焼鳥居酒屋チェーン「鳥貴族」を展開する会社が初めて手掛けるファストフード「TORIKI BURGER」(以下「トリキ」)大井町店(東京都品川区)が明日8月23日(月)10時にグランドオープンする。大井町駅中央口(東)に立つと、左方面に黄色の看板がよく目立つ。JR京浜東北線、TWRりんかい線、東急大井町線の3線が接続する大井町駅はJRだけでも1日21万人強の乗降客数があり、JR御茶ノ水駅(東京都千代田区)やJR錦糸町駅(東京都墨田区)に並ぶ規模だ。その駅前とはファストフードショップとして絶好の立地と言えるだろう。

同店は1階2階の2層構造で計56.47坪、54席。営業時間は7時~21時。決済は、現金・クレジットカード、一部交通系ICカードとなっている。

カウンターには有人のレジが2台、無人のレジ1台、計3台のレジで対応する。(筆者撮影)
カウンターには有人のレジが2台、無人のレジ1台、計3台のレジで対応する。(筆者撮影)

「鳥貴族」は1985年に大阪で大倉忠司氏(現・株式会社鳥貴族ホールディングス代表取締役社長)が創業。現在、関西・関東・東海の三大商圏で615店舗を展開(2021年6月末現在)しているが、「トリキ」はどのような成長を見せるのであろうか。

均一価格の「トリキプライス」

「トリキ」は「鳥貴族」のコンセプトを踏襲していて、それが大きな特徴となっている。

まず、店舗デザイン。カラーは「鳥貴族」と同じ赤・黄を使用。視認性を高め、遠くからでも目に飛び込んでくる外装デザインにしている。内装は白と木を基調とした。アクセントとしてアイデンティティである黄色を配色している。

次に、メニュー。「鳥貴族」と同様「国産」にこだわっている。チキンや野菜などの生鮮食品をはじめ、バンズに使う小麦、サイドメニューの食材も全てが国産である。チキンは九州や四国など複数の産地に分かれている。野菜は時期によって変わるが、例えばトマトは愛知県や石川県など、それぞれ国内の主要な産地から調達している。

そして、価格設定。「鳥貴族」では、全品が327円(税込、以下同)均一だが、「トリキ」では単品もセットも、それぞれの全メニューで同一価格とした。これを「トリキプライス」と称している。

単品もセットもそれそれ均一価格を設定。リピーターにとっては「今日はどれを食べようか」という気分なることだろう。(TORIKI BURGER提供)
単品もセットもそれそれ均一価格を設定。リピーターにとっては「今日はどれを食べようか」という気分なることだろう。(TORIKI BURGER提供)

メニュー構成は7時~10時30分までは「MORNING MENU」(モーニングメニュー)、10時30分からクローズまでは「DAY MENU」(デイメニュー)となっている。

モーニングメニューは「たまごロール」「あんバターロール」「ベーコンエッグ」「サラダチキン」「サラダチキン~柚子胡椒マヨ~」「サラダチキン~バジル~」「コロッケバーガー」の6品目で、それぞれ単品が290円(ロールの2品のみドリンクS付き/税込)。

デイメニューは「トリキバーガー」「焼鳥バーガー~てりやき~」「サラダチキン~柚子胡椒マヨ~」「サラダチキン~バジル~」「チキンカツ」「つくねチーズバーガー」「チキン南蛮」「ヤンニョムチキン」の8品目で、それぞれ単品が390円、セットメニュー(ポテトS+ドリンクM付き)が590円となっている。

モーニングメニューのバンズは一般的な茶色のバンズではなく「白バンズ」としている。これは材料に米粉を使用していて、もっちりふんわりした食感になっている。

モーニングメニューのバンズはすべて米粉を使用した白バンズではさんでいる。これはそのメニューの中の一つ「サラダチキン~バジル~」単品290円、セット490円。(TORIKI BURGER提供)
モーニングメニューのバンズはすべて米粉を使用した白バンズではさんでいる。これはそのメニューの中の一つ「サラダチキン~バジル~」単品290円、セット490円。(TORIKI BURGER提供)

サイドメニューでは鶏関連のスイーツとして「エッグタルト」「トリキプリン」各190円がラインアップされている。ポテトS190円、M250円、L350円もある。

この他、単品メニューに「クリスピーチキン」390円。トッピングが「チーズ」「トマト」「たまご」各50円。ポテト、ドリンクが+50円でサイズアップできる。

メニュー構成は分かりやすく、価格設定はリーズナブルで、顧客にとって同店の使い勝手は既存のファストフードよりも早く浸透するのではないだろうか。

デイメニューの一つ、スタダードの「トリキバーガー」単品390円、セット590円。(TORIKI BURGER提供)
デイメニューの一つ、スタダードの「トリキバーガー」単品390円、セット590円。(TORIKI BURGER提供)

