炉を停止すると約束。また、凍結された資産2500万ドル(約26億円)の返還を米国に要請。6月に要求が通り、その1カ月後の再協議に道が開かれた。だが、その年末までに核開発活動の全てを公表するという、北朝鮮の約束は果たされなかった》

 《2002年、ブッシュ大統領が、北朝鮮はイランやイラクと並ぶテロ支援や核兵器の入手を企てる「悪の枢軸」だと発言したことで、両国関係はさらに悪化した。米朝の枠組み合意は、米国政府が北朝鮮が秘密裡に核兵器の開発を進めていたと断定し、北朝鮮が自衛のために核兵器を保有する権利があると反論したことで、2002年に崩壊した。北朝鮮は、米国が約束した重油の提供を遅らせていると非難。国際査察官に国外退去を命じ、核施設の稼働を再開させた》

 全ての歴史は北朝鮮の言い分は信頼できないと示しています。ところが、米朝間を仲介している韓国ムン大統領の脇は大甘です。

 北朝鮮に送った特使団が持ち帰った南北合意6項目の一つを見て笑ってしまいました。「南北交渉中は北側は核兵器はもちろん、従来の武器を南側に向けて使用しない」が成果のはずがありません。第564回「北朝鮮の砲撃から学校避難準備が無い油断の韓国」で紹介した、恐るべきズサンな国内体制しか持たない韓国側からすれば嬉しい合意かもしれません。ソウルが火の海になれば児童・生徒約100万人が最も危ういのです。しかし、裏返せば「南に核だって使う」と言っています。

 流石に韓国メディアも気付いています。中央日報の《南北合意、サソリの毒針に刺されるカエルになるな》は《これは事実上の脅迫だ。北朝鮮は相当な数量の核兵器を生産したか、近く生産して配備する見通しだ。北朝鮮はこの核兵器で韓国を攻撃する能力があるが、それをしないということだ》と伝えました。全体として南北合意ではなく、北朝鮮が言ってきた事項に見えるとの評価です。

 米朝首脳会談に先立って行われる4月末の南北首脳会談が非核化の段取りをするものなら、韓国政府の大甘ぶりで「移動・行動の自由」まで言及されるとは想像できません。