原発の街ぶらり旅 高浜(2)

夕暮れの青葉山(若狭富士)が美しい/筆者撮影

居酒屋に入ってみた

というわけで高浜ぶらり旅2泊3日レポートの続き。前回と同じく、起こった出来事は取捨選択せず全部書いてみる。

若狭高浜駅前に戻り、夜の飲み処を物色しつつブラブラ。飲み屋が並ぶ通りを発見。とはいっても居酒屋4軒、スナック2軒。今どきのチェーン店はなく、どの店もささやかな佇まいだ。

やはり建設中の役場新庁舎がデカい。そしてもうひとつ、選挙が近いのか選挙ポスターが至る所に貼られているが、見た限りではすべて与党。野党は1枚も見なかった。

さらにブラブラすると、現在の町役場前に出た。こちらは想像通りの佇まい。そして小学校の脇には「ただいまの放射線量率」の表示が。このときの数値は34.5nGy/h(ナノグレイ毎時)。

日が暮れて、飲み屋通りに繰り出す。ポワンと明かりを灯す一軒に入ると、ご主人がニコニコと笑顔で出迎え、そして「前にも来ましたよね?」と言うが、来ていません!

さて北陸に来たからには魚を食べたい。何にしようかな、と迷っていると、

「ホタルイカの生、食べてみる?」

とご主人。さらに「小アジの刺身なんてどう?」「へしこって食べたことある?」と続けて言うので、言いなりになって全部頼む。熱カンももらい、まずはホタルイカから。透き通った1匹まるごとを箸でつまみ上げ、口の中へ。

美味いね! ツルンと口に入り、噛むとワタのほのかなコクと苦味が、口いっぱいに広がる。そして柔らかく、生臭みもない。「こんなのヨソにはないでしょ」とご主人が言い、ほかの客も増えてきて、酒が進む。

しばらく無難な話をしたが、客のひとりが「原電関係? 火力?」と僕に聞く。この辺りでは原発のことを「原電」と言うのだ。

「いろいろ関連会社の人が飲みに来るけど、たまに酔って暴れる人がいてさ。そういうのが一人でもいる会社は要注意だから」

原発の話が出たので、聞いてみる。再稼働したと思ったら、またすぐ止まって大変ですね? だが。

「ん? だから暴れた人は出入り禁止」

――さりげなくスルーされた? ここで店内のテレビは消費税増税関連のニュース。「10%に上がったら大変ですよね?」と何気なく言うと「でも税金があって、国も回っているからね」と優等生な返事が。本心からそう言っているのか、それとも狭い街だから本心は言わないのか。そして、

「メディアが一番悪い! 偏ったことばかり書いて!」

と批判が飛び交う。ここで漁師のオジさん2名が来店。僕の体を見るや「アンタええカラダやなあ。2年くらい漁手伝ってや!」とご機嫌だ。だが何かの弾みでひとりが、

「オレたちはな、国にも県にも言いなりになんかならねーぞ!」

と吠え気味に言った。思わず耳がダンボになったが――ほかの客が妙に話しかけてくるので、それ以上は聞けなかった。別のひとりが、

「まあ(原発は)じきに動くよ」

とボソッと言った。

原発について学びつつ散策

2日目は隣の若狭和田駅に行ってみた。ここも高浜町内。駅から10分ほど歩くと、年季の入った木造の旅館や民宿が並ぶエリアに出た。その先には和田海水浴場。白砂がきれいなビーチで、青い海の向こうに青葉山と、送電塔が連なる山もよく見える。近くに温泉施設も。入ろうかと思ったら、まだ開いていない。少しブラブラする。

国道沿いに立つ大きな施設。「見てふれて感じるサイエンスパーク」だそうで、子ども向けの雰囲気だが、ヒマなので入ってみる。

中は3つのゾーンに分かれ、その1つが原発広報施設。「エネルギー利用の歴史」「若狭地方の原子力発電」などの展示に加え、小さなヴァーチャルお姉さんが、原子力発電のしくみを説明するコーナーも。「ほら、タービンが回り出したわ!」「核分裂も知らないの?」とキャピキャピ説明。そして原子炉を守る五重の壁について説明し、

「これなら安心ね」「安全ね」

と何度も言う。五重なら安全かも、でも何度も言われると、逆に疑いたくなる気も。ほかに赤フン坊やMCのもと、ウランちゃん(『鉄腕アトム』の彼女とは別人)とMOX(モックス)君が登場するコーナーもあり、思わず「人かよ!」と突っ込む。

MOXは、核燃料サイクルのプルサーマル計画で使用する燃料。高浜原発でいち早く、これを使いプルサーマルを実行するはずだったが、MOX燃料にデータねつ造が見つかり計画は延期(1999年)。紆余曲折を経て2011年1月に運転開始されたが、同3月11日に東日本大震災。

若狭湾は原発銀座だ。そしてナトリウム漏れによる火災事故を起こした「もんじゅ」、死亡事故を起こした美浜原発も並ぶ中で、高浜原発は大きな事故もなく「無事これ名馬」と高評価。しかしプルサーマルに関しては、ツイていない印象も受ける。「よろしくお願いしまーす」と挨拶するMOX君を眺めつつ、施設をあとにした。

そろそろ昼飯タイム、腹が減ってきた。施設内にもレストランはあるが、もうちょい探そう。少し進むと道の駅がある。と思ったら4月頭まで休館(春休みなのに?)。隣に大きな温泉施設もあるが、これも休館中。

こうなると俄然、風呂に入りたい。海水浴場のほうの温泉に行くと、めでたく営業中。入口に「刺青・タトゥーをされている方、ご入場は固くお断りいたします」の貼り紙。刺青=タトゥーじゃないのか? と軽く突っ込みつつ、でも固くお断りされているなら安心だとも思いつつ大浴場へGO! だが。

湯船に服を着て浸かっている人がいる?

と思ったら両腕にびっしりタトゥーのオジさんが! 固くお断りしていないぞオイ! 

とはいうものの因縁つけられることもなく、無事に風呂を出た。どこかにないかメシを食べられる店――おっ、海水浴客向けか、オシャレな店が開いている。

無事ランチにありつきホッと一息。そして昨日のカレーに続き、かなり美味い。個人の飲食店は、どこもしっかり頑張っている。

人の印象は、とても良い。だがぶらり歩きも2日目に入ると、それだけでは割り切れないものも、随所に垣間見える。

ここで食後のコーヒーを注ぎながら、店のお姉さんが爽やかに言う。

「前にもいらっしゃいましたよね?」

……この街には俺のドッペルゲンガーがいるのだろうか。驚く俺に構わず「海水浴の時期に、ぜひまた来てください」とお姉さんは続けて言った。(あと1回だけ続く)

街角の数か所で見かけた標語/筆者撮影
街角の数か所で見かけた標語/筆者撮影
魚が美味い! 居酒屋で食べた小アジの刺身/筆者撮影
魚が美味い! 居酒屋で食べた小アジの刺身/筆者撮影
若狭高浜駅の1駅となり、若狭和田駅前/筆者撮影
若狭高浜駅の1駅となり、若狭和田駅前/筆者撮影
こんな看板も見た。「天災地変」の4文字に、少し緊張も/筆者撮影
こんな看板も見た。「天災地変」の4文字に、少し緊張も/筆者撮影