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【内閣支持率続落の衝撃】 自民党のパワーが官邸を上回る日

安積明子政治ジャーナリスト
得意の外交で支持率回復なるか……(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

さらに低迷する内閣支持率

 報道各社は4月15日、世論調査の結果を公表した。共同通信社による内閣支持は37.0%で前回(3月31日と4月1日に実施)より5.4ポイント減少し、不支持率は52.6%で5.1ポイント上昇している。支持率下落の原因は4月9日の「愛媛県文書」報道だろう。愛媛県や今治市、加計学園関係者が2015年4月2日、加計学園獣医学部新設について内閣府の藤原豊審議官と柳瀬唯夫首相秘書官と面談した記録が報道され、農水省でも見つかっている。

 朝日新聞の調査による内閣支持率は31%で、こちらは前回(3月17日18日)と変わらない。不支持率は前回より4ポイント増の52%で、第2次政権で最も高い。

 日本テレビの世論調査では、内閣不支持率は53.4%で、前回(53.0%)と比べて横ばいだが、支持率は26.7%(前回比3.6ポイント減)と3割を割った。

 ここで深刻なのは、不支持の理由として「安倍総理の人柄が信用できない」とするのが44.7%を占める点だ。全体の24%が「安倍総理は信用できない」と思っていることになる。

厳しい党高政低の現実

 なお政党支持率は、自民党が前回の33.3%とほぼ同じの33.4%だが、内閣支持率との差が開いた点に注目したい。官邸が求心力を持っていたのは、国民の支持があったからだ。それを無視することは党としてはできなかった。だが支持率が低下すれば、自民党は独自に動きだす。そしてそれはもう、始まっている。

 筆頭は石破茂氏だ。各世論調査で「次期総裁候補」のトップを占める。2012年9月の総裁選でも第1回投票の票数で安倍首相を凌駕した。地方票に至っては165票を獲得し、安倍首相の87票の倍近かった。4月11日には都内で講演し、「国会議員たるもの、忠誠を誓うのは官邸でも党でもない、有権者だ」と述べ、安倍首相との距離感をアピールした。

 その石破氏が秋波をおくるのが、「次期総裁候補」の2番人気の小泉進次郎氏だ。小泉氏は2012年の総裁選で、石破氏に1票を投じている。その父親である小泉純一郎元首相は14日、「(安倍首相の)3選は厳しい」と述べている。

 ニ階派の伊吹文明元会長は12日の会合で「安倍さんには大変な道義的責任がある」と述べ、昭恵夫人についても言及。岸田派の領袖である岸田文雄政調会長は14日に開かれた広島県党大会で、森友加計問題について記者に尋ねられ「当事者でなければ明らかにできないことがある。政治の信頼回復のためにしっかりと取り組んでもらいたい」と述べた。

「党内野党」を取り込め!

 同じ14日、安倍首相は大阪府連の臨時党大会に出席した。そして以下のように挨拶し、自民党大阪府連への歩み寄りを見せたのだ。

「(大阪都構想は)自民党大阪府連が決めることで、総裁たる安倍晋三の考え方でもある」

 大阪では安倍首相は自民党より日本維新の会に近いとされている。元代表の橋下徹氏や松井一郎大阪府知事と定期的に会食し、意見を交換してきたからだ。それを大阪府連は苦々しく思っていた。大阪都構想の住民投票でともに反対する共産党と組んだのも、日本維新の会に近づきすぎる安倍首相への牽制といえる。

 もっとも安倍首相にとっては、総裁選での地方票を期待したい。自民党大阪府連会長は安倍首相に近かった中山泰秀氏から左藤章氏に交代し、2月5日の石破氏の講演には、約1000名も集まった。危機感を感じていないはずはない。

 9月の総裁選は、党内だけの問題ではない。来年の参院選の「顔」を選ぶ重要なものだ。その後の衆議院選でもシンボルに掲げて戦わなければならない。

 ある意味で国政よりも激しく厳しい自民党総裁選。森友と加計の問題を引きずったまま、安倍首相はどのように戦おうとしているのか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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