原発の街ぶらり旅 高浜(1)

高浜は海水浴の町としても知られる。写真は和田海水浴場(筆者撮影)

あえて「ぶらり旅」目線で歩いてみた

この3月にグルメ取材で京都の舞鶴を訪ねる機会があり、ついでに隣の福井県高浜町も歩いてみた。

ご存知の通り原発がある街・高浜。原発は1号機から4号機まであるが、震災前後に定期点検で相次いで停止。長いブランクを経てようやく3、4号機が再稼働したと思ったら、すぐまた停止。最近は報道で高浜の名を見聞きすることも多く、ものものしい印象ばかり伝わってくるが、実際はどんな雰囲気なのだろうか。2泊3日滞在して歩いてみた。

結論から言うと、別にものものしくなかった。人は親切だし魚は美味いし、景色もきれい。なかなか良い場所である。そして夜は居酒屋をハシゴしたが、温厚そうな町の人々が報道の話となると、語気を強める場面が何度かあった。

「最近の報道はひどい。この町のことを平均的に伝えず、目立つところばかり強調して、偏ったイメージで伝える」

それ、確かにあるよなあ。高浜の報道に限らず。僕はしょっちゅう沖縄に行くので、辺野古や普天間もよく歩くが、街の雰囲気は報道から受ける印象とかなり違う。まあテレビも新聞も限られた尺や紙面の中で、しかも数字や売り上げを取るために、どうしても目立つ部分だけ取り上げざるをえない。それを鵜呑みにして、現場に行きもしないで知ったかぶって議論する僕らも悪いわけで……。

せっかく来たのだ。町の人もそう言うわけだし、なら2泊3日で見て聞いて感じたことを全部書いてみようか。

というわけで、高浜2泊3日ぶらり旅、始まり始まり~。

赤ふん坊やがお出迎え

JR小浜線の若狭高浜駅に降り立つと、ホームにはためくノボリに「ようこそ北陸へ」の文字。一応「観光とかで気楽に訪ねていいのかな」という懸念もあったのだが、歓迎ムードを感じ、まずはホッとする。

改札を出ると迎えてくれたのは……ゆるキャラ「赤ふん坊や」なぜ赤ふん? その昔、赤ふん姿で海水浴をしていた元気な子どもたちをイメージしたそうだが(あとで調べた)軽く驚く。そして駅舎内、改札脇には観光協会も併設。中は下足禁止のようで、職員の皆さんは靴を脱いで仕事をしている。なんか家みたい。ここで観光パンフを片っ端から採取。ビーチの国際環境認証「ブルーフラッグ」の取得を、町を挙げて目指している様子だ。

駅舎はコミュニティ施設「まちの駅 ぷらっとHome高浜」でもあり、物産ショップ「高浜市場きなーれ」などを併設。駅を背にして街に出ると、パチンコ屋の名前に目が釘付け、その隣で巨大建造物を建設中。マンションでも造っているのか。とりあえず荷物を置きに、予約した宿へ。

フロントのお嬢さん「あの、お部屋のほうはまだ……」おいら「荷物だけ置ければ」お嬢さん「そこに置いてください」(とロビーの床を指差す)おいら「ここに?」お嬢さん「大丈夫です。見ていますから」

観光客にスレていない様子が好印象。そして荷物をその辺に置いても、誰も盗ったりはしないのだろう。早くも街の緩やかな雰囲気を感じる。

昼飯処を探しながら、少し歩く。「←津波避難ビル」の表示が、ふと目に入る。街は海のすぐそばで、避難ビルは4階建ての病院。今どきは海沿いの街に行けば、どこでも「津波避難」の文字を見るが、ここで見ると少々ドキッとする。

さてと昼飯を――意外にもカフェ発見、ランチにカレーがある。これでいいか。カレーください~。

「お待たせしましたー」

うわっ、デカい! 長辺40cmはありそうな巨大プレートに五穀米とカレー、ほかにナンも1枚。まん丸の卵が乗ったシーザーサラダと、小皿にトマトも。

「あの……高浜町でいまトマトを作っていまして……その、甘いんです」

なぜかオズオズと怯えたように言う店のお姉さん。威圧した覚えはないのだが。とにかく想像した「カフェめし」の倍くらいの量があり、味も気合いが入っていて美味い。街歩きを重ねた経験から、昼飯がいい街は良い。

