中国の環境NGOが大気汚染改善に挑む最初の一歩

悪化の報道こそあれ改善の兆しがない中国大気汚染。鈍な政府と違う立場で企業を動かそうと中国の環境NGOが取り組みを始めた報告を、当のNGOリーダーが来日したシンポで聞いたデータを加えてリポートします。10月下旬、都市集中暖房を始めた中国東北部ハルビンで微小粒子状物質PM2.5の濃度が大気1立方メートル当たり1000マイクログラムの観測上限を超えたニュースは衝撃的でした。30日、大阪でのシンポでも風がなく空気が滞留してしまう気象条件が第一にあげられましたが、根本的には自動車や工場・建設現場からの排出が経済発展とともに膨大になった点が問題です。NGO報告はセメント産業の排出量の大きさに着目しています。

北京にある「公衆環境研究中心」がそのNGOです。2006年発足で中国内46の環境NGOと連携、先輩格として相談相手にもなっていると言います。ウェブサイトで目立つのが汚染排出源企業のデータベース化です。例えば下のマップは汚染水、排気、重金属、畜産養殖等の排出源です。各地の市民が拡大して見れば身近な汚染源を見つけられます。

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政府が色々な場所で公表している環境汚染情報をかき集めてひとつのデータベースにして見せています。発足当初は2500件に過ぎなかった情報が13万件にも膨れ上がりました。そこから下の図のようなマップが出来ます。北京市内だけ抜き出して環境汚染違反で監督を受けた企業を見つけ、それがどのような中身だったか、元の政府文書が読めます。

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データを活かす例として「公衆環境研究中心」報告のひとつ、セメント産業を取り上げた「RESPONSIBLE INVESTMENT IN THE CEMENT INDUSTRY: STILL A LONG WAY TO GO」を読んでみました。下のグラフのように世界のセメント生産の58%を中国が占めていて、セメント製造工程での砕石や加熱に使う石炭など、重篤スモッグを起こす環境汚染排出源として膨大です。セメント生産量は過去10年で3倍にもなっています。

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重篤スモッグの素になる微粒子や窒素酸化物などが製造工程のどこで出るのか、調べあげています。中国全体で見ても石炭消費量が過去10年で3倍になり、昨年は世界の半分に達しました。「公衆環境研究中心」は環境基準を守らない企業からの素材・製品を買わないよう大手企業に圧力を掛け、「グリーン度」のランキングを作って企業を環境保全に誘導しようとします。例えば米アップル社は最初は応じなかったのですが、今はランキングに好意的に変わったと言います。メディアや市民・消費者も加わって圧力をかける戦略です。

セメント業界では大手17社を選定、過去の環境汚染例をリストアップして調べています。5月には環境NGOの連名で各社に要請を送りつけました。好意的な反応を見せたのは多国籍企業の1社だけで、他社は再度の申し入れにも逃げる姿勢です。まだまだ先は長いぞ――が現在の到達点です。東京では11月1日にもヒューマンライツ・ナウ主催シンポがありこちらが案内です。

【参照】「インターネットで読み解く!」

第388回「PM2.5発がん性認定、お座なりの日中政府に痛撃」

「『中国は終わった』とメディアはなぜ言わない」

第346回「『がん村』放置は必然、圧殺する中国の環境司法」