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【新潟県知事選】 自民党支持候補勝利で安倍・二階体制は安泰に

安積明子政治ジャーナリスト
ワシントンで演説する安倍首相。国内では安泰だが、外交ではどうなのか(写真:ロイター/アフロ)

新潟県知事選の勝敗を決めたのは

 6月10日に投開票された新潟県知事選は、自民党と公明党が応援する花角英世氏が54万6670票を獲得し、野党5党と連合新潟が推薦した池田千賀子氏を3万7102票差で下した。

興味深いのは、前回の知事選で自民党と公明党が推薦した森民夫候補を支援した連合新潟が、今回は野党と歩調を共にした点だ。米山隆一前知事が女性問題で辞職したのを受けて行われた知事選のため、野党が女性候補を擁立したことも注目された。

 新潟県はリベラル勢力が強いことで知られる。参議院では2004年まで旧社会党が議席を有していたし、定数1となった2016年の参院選では森裕子氏が自民党の現職を2279票差で下した。2017年の衆院選でも、6ある小選挙区のうち非自民は4勝2負と勝ち越している。

 そのせいだろうか、当初は妙な勝利ムードが漂っていた感じが否めない。「国民民主党による調査」として流されてきたデータもそうだ。これによると、池田候補は花角候補に10ポイント近くリードしていた。

 一方で自民党の当初のデータは、花角候補のややリードを示していた。そして最終盤ではその差は7ポイントに広がった。

新潟県知事選の主役は二階幹事長

 与野党の相違はその緊張感にある。花角候補の応援の中心は、自民党の二階俊博幹事長だった。二階氏にとって花角候補は、運輸大臣時代に秘書官を務めてくれた関係だ。2016年の知事選では当初、花角氏擁立の話が出たが、森候補にいち早く手を挙げられてしまったために断念したとも伝わっている。とするなら、今回の選挙は二階氏にとって本命で、自ら中心となって企業団体に向けて凄まじいローラー作戦が行われた。

 だが浮動票の取り込みはいま一歩だったようで、応援のために新潟入りしたある自民党議員は「選挙事務所が人が少なくて寂しい」と漏らしている。「(小泉)進次郎さんが入れば一発で有利になるんだがなあ」とその議員は述べたが、進次郎氏は応援に入っていない。

 これは知事選告示前に反原発を訴える父・小泉純一郎元首相が池田候補と面会したことが原因だと囁かれた。進次郎氏が新潟入りすれば、当然にこの件が話題になるが、それが池田候補を利するかもしれないと危惧されたというのだ。あるいは官邸に批判的な進次郎氏が、応援を拒否したためとも伝えられた。いずれにしろ、二階氏は進次郎氏なしで勝利しなくてはいけなかった。それは安倍晋三首相の総裁選3選のためというよりも、自身の幹事長留任のためだろう。かつて自分に仕えた元秘書官を落選させては党内で顔が立たないだけでなく、幹事長として来年の統一地方選や参議院選も仕切れない。

安倍3選は安泰だが

 なお一部では「新潟県知事選は総裁選での安倍3選の試金石」と囁かれたが、これはうがった見方だろう。試金石なら安倍首相自身がもっと動くはずだが、今回の知事選では米中首脳会談に備えての訪米やシャルルボアサミット出席などで、安倍首相のスケジュールは外交日程で埋まっていた。2014年の滋賀県知事選では劣勢に立った小鑓隆史候補の応援のために、ニュージーランド・オーストラリア・パプアニューギニアの外遊から帰国する際に羽田空港ではなく関西国際空港を使って最終日に滋賀入りを模索したのとは大きな違いだ。

 すなわち新潟県知事選に花角候補が勝っても負けても安倍3選は固かったということだ。これが今回の野党の敗北により、3選はより確実になったと見るべきだろう。それを支える二階氏も、新潟県知事選の勝利で党内での地位は安泰となる。

では安倍政権はもはや向かう敵なしという状態か。いや目の前には米朝首脳会談が迫っている。北朝鮮問題の方こそ安倍首相にとって試金石。むしろその政治生命はここにかかっている。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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