安倍政権を脅かす新型コロナ、GDP下方修正、株価暴落という“三重苦”
緊急対応策は十分なものなのか
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策が3月10日、閣議決定された。すでに政府は2月13日、帰国者への支援や国内感染対策の強化、水際対策の強化、影響を受ける産業等への緊急対応と国際連携の強化のために、予備費103億円をふくむ総額153億円の対応策を取りまとめている。今回はその第2弾となる。
しかし3月9日に野党に伝えられたのは、1.感染拡大防止策と医療提供体制の整備、2.学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応、3.事業活動の縮小や雇用への対応、4.事態の変化に即した緊急措置等の4箇条が書かれた紙一枚だった。安倍晋三首相は3月7日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、「(以上の4つを柱として)10日の取りまとめを目指し、各省において施策の具体化を加速させてくれ」と述べた。
それを受けて10日に発表されたのは、布製マスク2000万枚を国が買い上げ、保育園や介護施設などに優先的に配布し、PCR検査体制を拡大して公的補助を付けるなど。小学校等の休校に伴う保護者の休暇取得制度を創設し、日額8330円を上限とする給付や、フリーランスの休業補償、1.6兆円の資金繰り対策なども盛り込んだ。
しかし後手後手感に加え、規模が小さすぎるという批判は免れない。保護者やフリーランスの休業補償の金額が低いことはもちろんだが、資金力のない中小企業にとって必要なのは(いずれは返済すべき)融資ではなく固定費の補助だ。立憲民主党の逢坂誠二政調会長は3月9日のぶら下がりで、「せめて水道光熱費を安くしてくれという声がある」と述べたが、政治が考える以上に国民は現状にひっ迫し、喘いでいる。
GDP下方修正の衝撃
これに追い打ちをかけるように発表されたのが、昨年10月から12月のGDPの年率7.1%マイナスの下方修正だ。これは消費税増税のダメージが予想以上に大きかったことが原因だが、さらに今年に入って以降のコロナ騒動が加われば、いったいどのくらいの経済停滞が起こるのか。考えるだけで恐ろしくなる。
経済政策について具体的な数字を出しているのは、国民民主党の玉木雄一郎代表だ。玉木代表は15兆円規模の緊急経済対策を打ち出し、所得税・消費税減税とともに国民1人当たり10万円の簡素な給付措置を行うことを提唱した。ただし玉木代表がこれを打ち出したのは、GDPの下方修正の前のことだ。今はより大規模な経済対策を早急に講じる必要がある。
株価暴落から世界を救うには
3月9日に日経平均が1050円99銭安となり、1年2か月ぶりに2万円を割った。ニューヨーク・ダウも2000ドル以上下落し、2013年に導入されたサーキットブレイカーが発動して取引が15分間中断された。
しかしトランプ大統領が所得税減税を含む大規模な経済救済策を検討することを発表すると、ダウは一気に900ドル以上も上昇。11月に大統領選を控えるトランプ大統領にとって、ここで経済を減速させるわけにはいかないが、そのリーダーシップに市場が反応した所以だ。
一方で日本はどうか。3月10日の日経平均は午前に1万9000円を割り込んだものの、午後には上昇傾向になり、終値は1万9867円12銭。なんとか日銀のETFの平均買い値と言われる1万9500円は維持したものの、2万円台には及ばなかった。
「(3月4日の)党首会談では、安倍首相に『コロナ肺炎で世界経済が混乱するだろうが、日本が牽引していかなければならない』と申し上げた」と玉木代表は述べた。そこまで実行してやろうという強い意思があれば、この危機は乗り切れるだろうが、果たして安倍首相にその意気込みは見られるのか。