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【豪雨でも自民亭】 “危機管理の専門家”にそもそも危機管理能力があったのか

安積明子政治ジャーナリスト
安倍首相を補佐すべき副官房長官は、不用意なツイートで足をひっぱるのか(写真:ロイター/アフロ)

最悪の災害の前に最悪の対応

 西日本を襲った豪雨の犠牲者の数は200人を上回った。また「数十年に1度の規模の災害に出される」とされる特別警報が発令された地域は、11府県にも及んだ。そんな大災害がまさに起ころうとした7月5日夜、衆議院赤坂宿舎で安倍晋三首相を迎えて「自民亭」は開かれていた。もっとも自民党内の情報交換・意見交換会である同会を開くこと自体は意味がないわけではない。

 しかしながらこの会合が後に批判されたのは、“まさに楽し気な宴会の様子”がSNSでアップされたからだ。5日午後2時には気象庁が豪雨では異例の会見を東京と大阪で開いている。また同日には小此木八郎防災担当相の下で、豪雨による大変な被害を予想して関係省庁会議も開かれていた。そのような中でグラスを持ってのオールスマイルの“記念写真”とともに「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を撮り放題!まさに自由民主党。」と呑気なコメントを書き込むのは、ある意味で“勇気”がいる。しかも書き込んだのが兵庫9区(明石市と淡路島)を地元とする西村康稔官房副長官その人という点で驚愕せざるを得ない。情報が集中する官邸で、政務担当の副長官はもっとも情報にアクセスしやすいひとりである。

安倍首相のお墨付きの著書もある“危機管理の専門家”の危機管理方法

 さらに問題は、西村氏が内閣府副大臣として危機管理を担当した経験があり、それについても著書(帯には安倍首相の推薦文が寄せられており、まさに“お墨付き”といえる)を持ち、「危機管理の専門家」と見なされている点だ。しかしかながらこの「危機管理の専門家」は、自分の行為で“危機”を招いたばかりでなく、その危機への対処に重要なミスを繰り返した。

 まずは“呑気な書き込み”から1時間43分後の5日午後11時45分、さすがにまずいと思ったのだろう。西村氏は「兵庫県内大雨 6万世帯13万人に避難勧告」と題した地元・神戸新聞の記事を引用して、「地元秘書から、地元明石淡路の雨は、山を越えたとの報告を受けました。秘書、秘書官と随時連絡を取り合いながらの会でした。」と書き込んでいる。

 実際には雨は激しく、「山」などは越えていなかった。同じ兵庫県内に住む筆者の家族は5日以降は外出を一切控えていた。また西村氏の地元にかかる明石海峡大橋は6日未明に大雨のために通行止めになっている。

 西村氏は午後11時47分には「引き続きの警戒が必要です。気象情報にご留意下さい。」と危機意識満点の180度の方向転換。以降、7月11日午後3時37分に以下のツイートを書き込むまで、“災害と戦い危機管理に萬進する政治家”を演じ続けている。

「7月5日(木)22:02にあげた私のツイートで、様々なご批判をいただいております。週末の大雨による災害発生時に会合を開いているかのような誤解を与え、不愉快な思いを抱かせたことをお詫び申し上げます。」

 

結局は「国民の誤解」でうやむやか

 一見して“謝罪”に見えるこのツイートだが、西村氏が問題の本質を把握していないことがよくわかる(そうでなければ“すり替え”だ)。多くの国民は会合についてというよりも、その様子を呑気なコメントとともにSNSに掲載するその“危機管理のなさ”について怒っているという点を理解していない。あくまで「国民の誤解」として逃げるつもりなのか。

 何よりの問題は当初から激しい批判の声が寄せられていたにもかかわらず、“謝罪”が当初のツイートの掲載から5日以上もたってからという点だ。危機管理のいろはの「い」は、「迅速な対応」だが、“危機管理の専門家”であるはずの西村氏はそれを怠った。そして“危機意識のなさ”は広く拡散された。その影響は安倍首相にも及ぶかもしれない。その責任を西村氏はどのようにとるのか。

 政治家は常に緊張を強いられるのか。この問いについては即答で「YES」と答えよう。それに耐えられないのなら、すぐさまバッヂを外すしかない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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