店は高い所にあり、駅前の街を見渡せた――「津波」の2文字を、ふと思い出す。パチンコ屋隣の工事中ビルは相当大きくて、これができたらこっちが避難場所になるのだろうか。とりあえず高い建物が少なく、空が広い。

ママチャリで原発のほうへ

原発のほうに行ってみよう。とか言って行っていいのだろうか。原発があるのは街の西方、海に突き出る内浦半島の先のほう。さらに奥には「音海」という集落があり、観光マップに名所「音海大断崖」も載っているから、そっちのほうには行っていいはずだ。途中で「この先は行くな」と言われたら、そこで引き返せばいい。

さて、どうやって行こうか。音海方面に行くバスは定期運行ではなく、事前に利用者登録と予約が必要らしい。じゃあオイラみたいなブラリ旅人はどーすりゃいいの? と思ったら観光協会にレンタサイクルがあるそうなので、借りることにした。

「表に用意しましたー」と鍵を渡されオモテに行くとアハハ、ママチャリが。サドルがやや低いので上げようとしたら、上がらない。「短足の客が来たから、コレでいい」とコレをあてがわれたのだろうか。「すいません、もう少し足長いんですけど」とか言うのも面倒臭いので、サドル低めのママチャリで国道27号を西へ、原発のほうに走り出した。

工事中の巨大ビルは、マンションじゃなかった。町役場の新庁舎&公民館。デカいね! ただし今どきは人口数百人の村役場でも、けっこうデカかったりするから、これが町の規模に対して適正なのかそうじゃないのかはパッと見ただけではわからない(何に気を遣っているのか俺)。とりあえず西へ進む。前方にきれいな三角形の青葉山、通称「若狭富士」。ヘルメットを装着した自転車女子中学生数人とスレ違う。「こんにちはー」「こんにちはー」とみんな挨拶してくれる。爽やか。

少し進むと、青葉山から繋がる内浦半島の全景を見渡せた。青葉山の隣の、小山の稜線を這って送電塔が何基も立ち、小山の向こうへとつながっている。地図によれば、その先には原発がある。至近距離に原発があると思うと、少し身震いも。若干の緊張を伴いつつ先へ進むと――道端に「ホテル ハグハグ」のハートマーク付き看板。ホッとする。

道の間近の海が迫る。若狭湾だ。やがて白い砂浜が広がり出し、若宮海水浴場、三松(みつまつ)海水浴場と続く。原発がある半島も眼前に迫ってくる。だが。

「フグ」「活け魚」「料理旅館◆◆」

道沿いには料理旅館が何軒も立ち、観光地の風景が途切れない。坂道を上り、丘の上の脇坂公園の横を抜けると、いよいよ青葉山が目の前だ。眼下に広がる海には、日本海の荒波がザッパーンと打ち寄せて――え、サーファー? ここに?

そのまま進むと途中から道が狭くなり、歩道もなくなってしまった。そして原発に行くのだろうか、ダンプがやたら走り抜ける。とにかく道が狭く、カーブも多い。ダンプ同士がスレ違うと、人が立つスペースもない。カーブの向こうからダンプがフイに現れ、ヒヤリとする場面も。

途中の難波江(なばえ)交差点で道がY字に分かれ、右方向に「←原電」の表示が。ダンプも途切れず爆走していく。小雨も降り出し、これ以上ママチャリで行くのは危険と判断し、ここで引き返すことにした。

相変わらず道端には「フグ、カニ、活け魚、料理旅館◎◎」の看板が。ノンキなフグの絵も描かれ、すぐそこに原発があることを忘れそうになった。(続く?)

若狭高浜駅/筆者撮影
若狭高浜駅/筆者撮影
街角の至る所に「赤ふん坊や」が/筆者撮影
街角の至る所に「赤ふん坊や」が/筆者撮影
駅前風景(1)/筆者撮影
駅前風景(1)/筆者撮影
駅前風景(2)/筆者撮影
駅前風景(2)/筆者撮影
送電塔が連なる/筆者撮影
送電塔が連なる/筆者撮影
右に進めば原発/筆者撮影
右に進めば原発/筆者撮影