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「50代の私が14歳の子と」発言の顛末~立憲・本多氏が離党・議員辞職をせざるをえなかったその理由

安積明子政治ジャーナリスト
枝野代表は政権奪還を叫ぶものの……(写真:つのだよしお/アフロ)

離党・辞職に追い込まれた本多氏

 “解決”までに実に2か月以上もかかっている。そしてその結論は妥当なものだったのか―。刑法の性交合意年齢を巡って5月10日に開かれた党内のWTで「50代の私と14歳の子が恋愛をして合意がある場合に罰せられるのはおかしい」と発言した問題で、立憲民主党の本多平直衆議院議員は7月27日午前に離党届を提出。夕方に開かれた会見では議員辞職を表明した。本多氏は北海道ブロック選出のため、党に議席を返上するという。

離党会見で議員辞職の意思を示す
離党会見で議員辞職の意思を示す

 さてこれまで立憲民主党は、所属議員の“不祥事”について様々に対応してきた。2017年10月30日には初当選したばかりの青山雅幸衆議院議員が元秘書の女性にセクハラを週刊誌に告発されたため、無期限の党員資格停止処分を下している。昨年4月9日には、新型コロナウイルス感染症のために都内に緊急事態宣言が発令されてわずか2日後だったにもかかわらず、高井崇志衆議院議員が歌舞伎町の性風俗店に入っていたことが発覚。立憲民主党は同月15日、高井氏からの離党届を受理せず、除籍処分を下している。

「無期限」の青山氏は残り、「1年」の本多氏が去った理由

 青山氏に対する“無期限の党員資格停止処分”も高井氏に対する“除籍処分”も、立憲民主党が当初、本多氏に下すはずだった“党員資格停止1年”より重いものだ。にもかかわらず、青山氏も高井氏も比例区の比例復活組だが議席を党に返還せず、青山氏は日本維新の会、高井氏は国民民主党と統一会派を結成。生き残りを図っている。とりわけ青山氏の場合、地元である静岡県内の女性市議らが東海4県(愛知県、静岡県、岐阜県、三重県)の31人の女性議員の署名を持参してさらに厳しい処分を要求したが、当時の立憲民主党本部は「青山氏はすでに処分した。被害者の間には『二度と表にしない』との和解が成立している」とこれを拒否。彼女たちに対応した西村智奈美男女平等推進本部長が本多氏の妻であったことは、偶然なる皮肉だろうか。

 本多氏にとって不運だったのは、当初は福山哲郎幹事長の口頭注意で済まされる予定だったのが、世論や性犯罪撲滅を図る団体などから批判が噴出したことだった。7月12日には枝野幸男代表から離党をほのめかされ、翌13日には常任幹事会で「党員資格停止1年」の処分が提起された。これらに対して「選挙直前でもあり、政党政治家として政治生命を断つに等しい重い処分」と、本多氏自身は7月23日にTwitterで述べている。

党内で囁かれる2人の確執

 実際に2017年の衆議院選で、2003年の衆議院選からの地盤であった埼玉県第12区から鉢呂吉雄氏の後継として北海道第4区に転出したが、小選挙区での当選は叶わず比例で復活した。第4次安倍改造内閣で文科大臣政務官を務めた自民党の中村裕之衆議院議員との票差は1万3435票と1万票以上も開いており、もし本多氏が政党の支持を得ずに戦えば、当選は事実上不可能に違いない。

 ただ復党の可能性があれば、本多氏に将来の政界復帰もありうるだろうが、今回の問題の根底には、WTの座長を務める寺田学衆議院議員との“確執”があったと言われている。ハラスメント防止対策委員会が7月12日に福山幹事長に提出した“調査報告書”にも、「WT立ち上げの段階から、メンバー構成などについて本多議員などは不満を持っており、旧立憲民主党時代のWTの座長であった議員をメンバーに加えることを要望していた。しかし、そうした要望は受け容れられず、こうした対応を本多議員などは寺田座長の独断と見ていた」など対立があったことを示している。 

 実際にある党関係者も「相手を威圧するように発言する本多氏を、寺田氏は苦々しく思っていた」と述べ、また「いきなり6月3日朝に所属全議員にWT中間報告案のファクスが送られたが、こんなことは前例がない」と訝しげに語った。

 寺田氏が倫理委員会に提出した「報告書」の内容についても、寺田氏が5月10日のやり取りを見て以降は音声などを保存し、それを開示したのに対し、本多氏は承諾なく録音されたものと批判。意見は分裂したままだ。

 そしてこれらについて党本部は積極的に介入することもなく、本多氏の離党・議員辞職で幕を下ろそうとしている。菅政権の支持率が発足以来最低を記録し、次期衆議院選では別の受け皿が期待される。だがそれに最も近いと言われる立憲民主党がこのような体たらくでは、我々はどこにこの国を託せばいいのか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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