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立憲民主党が永遠に政権を獲れないワケ

安積明子政治ジャーナリスト
枝野氏は総理大臣になれるのか(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

民主党のDNAが色濃く残る選挙公約

 立憲民主党は6月24日、次期参議院選挙の選挙公約である「立憲ビジョン2019」を発表した。配布された冊子の表紙には、立党以来のキャッチフレーズである「まっとうな政治」に加えて「♯令和デモクラシー」を新たに採用。躍進が伝えられている山本太郎参議院議員が率いる「れいわ新選組」への対抗かもしれない。

 立憲民主党とれいわ新選組の政策は、微妙に競合する。「コンクリートも人も」「消費税廃止」「政府補償による最低賃金1500円」「公務員増員」などを主張する山本氏に対し、枝野幸男代表が率いる立憲民主党は「消費税増税凍結」「最低賃金1300円」「年金の最低保障機能強化」「待機児童解消と保育の質向上を優先」、さらにはLGBT差別解消法や同性婚、議会におけるパリテ(男女同数)なども主張。いずれも民主党のDNAが伺えるものだ。

 外交安保について手薄感が否めないのも、民主党の影響が残っているゆえだろう。実際に「立憲ビジョン2019」には「竹島問題」や「尖閣問題」などの文言がない。

政権批判のために北方4島だけ主張する

 唯一の差は「我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題の解決を図ります」と、北方領土問題を強調している点だ。「竹島問題」を記載しなかった理由として枝野氏は、「全てのわが党が考えている政策をここに載っけようと思うなら、100ページくらいになると思う」と述べるとともに、北方領土問題については「『我が国固有の領土である』という言い方を政府がしなくなっているというとんでもない状況の中で、国民のみなさんの関心も深く、様々な動きがあるのでここで取り上げている」と言及。要するに国民への「領土を守る」というアピール以上に政府批判の要素が強くした意図を明かした。

 なお自民党の2019年政策パンフレットである「日本の明日を切り開く。」には「竹島」と「尖閣」の文字はないが、「領土・主権問題や歴史認識等に関する問題について、毅然とした外交態度を貫くとともに、戦略的対外発信を強化し、わが国の国益と名誉を守ります」と宣言しており、この中に尖閣問題、竹島問題、北方領土問題が入ることは明らかだ。

 もっとも「参議院選は政権選択の選挙ではない」と言われている。しかしいつか政権を狙おうとするなら、野党は政府批判にとどまらずもっと踏み込んだ方がいいだろう。というのも「逃亡犯条例改正案」を巡る香港の大規模デモや朝鮮半島のめまぐるしい情勢変化、北方領土交渉を巡るロシアの頑なな態度など国民にとって不安事項は山積しており、いまこそ存在をアピールする格好のチャンスになっているからだ。

領土問題のアピールが、自民党が政権奪還の鍵となった

 実際に2012年12月の衆議院選では安倍晋三総裁が率いる自民党は、北方領土と竹島を同列に扱って「交渉を再活性化し、わが国の強い意志を示す」とした。また尖閣諸島については「実効支配強化」と「安定的な維持管理」を強調。折しも李明博大統領が韓国大統領として初めて竹島に上陸し、尖閣諸島の国有化問題で中国からの干渉が続いていた。当時の国民は民主党政権に不安を抱いていたため、これが格好のアピールになり自民党を勝利に導いたという事実がある。

 平均点を上げたいと思うなら、苦手な科目の点数を上げばよい。それと同じで、もし立憲民主党が野党の雄として政権を狙うなら、次期衆議院選挙の前哨戦である参議院選挙で、自民党支持層の核心に手を突っ込むことも厭うべきではないだろう。

 外交安保政策を厚くすることは、れいわ新選組に差を付けることにもなる。れいわ新選組は山本氏ひとりで運営されており、外交安保に関しては沖縄基地問題しか言及していない。もっとも山本氏は国会議員になる前に「竹島は韓国にあげたらいい」と発言し、物議を呼んだことがある。後に「政府にはっぱをかけるつもりだった」と述べたが、言い訳に過ぎないだろう。実際に外交安保の面では当時から、山本氏は考え方も知識の量もさほど変わっていないようにも見える。

政権交代を目指すなら

 それは枝野氏も同じかもしれないが、枝野氏は野党第一党の党首としての責任がある。国民民主党の小沢一郎衆議院議員は文藝春秋7月号で、野党がひとつになってそのトップに枝野氏を据えることを提唱した。だがそれだけでは足りない。多数の国民が支持する政策を掲げなければ、意味がない。

 それでは多数の国民が支持する政策とは何か。それは経済的に豊かになり、安全・安心の生活をおくるための政策だ。

 外交安保政策はその鍵となる。それをみすみす捨てていては、政権は手に入らない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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