沖縄移住 成功者に意外な傾向

石垣島の海を見ながら暮らしたい…と移住を考える人も多いが(川平湾/筆者撮影)

「移住先は、どこがいいですか?」

石垣・八重山人気復活で、いったん沈静化していた沖縄移住ブームも再燃か。ここ最近は数年ぶりに「沖縄に移住したい」と相談を受けることが増えている。

先日も「某タレントの沖縄移住相談に乗ってほしい」とラジオ出演の打診があった。いろいろあって出演はなくなってしまったが、事前に用意された質問項目の中で、真っ先に目についたのがコレ。

「移住するなら、どの島がいいですか?」

またか、と正直思った。移住相談を受けるたび必ず「沖縄に住むなら、どこがいいですか?」「どの島がいいですか?」と聞かれる。まあ無難に那覇、宮古、石垣あたりを答えておくのだが。

本音の回答として、最初からこの質問をする人は、移住はしないほうがいい。身もフタもない答えだが、移住にまず必要なのは自主性と独立心だ。「○○島がいいって聞いたから」という理由で移住先を決めても、1年ともたないだろう。

沖縄に移住して10年15年以上、長く住み続ける知人も多い。とりあえず「どこに住めばいいですか」と他人に聞くような人はいないが、実はもうひとつ、全員が全員ではないが意外な傾向がある。

それは僕らが抱く移住者のイメージとは、少々違っている。

勢いで来ちゃった人が、けっこう長続き

移住すると決めたら、住みたい場所の不動産情報や住環境を徹底的に調べ上げ、万全の準備を整え引越して……そんなイメージがないだろうか。移住してうまくいく人は、きっと準備も綿密に行ったのだろうな、と。

意外にそうでもない。

「沖縄に初めて来たら、ちょうど店舗物件が空いているって聞いて。じゃあ店出してみようかなと。料理も好きだし」そして店を出して、気づいたら10年目。こんな風に「勢いで来て、そのまま長く住んでいる人」が多いのに驚く。一方で「沖縄の海が大好きで、絶対ここに住みたいと思って、準備もしっかりして」みたいな、「自称・沖縄病患者」「準備万端」タイプの長期居住者は、筆者が知る限り多くない。沖縄に強烈な愛着もなく、ヒョンなきっかけで来たら縁があり、流れで住みついた――そんな人のほうが、結果的に長く住み続けているようだ。

沖縄は文化、習慣ほかさまざまな面で、本土と大きく違う。小さな離島や郊外の集落ほど、地域の中で閉じたルールや暗黙の了解ごとが多く、予想外の事態に面食らうことも少なくない。沖縄移住は毎日が不測の事態の連続なのだ。

だから綿密に計画を立てる人ほど、ものごとが計画通りにいかないとストレスがたまる。調査と準備を丹念に行い、満を持して移住した人に限って、

「こんなはずじゃなかった」

と失望し、移住が頓挫してしまうのだ。

一方で特に計画も立てず、本能の赴くまま行動する人ほど、環境の変化に対し適合性がある。並みの人なら面食らう現実もサラリと受け入れ、いちいち思い悩まない。だから新しい場所にも長く住み続けられる。

ノンキでものごとを深く考えず、頭より先にからだが動く「身が軽い」人のほうが、移住もうまくいくようだ。移住にオススメの場所を聞く前に、まずは自分が移住に向く性格かどうか、自分を知ることも必要だろう。

移住先で「役に立つ」ことが大事

じゃあノンキで身軽ならOKかというと、もうひとつ。特に離島や辺鄙な集落に住むなら、現地の人々に「役に立つ」「何か還元できる」ことがポイントとなる。

「手先が器用であり」「体力がある」と、何かと重宝される。料理や大工仕事が得意、炎天下でも畑仕事が苦にならない、海に潜ってモズクや魚を獲れる……何かひとつ得意技があると溶け込みやすい。もちろん移住先の男女比や年齢構成、交通事情などにより内容はさまざまだが、人様の役に立つ「手に職」を自分が持っているかどうか、胸に手を当てて確かめたい。ノンキで明るくても何の役にも立たないと、気がつけば集落の鼻つまみ者、ということもある。

そう、移住というと「どの島が、どの場所が過ごしやすいか」とか、最近なら「移住者がサービスを受けられる市町村はどこか」とか、自分が受ける恩恵にばかり目が行きがちだ。沖縄に移住して「青い海を毎日見ながら暮らしたい」というのも実は同じこと。でも「移住先で人の役に立つ」観念が欠落していると、移住は長続きしないだろう。

また沖縄は、地域の人付き合いが密接な場所。自分の都合より集落の行事が優先。祭りや行事の手伝いに参加しないようでは、離島や小集落ほど住み続けられない。男性なら集落の同じメンバーと毎日飲み会があっても、笑顔で付き合えることが大事。旅人でいる間は「お客様」。でも住むとなると、さまざまな義務やミッションが生じる「移住の理想と現実のギャップ」があることも覚えておきたい。

移住――長年住み慣れた土地を離れ、新たな場所で住環境と人間関係を構築するのは、簡単ではない。沖縄「ブーム」に乗じて憧れだけで移住すると、たぶんうまくいかない。

移住を考えたら、闇雲に移住先の情報集めに走る前に、まず「自分を知ること」から始めよう。そして自分が得することだけを考えず、移住先や協力者に恩返しする気持ちを持つことが、大切である。