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【自民党総裁選】 石破氏の「会見のオープン化」で思い出した自民党の会見の実情

安積明子政治ジャーナリスト
会見オープン化を言明する石破氏(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

石破幹事長時代に会見は閉じられた

 石破茂元自民党幹事長が総裁選への出馬会見を開き、「フリーランスでも誰でも取材に応じる」「会見はオープンにする」と表明した。一部のフリーランスはその言葉に浮かれて歓迎しているようだが、筆者ははなはだ疑問を感じずにはいられない。

 そもそも石破氏が自民党幹事長だった時代に、フリーランスは自民党本部で行われる会見から締め出されている。自民党が野党時代には総裁会見と政調会長会見には参加できたものの、政権に復帰したとたん、会見はクローズとなったのだ。

 もっとも自民党が野党時代とて、フリーランスは大手新聞やテレビ局で作る記者クラブ(平河クラブ)と対等ではなかった。会見での質問は前半と後半に分けられ、前半で質問できるのは平河クラブ加盟社に限られたのだ。雑誌媒体やフリーランスが質問できるのは後半のみで、この時も平河クラブ加盟社は質問できた。いわば「お情けで後半だけ参加させていただいた」に過ぎない形だった。

 それでも谷垣禎一総裁(当時)は、会見の後半では優先的にフリーランスを指名してくれた。日程がタイトな時などは会見の後半にしわ寄せがくるため、平河クラブと“平等な扱い”では質問できない危険もあった。谷垣氏の配慮には本当に感謝している。

政治的決断で行われた高市政調会長懇談

 なお自民党の会見がすべてクローズとなった後でも、私的な“懇談”として続けてもらえたこともあった。高市早苗政調会長は「フリーランスや雑誌媒体が会見に参加できないのはおかしい」と党本部や平河クラブにかけあってくれたが、党本部は「会見は平河クラブが主催だから我々が関知するところではない」、平河クラブは「我々が排除しているわけではない(といっても参加を認めるわけではない)」といずれも無責任を決め込んだ。

 そこで平河クラブでの政調会長会見の後、政調会長応接室で同じ時間を雑誌やスポーツ紙、そしてフリーランスとの懇談のために割いてもらった。和気あいあいとした雰囲気の懇談から、J‐CASTニュースの「『大勢の人と握手して支持を頂く』は議員と同じ。自民党国会議員が『AKBへの思い』語る」など面白い記事も生まれた。これは当時の夫だった山本拓衆議院議員がAKBの曲にあわせて踊っているのを高市氏が見て、「AKBのファンなら丹羽秀樹文科副大臣がいる」と紹介したところ、2人が意気投合。それまであまり付き合いのなかった山本氏と丹羽氏が一緒にコンサートに行くほどの仲良しになったという話がもとになっている。

 なお政調会長懇談は高市政調会長の退任とともに終了した。後任の稲田朋美政調会長にも事務所を通じて懇談の開催を数度お願いしたが、無視されたからだ。当時の稲田氏はまだ「安倍首相の秘蔵っ子」として将来の女性首相候補と目されていた時。その視界には足元は入っていなかったのだろう。稲田氏は防衛大臣に抜擢され、日報問題で政治家としての器がいかほどかが明らかにされている。

 そもそも政治家としての資質も能力も、普段から見られ判断されているものだ。自分に都合のいい時のみ、あたかも餌をぶら下げるごとく「会見のオープン化」を主張してもらっても、こちらとしてはただ冷やかに見るのみだ。

 

 

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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