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“10月25日投開票説”が永田町で囁かれるワケ

安積明子政治ジャーナリスト
超大型補正の意味は……(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

10兆円の予備費は“第3次補正予算”?

 まことしやかに10月25日投開票説が、一部の自民党議員の間で囁かれている。きっかけは、5月27日に閣議決定された第2次補正予算だ。

 雇用調整助成金の拡充や家賃支援給付制度など、第1次補正で実現できなかったことや第1次補正で不十分だった箇所を補強し、歳出総額は31兆9114億円にのぼる。これは過去最大だった第1次補正よりも多額だが、何よりも注目されたのが10兆円もの「新型コロナウイルス感染症対策予備費」だ。

 「感染症対策」と銘打っているが、予備費はその使途については国会によるチェックが働きにくい。「実際にはこれが“第3次補正予算”ではないか」との声がある。

通常国会は延長なし

 理由は通常国会が6月17日に会期末を迎えるが、会期延長の様子は見えないからだ。本来なら会期を延長して、しばらくは新型コロナウイルス感染症の動向を見極めるのが筋だが、安倍政権は東京高検検事長の定年延長・辞職問題や河井案里参議院議員の運動員買収事件など、国会での追及を避けたい意向。国会を閉会させて世論の鎮静化を狙っているようだ。

 もっとも解散総選挙で“禊”をするという手もあった。当初囁かれていたのは、7月5日の早期解散説。東京都知事選と同日で、自民党は独自候補擁立を諦めて現職の小池百合子知事とタッグを組むというやり方だった。

 しかし自民党東京都連の一部は小池知事との共闘を頑なに反対。さらに毎日新聞の世論調査では内閣支持率は27%で、朝日新聞では29%という結果も出た。毎日新聞に至っては自民党支持率は25%で、「青木の法則(内閣支持率と与党第1党の支持率を足して50以下になれば、内閣は倒れる)」の分水嶺となる50%に迫るという状態だ。

 「10兆円の予備費で、とうぶんは国会は開かれないだろう」と、ある自民党議員は言った。

 「秋には新型コロナウイルス感染症の第2波が来るかもしれない。来年の選挙は難しいので、その前がラストチャンス。国会で野党の追及場面がなくなり黒川問題も忘れられ、10月になれば第2次補正でばらまいた効果もゆきわたる。『やはり安倍政権でなければ』ということになるだろう」

第2波次第だが……

 一方で、人間の思惑通りに進まないのが自然の摂理だ。緊急事態宣言が5月25日に全国的に解除されたものの、福岡県・北九州市では早くもクラスターが発生した。東京都も5月29日には22人の新規感染者を出した。感染経路不明者の割合は54.9%となり、東京アラートの基準のひとつである「50%」を超えている。

 にもかかわらず小池知事は、6月1日から緩和の第2段階に移行することを発表した。都知事選を目前にして、後戻りはできないのだろう。

 国政も都政も、コロナウイルス感染症対策を政治日程に合わせているという印象が否めない。「10月25日投開票説」も、一部では「すでに官邸は日本維新の会に伝達した」とも言われている。官邸は維新に加え、国民民主党にも触手を伸ばしているようだ。とするならば、これから4か月は政界再編も含めて大きな政局となるにちがいない。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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