「桜を見る会」を中止に追い込んだ本当の事情

常に人気の安倍首相だが……(写真:ロイター/アフロ)

菅長官が突然に中止を発表

「『桜を見る会』は昭和27年以来、内閣総理大臣が各省庁からの意見等を踏まえ、各界において功績・功労のあった方々などを幅広く招待をし、日頃のご労苦を慰労するとともに、親しく懇談される内閣の公式・公的行事として開催をしているものです。今般、様々なご意見があることを踏まえ、具体的な手続きを確認をいたしましたところ、具体的にはとりまとめの内閣官房及び内閣府から各省庁に推薦依頼を行った上で、提出された推薦者につき、とりまとめを行っております。その際、内閣官房のとりまとめにあたっては、官邸内や与党にも推薦依頼を行っており、官邸内では総理、副総理、官房長官 副長官につき、事務的に推薦依頼を行った上で、提出された推薦者につき、とりまとめを行っております。

 こうした手続きは長年の慣行で行ってきていることであるが、様々なご意見があることを踏まえ、『桜を見る会』について政府として、招待基準の明確化や招待プロセスの透明化を検討したい。予算や招待人数を含めて、全般的な見直しを幅広く行うこととし、ついては来年度の『桜を見る会』を中止することとしました」

 安倍晋三首相の後援会メンバーが多数で参加していたことが問題になった総理大臣主催の「桜を見る会」について、菅義偉官房長官は11月13日午後の会見で来年の開催中止を宣言した。中止を決定したのは安倍首相。恐らくはこれ以上、問題を広げないための方策だろう。しかしいったん火の付いた騒動は収まる気配はない。

「中止という速報に驚いている。意義のある行事だかといって来年度、これまでの予算の3倍も超える要求をしておきながら、今度は火の粉がふりかかりそうになるや、突然、その『予算を増やしてでもやる意義がある』と言っていた『桜を見る会』を中止する。これは徹頭徹尾私物化ですよね。こんなやり方は絶対に許すわけにはいかない」

 同日夕方に国会内で開かれた「総理主催『桜を見る会』追及チーム野党合同ヒアリング」で、副座長の田村智子参議院議員は怒りを込めてこう述べている。共産党の田村議員は11月8日の参議院予算委員会でこの件について安倍首相を追及し、問題に火をつけた。

 「桜を見る会」についてはこれまで、2011年に東日本大震災で、2012年には北朝鮮に長距離弾道ミサイル発射予告といった“外部要因”で中止されたことがあるが、内閣の都合で中止になるのは初めてだ。菅長官も11日の会見で「招待客数については内閣官房・内閣府で検討する」と述べ、12日の会見では「(招待範囲や選定の基準を)政府として検討していく必要があると思っている」と前向きに言及。中止について述べることはなかった。しかし13日に一転して安倍首相が中止を決定。これには「官邸が火消しにかかった」と見る向きも多い。

自民党内でも不満が鬱積

 ではどうして安倍首相は「桜を見る会」の中止を決めたのか。それは足元から批判が出たからではないか。

 「桜を見る会」の招待客については、内閣府と内閣官房が各省庁から推薦者を集め、取りまとめることになっている。その時に政府与党からも推薦者を募ることが恒例で、菅長官はこのように述べている。

「野党の時の政権も、こういうことを行ってきたはず。慣行だったのだろう」

 しかし民主党政権で「桜を見る会」が開かれたのは、鳩山政権時のただ1度だけであり、そのやり方も自民党政権時とかなり異なるようだ。

 民主党政権では1年生議員でも4名までの招待客を招くことができた。これは国民民主党の玉木雄一郎代表が13日の会見で明かしている。

 そして鳩山由紀夫首相(当時)の招待枠は数十名で、安倍首相の招待客数の20分の1程度。しかも支援者との記念撮影は開場時間以降の8時31分から59分までで、安倍首相のように支援者を開場前に特別扱いで新宿御苑に入園させてはいない。

このような事実に自民党内から批判の声が聞こえている。

「招待枠?内閣府が選定するから、うちの事務所は無関係だね」

 ある1年生議員の秘書はこう述べた。また秘書歴20年以上の別の秘書は、「政権交代以前から、自民党の場合は一部の幹部だけ招待枠を独占して、ヒラの議員にはまわさない。かねてから不公平だという声があった」と打ち明ける。

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決定的証拠を入手!

 さて筆者はまさに今年2月に地元の安倍事務所が支持者に対し、「桜を見る会」への参加を呼びかけた案内及び申込書を入手した。

 案内には2月20日までに申込用紙に記入して事務所あるいは担当秘書に連絡してほしいこと、そして下段には4月12日午後7時からホテルニューオータニで行う「あべ晋三後援会主催 前日夕食会(会費制)」の紹介もあった。

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 問題は参加申し込み書に記された留意点だ。

※ご夫婦で参加の場合は、配偶者欄もご記入下さい。

※後日郵送で内閣府より招待状が届きますので、必ず、現住所をお書きください。

※参加される方が、ご家族(同居を含む)、知人、友人の場合は、別途用紙でお申し込み下さい。(コピーしてご利用ください)

※紹介者欄は必ずご記入ください。(本人の場合は「本人」とご記入ください。)

※前日の「夕食会」「観光」「飛行機」等につきましては、後日、あらためて参加者の方にアンケートさせていただきます。

(以上、原文ママ)

 2019年1月25日に内閣官房・内閣府が公表した「桜を見る会」開催要領によれば、招待範囲は「皇族・元皇族」や「各国大公使等」の外交使節団、衆参両院議長と副議長や最高裁長官、大臣や国会議員に加え、認証官や都道府県の知事など、一定の地位や“身分”を有する人たちを列挙。これに「その他各界の代表者等」が加わる。安倍事務所はこの「等」に支持者たちを入れ込ませたわけだが、「申し込み用紙が足りなければコピーして使え」などと、まさに招待基準も招待枠もなし崩しにしている。

 これが公職選挙法で禁止されている饗応などに当たるかどうかは、野党の調査チームによるヒアリングに呼ばれた総務省は必ずしも明らかにしなかった。しかし普通に考えて、これを異常なものとして受け止める国民は多いはずだ。

 だが問題解決は簡単だ。そもそもの原因は内閣官房や内閣府が拒否できないことをいいことに、安倍首相側がごり押ししたことにある。それを素直に認めて次回から改めれば、何の問題もない。立憲民主党の安住淳国対委員長は13日夕方に「来年の国会でも追及する」と息巻いたが、そこまで国民は望んではいない。むしろ早期の解決を希望している。

「中止」で胡麻化さず、原点に戻るべきだ

 1952年に故・吉田茂首相が始めた時、「桜を見る会」の参加者は1000人程度で格調が高かったという。これは貴族趣味で知られた吉田首相の影響もあるだろうが、本来の社交とはそういうものだ。そのような歴史を持つ「桜を見る会」は本来の姿を取り戻すべきで、それにはまず推薦する側もされる側も、品位と見識が必要だろう。そうした観点を持たず、ただ目の前の批判から逃れるために「桜を見る会」を中止するのなら、不祥事の証拠として歴史に汚点を残すだけだろう。