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「やっぱりステーキ」東京2号店がオープン、1000円弁当1000食無料配布に込めた想いとは?

千葉哲幸フードサービスジャーナリスト
東京・蒲田の商店街に出店した「やっぱりステーキ」東京2号店。(筆者撮影)

「やっぱりステーキ」の東京2号店が2月11日にオープンした。チェーン全体では61店舗となった。立地はJR蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ商店街のほぼ中間で、吉祥寺の住宅街に構える東京1号店(昨年6月17日オープン)とは趣が異なっている。物件は元精肉店で34坪34席、店舗造作に850万円ほどを費やした。

「やっぱりステーキ」を経営するのは株式会社ディーズプランニング(本社/沖縄県那覇市、代表/義元大蔵)。2015年2月、那覇市内で3坪6席の規模でスタート。赤身肉のステーキ200ℊを1000円で提供するというスタイルがたちまち大ヒットして月商280万円を売り上げた。2号店は20坪24席、日曜日定休、夜に営業をしている人たちが仕事を終えてから食事にやってきて、朝6時に満席となり、マックスで1日37回転という記録を持つ。沖縄には飲んだ後でステーキを食べるという「〆ステーキ」という文化があり、現在沖縄には24店舗を展開している。

メニューは「やっぱりステーキ」150ℊ1000円(サラダ・スープ・ご飯セット/税込、以下同)をはじめ、イチボ、ヒレといった赤身肉のステーキを1000円というジャストプライスで提供、新メニューとして、溶岩石で焼き上げる「牛肉100%レアハンバーグステーキ」200g1000円をラインアップしている。

コロナ禍でも次々と出店

「やっぱりステーキ」はコロナ禍にかかわらず出店が続いている。昨年は、2月16日久屋大通店(愛知)、3月16日弥冨店(愛知)、4月13日静岡鷹匠店(静岡)、4月24日鈴鹿白子店(三重)、5月12日小倉北店(福岡)、6月17日吉祥寺店(東京)、9月10日津南店(三重)、11月6日イオンタウン鈴鹿店(三重)、11月16日常滑店(愛知)、11月22日徳島駅クレメントプラザ店(徳島)、11月30日ポップタウン住道店(大阪)、12月4日広島本通店(広島)、12月10日三島店(静岡)、今年に入り1月30日あべのウォーク店(大阪)、2月5日松山ロープウェー通り店(愛媛)、そして2月11日の蒲田店となっている。

蒲田店ではオープン初日、1日限定で1000円の「冷めてもおいしいステーキ弁当」(150gのサイコロステーキ)1000食を無料で配布した。100万円の持ち出しである。その理由について同社代表の義元氏はこう語る。

「この日にオープンすることになったのは緊急事態宣言が2月8日に明けると想定していたからでしたが、それが1カ月延びてしまいました。出張で東京にやってくると街に元気がないのを感じています。そこで地元蒲田の皆さんに何かの形で貢献したい、喜んでいただいて元気になっていただきたいと、この企画を考えました」

「やっぱりステーキ」にとって初日の行列は普通のことで、整理券の配布は淡々と行われていた。(筆者撮影)
「やっぱりステーキ」にとって初日の行列は普通のことで、整理券の配布は淡々と行われていた。(筆者撮影)

「冷めてもおいしいステーキ弁当」1000円(税込)は、赤身肉150gのサイコロステーキでコスパが高い。(やっぱりステーキFacebookより)
「冷めてもおいしいステーキ弁当」1000円(税込)は、赤身肉150gのサイコロステーキでコスパが高い。(やっぱりステーキFacebookより)

この企画を行う上で、保健所、区役所、警察などに届け出を行った。保健所の担当者からは「1000食無料配布とは、その店の規模では無理でしょう」と指摘されたというが、義元氏は「『やっぱりステーキ』ではこれまでオープン初日に800食ほどを売り切ることは普通に行われていて、たくさんのお客様に目配り、気配り、心配りで対応するノウハウがあります」と自認している。この日は沖縄からのヘルプも加わり、1000食の製造と配布のために18人のスタッフで対応した。

沖縄からのヘルプも加わり、整然と手際よく1000食の弁当が製造されていった。(筆者撮影)
沖縄からのヘルプも加わり、整然と手際よく1000食の弁当が製造されていった。(筆者撮影)

同社はこの企画の告知をホームページとFacebookに投稿する程度にとどめてひっそりと行った。

筆者は整理券が配られる9時に同店に赴いたところ、長い行列や混雑もなく整然と配布されていた。店頭には「コロナに打ち勝て!! 大田区応援募金箱」を設置。弁当引換券を入手した人は次々と1000円札を投入していった。この募金は全額を大田区に寄付する。

募金箱に次々と1000円札が入れられていった。これは大田区に全額寄付する。(筆者撮影)
募金箱に次々と1000円札が入れられていった。これは大田区に全額寄付する。(筆者撮影)

タブレットオーダーで客単価が上がる

「やっぱりステーキ」ではテイクアウト需要が増えてきている。顕著な例を挙げると、2月5日にオープンした松山ロープウェー通り店はテイクアウト需要を想定して13席の客席数以上のキッチンを構成したところそれが狙い通りとなり、一日の客数は260人あたりで推移していてうち50~60食がテイクアウトとなっている。デリバリーは行っていない。他の既存店では時短要請に従っているが、テイクアウト需要が高まるようになった。

新しい試みとして、これまで精算を自動券売機による前払い制で行ってきたが、沖縄の直営店(64席)でタブレットオーダーと有人のセルフレジを導入、昨年12月にオープンしたFCの広島本通店(78席)で同じ仕組みを導入した。タブレットオーダーにすることで、既存店の客単価が1300円のところ150円上がり1450円になるという。3月に直営で宮城県宮城郡に出店するが(56席)、ここではタブレットオーダー、有人のクレジットと自動釣銭機で対応する。

客単価が上がる要因として「自動券売機で食券を買う場合、後ろに人が並ぶとせかされているようで落ち着かないのでは。タブレットオーダーの場合はゆったりとした気分で食事ができて『替え肉』のオーダーが増えている」と義元氏は語る。「替え肉」とはお肉のお替りのことで、「やっぱりステーキ替え肉」100g650円をはじめ、100ℊ500円~850円と5品目をラインアップしている。

義元氏は今後東京圏での展開を推進していく意向で、「大衆ステーキは、これから定着していく段階にあり、出店するたびにステーキは地元のお客様に待望されていることを実感している」と語る。

「やっぱりステーキ」は今後とも、出店場所を繁華街、住宅街に限らず、その場所で生活している人をターゲットとした地元密着で、さらにローコストで店舗展開をしていく姿勢は崩さない方針だ。

「やっぱりステーキ」を経営するディーズプランニング代表の義元大蔵氏。(筆者撮影)
「やっぱりステーキ」を経営するディーズプランニング代表の義元大蔵氏。(筆者撮影)

フードサービスジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆、講演、書籍編集などを行う。

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