「鳥貴族」と異なるビジネスモデル

株式会社鳥貴族は2021年2月に持株会社体制に移行し、株式会社鳥貴族ホールディングスへと商号を変更。「鳥貴族」を運営する事業会社の株式会社鳥貴族は2020年8月に設立された。「トリキ」を運営する株式会社TORIKI BURGER(本社/大阪市浪速区)は2021年8月に設立された。

同社の代表取締役社長は高田哲也氏。高田氏は1988年日本マクドナルド株式会社に入社し、統括マネジャー、営業部長等を歴任。2010年株式会社鳥貴族(現・株式会社鳥貴族HD)に入社。営業企画、商品開発等の幅広い領域で部門責任者を歴任。株式上場準備における店舗管理体制整備の他、店舗運営に関わる各種システムの構築や、商品戦略の策定・導入等に従事。2020年8月よりチキンバーガー業態の「TORIKI BURGER」開発のプロジェクトリーダーを担当。2021年8月に代表取締役社長に就任した。

「鳥貴族」創業者の大倉忠司氏は、同社の取締役会長に就いている。

前述した「トリキ」の斬新な価格構成はどのようにして考えられたのか、筆者は高田氏に聞いた。

「お客様がいつも利用しやすいリーズナブルなプライスということ。『価格で選ぶのではなく、一番食べたいものを選んで欲しい』という願いを価格に込めている。プライシングは原価を考えて行っているのではなく、納得できる価格ということを優先した。そこで現状原価率50%だが、サイドメニューとのシナジーを工夫して下げていく」

ブランドコンセプトを「価値ある時間と生活を。」としており、顧客にとって日常遣いとなってほしいといった意図が感じられる。

筆者が「『トリキ』のブランド浸透を早く進めるために『鳥貴族』で『トリキ』のメニューの一部を提供するなどのキャンペーンは行うのか」と尋ねたところ、このように述べた。

「それはそれぞれのキッチンの装備が異なっているので当面は考えていない。『トリキ』では『鳥貴族』とは別のビジネスモデルをつくっていく」

「鳥貴族」は客単価2000円強というリーズナブルなポジショニングを維持するために固定費を抑える方針を貫いてきた。出店立地は主にビルの空中階であった。そこに顧客は目的来店してきた。

「トリキ」の立地はファストフードのセオリーとして店前通行量が充実していることがポイントとなる。そこで「都内の駅前や繁華街を中心に検討」(高田氏)することになり、さらに路面に出店する必要がある。鳥貴族HDとしては、「鳥貴族」と同じコンセプトであるが、まさに別のビジネスモデルを展開することになる。事業ポートフォリオの開拓である。

2階のイートインコーナーへ導く階段は、入口用と出口用が別々のワンウェイとなっている。(筆者撮影)
2階のイートインコーナーへ導く階段は、入口用と出口用が別々のワンウェイとなっている。(筆者撮影)

「鳥貴族」と比肩する業態に育てる

同社の発表によると、「トリキ」事業の概要は以下のようになっている。

・想定ターゲット:お一人様、ファミリー、若年層の男女。

・想定客単価:800円(会計単価ベースで算出、ファミリーなど複数名分のテイクアウトも加味したもの)。

・売上目標:店舗あたり年商2億円。

・出店計画:3カ年で直営店10~20店舗を目指す。立地は駅前や繁華街など都内を中心とする予定。郊外出店の場合はドライブスルーの導入も検討。

・今後の展開:3カ年以降はフランチャイズ制度を構築し、直営とFCによって展開を加速させる予定。長期的には海外にも展開し、「鳥貴族」と比肩する事業に育てる。

これらからは「トリキ」を堅調に育てていく姿勢が感じられる。

2020年3月以降のコロナ禍によって、飲食業界は大きな影響を被った。特にアルコールや夜営業が支えてきた居酒屋系の企業では売上の落ち込みにおびただしいものがあった。

このような動向に相反して売上を伸ばしたのがファストフードである。

この市場を狙って、今多くの外食企業がハンバーガーやフライドチキンといったファストフードの業態を次々とオープンしている。

飲食業界はコロナ禍で大きく揺れながらも、新しい業界構造が形作られていく端緒にいると言えるだろう。

下町の風情のある駅前商店街の中に近代的な店構えが映える。(筆者撮影)
下町の風情のある駅前商店街の中に近代的な店構えが映える。(筆者撮影)