マイクロソフトはXPの基本設計を公開すべきだ

2014年4月、マイクロソフト社(MS社)は2001年にリリースした基本ソフト(OS)のWindows XPのサポートを打ち切りました。しかし世界各地でいまだ XPユーザーは多く残っています。MS社は最新のWindows7(2009年リリース)やWindows8(2012年リリース)への乗り換えを促していますが、事実上パソコンごと買い換えなければならない(XPで元気に動いているのに)経済的負担や、OS上を走っているアプリケーションソフト(アプリ)も買い換えたり、ないしは「7」や「8」に適応していないアプリを多く使っている人などからブーイングが上がったりしています。とはいえ、サポートが終了すると今やパソコンの機能に欠かせないインターネットに接続するとさまざまなウイルスに無防備となり危険が増大します。さてMS社の措置は正しいのでしょうか。問題ありでしょうか。

●「正しい」

OSはその時代で最新の技術で作られていると思います。「思います」と留保するのはMS社がWindowsシリーズの基本設計(ソースコード)を公開していないから。とはいえ最新技術を用いない理由もないので性善説に立って「そうしている」と仮定しましょう。

するとXPリリースの2001年はもう約13年前。日進月歩のIT(情報技術)産業では十分に「昔」の産物です。ウイルスも従来の単に相手パソコンを破壊すればいいという愉快犯的なものや、バラマキで攻撃するやり方から「情報を盗む」のを目的とした「標的型」など新種が続々と現れ、古いOSでは対応できない場合も出てきたようです。

MS社はXPユーザーに誠実に対応してきたという見方もできます。XP登場以前は個人用と業務用で異なるWindowsを提供していました。更新頻度も多く、現在のGUI(アイコンをクリックすると作動する現象)を中心とした3.1が1991年、95が95年、98が98年、MEが2000年、そして個人用と業務用を統一したXPが01年に登場しました。その頃は3・4年に1回はパソコンごとOSを買い換えるのが常態化しており、GUI以前のMS-DOS時代(コマンドを覚えて打ち込まないとアプリが作動しなかった時代)を含めるとユーザーはその度ごとに何だかんだと出費がかさみました。それに対してXPは後継のVista(2006年リリース)が「重い」「XPのアプリが対応しない」といった批判を受けたのもあって07年にエイッと14年までサポートすると発表しました。Vistaをプレインストール(買う前に入っている)したパソコンもXPに異例の「ダウングレード権」を認め応えました。

その間に主にVistaの問題点を徹底的に追求し反省し、09年の「7」リリースに至りました。「7」も約4年経ち、さすがにそろそろ許される時期だろうと判断したわけです。

実際にこの間のXPに対するMS社の姿勢を「十分に良心的だった」と好意的に解釈する人は多数います。そうした方は革新的な「8」はともかく「7」に乗り換えるのはユーザーとして当然だと考えます。

●「間違っている」

それに対して「約13年」という年月を別の視点でとらえる人も多くいます。それだけの期間使っていれば、当然人は慣れ親しむし、パソコンやネットは今や水道水や電気と同じインフラ(基盤)となっている。それをいかなる理由であれサポートしないのは企業としてやはり問題があるという論調があるのです。

確かにMS-DOS時代からXPに至るまで皆MS社の言うままに買い換えてきました。しかしそこには必然性もあったのです。まずハードの著しい性能が向上したことです。ドンドン大きくなっていくハードディスクや不可能を可能にするがごとき進歩をみせた中央処理装置(CPU)が誕生し対応するOSも必要になりました。

もう1つはWindows自身が標準装備するアプリが、それまで他社生産(有料)であったのを飲み込んでいった歴史もあります。メールソフトやブラウザなどが好例です。別売ながらMS社製の Microsoft OfficeがOSとの親和性から他社生産品を追い出していきました。ワードやエクセルが代表的です。今ではOfficeがプレインストールされているケースも珍しくありません。そんなこんなが一服したのがXPであり、メーラーでメールを送受信し、ブラウザでネットへつながり、後はOffice+自分の好みのアプリをいくつか備えれば仕事に支障がないというところまでXPの時点で到達してしまったのです。MS-DOS時代にコマンドを300も覚えた者はGUI登場で無意味な知識となり、さらに他社製品のアプリ使用者がMS社製に乗り換える努力をした40代後半以降の世代にXPは安息の地でした。2001年からの使用者(30代)はXPこそスタンダードです。不便を全然感じず仕事ができるのです。

新興国の問題もあります。21世紀に入り爆発的にパソコンが普及したこれらの国や地域はXPが基本です。つまり先に述べたようにインフラ化しており、製作者といえどもアメリカの1私企業に過ぎないMS社の判断で出費を強いられるのはおかしいという声も上がっています。

●問題解決には

MS社はWindowsの基本設計を公開していません。でもサポートを止めたというのだからXPに限っては見捨てたわけです。どうせゴミならば公開して、XPユーザーが自由に修正できるようにすればいいのではないのでしょうか。

「XPユーザーはどうしても7か8に乗り換えさせる」というのはさすがに企業エゴでしょう。まず、そこまで執着しなくても先進国のユーザーに限っては7か8に変えるはずです。だから残った人だけへの対応というか、対応しない代わりというか、そういうサービスぐらいあってもいい。

XPの基本設計を世界中のプログラマーが改善していくといったとしてもMS社に大きな打撃となるとも思えません。プログラマーは新規さを本質的に追い求めるので、古いOSにたいした興味を抱かないでしょう。だから親切な人が何とか持たせるぐらいの助言をしてくる程度でライバルとして新ビジネスに化けてMS社を脅かすという図は考えにくいのです。公開したOSの代表格であるLinuxもパソコンに限定すればMS社を駆逐するような勢いはないのですから。「間違っている」側を納得させられるという効能もあります。

なぜそうした声がMS社から出ないでしょうか。想像するに次の二つの点が想像できます。

【1】XPの基本設計に「7」「8」につながる独創的なアイデアがいっぱい詰まっている

だとしたら何でVistaや「7」「8」を出したのかという根本的な疑問が生じます

【2】XPの基本設計が稚拙すぎて公開がはばかられる

別にいいではないですか。2001年リリースした商品が古ぼけるのは当然です。そうだから新OSを出したといえばすむ話。XPを使い続けたい人は「それでもいい」のだから文句をいわないだろうし、古さや稚拙さにビックリする者は「7」「8」に乗り換えるでしょうからMS社にとって損はありません。