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コロナ禍の後に待ち受けるのは、“日本買い叩き”という地獄なのか

安積明子政治ジャーナリスト
コロナ禍で経済が弱った日本を外国が狙っている(写真:ロイター/アフロ)

ポスト・コロナの2つの懸念

 コロナ禍で動きを止めていた世界は、5月に入って再起動しつつある。ドイツは新型コロナ抑制策を5月4日から順次緩和し、韓国も5月6日からより緩やかな「行動規制の第1段階」に移行した。フランスも5月11日に外出制限を解除し、3月16日から一斉休校していた学校を再開。日本も5月14日に、緊急事態宣言を一部解除する予定だ。

 明るいニュースばかりではない。韓国では早速ライブハウスで大規模なクラスターが発生した。ドイツも解除早々に実行再生産数が1を上回った。日本でも2月下旬に独自の緊急事態宣言で感染を抑えたかに見えた北海道は、いま第2波に襲われている。

 さらにもうひとつの問題がある。外国からの脅威だ。

2等国転落への危機感

「このままでは日本は二等国に落ちてしまう。倒産、廃業、株価も下落すると、先行して回復した国の企業等に日本の資産がどんどん買い叩かれる。経済安全保障の観点から、日本はいま瀬戸際にいると思う」

 5月7日の定例会見で、国民民主党の玉木雄一郎代表は懸念を示した。玉木代表は5月2日、Twitterで重要な資産や産業について防衛する法制の必要性を投稿。すでに2019年11月の臨時国会で成立した改正外為法は、武器や航空機、原子力、電力、ガス、通信など12業種を指定し、株式の1%以上を取得する場合は事前に届け出なければならない(従前は10%以上)としているが、玉木代表はその枠を拡大し、100兆円ほど財政出動をした上で日本の資産を守るべきと主張した。

 実際に各国は経済防衛に入っている。オーストラリアやカナダは外国による投資全てを事前審査することを決定。アメリカでもトランプ政権は、連邦職員の年金基金から中国株への投資を禁じようとしている。

先手を打つ中国

 一方で経済再開を目論むのが中国だ。中国は5月1日から韓国からのビジネス目的の入国を認めた。入国72時間以内に指定医療機関によるウイルス陰性証明を受け、入国後に再度ウイルス陰性が証明されれば入国できるという仕組みだ。今年後半には習近平主席の訪韓の可能性も囁かれている。中国にとって4月15日の総選挙で革新与党が議席の5分の3を確保した文在寅大統領と組んで損はない。

 そして中国は日本にもウイルス陰性の条件付きで緩和を要請している。その目的は「日本買い」であることに間違いない。コロナ禍で景気が悪化し、不動産を始めとして様々な価値あるものが格安になりつつある。

狙われる日本

 実際に日本の不動産は外資に狙われてきた。林野庁の調査によれば、平成18年から令和元年にかけての森林取得の累計は264件、2305haにものぼる。さらに外資系企業と思われる取得事例として都道府県から報告が201件もあり、5255haが取得されている。

 こうした事態に安倍晋三首相は昨年2月15日の衆議院予算委員会で、外国資本による土地取得の制限について「必要な施策を検討する」と言明していた。だが外国法人の所有権取得を直接制限することは、現行法では困難だ。かつて中国資本による水源地取得問題に対して森林法改正を実現した高市早苗衆議院議員は、「WTOの基本原則たる内国民待遇に違反する危険性があるため、届け出強化にとどめざるをえなかった」と筆者に明かしたことがある。

「日本はだんだん経済が悪くなると、企業にしても土地にしても割安感が出てくる。そうすると先行して経済回復したあえていえば中国や韓国、そういったところが買収する可能性があるので、経済安全保障の観点からの防衛策をしっかりと取るべきだと思う」

 5月11日の衆議院予算委員会で玉木代表がこのように述べた懸念が現実にならぬよう、政府はさらなる手を打たなければならない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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