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【森友学園問題】 昭恵夫人は致命傷に 最大危機の安倍政権

安積明子政治ジャーナリスト
森友学園問題ですっかり疲れ切った安倍首相(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

決裁文書の調査が公開された

 森友学園への国有地払い下げ問題に関して財務省は12日、「決裁文書についての調査の結果」を公表した。昨年2月下旬から4月にかけて理財局で“書き換え”が行われたことが明らかになった。その件数は14の決裁書に及び、200箇所を超えるという。

 削除されたのは、中山成彬衆議院議員ら数名の政治家と、安倍昭恵夫人の名前だ。安倍晋三首相の名前も「日本会議国会議員懇談会副会長」として記載されていた。森友学園理事長だった籠池泰典氏(本名・康博)は「日本会議大阪代表・運営委員」を名乗っていたが、その“箔付け”のためにあたかも近い存在のように利用されたのだ。

 また価格交渉の箇所も削除された。その中に「特例的」の文言がある。森友学園が“特別扱い”を受けていたことが伺える。

なぜ改ざんされたのか

 麻生太郎財務相は12日、報告書の公開を受けて記者団に「最終的責任者は佐川宣寿前国税庁長官だ」と述べている。“書き換え”は佐川氏の答弁に合わせたものだったというが、全ての責任を佐川氏に押し付けた様相だ。果たしてそれで正しいのか。

 むしろ決裁文書の“改ざん”は、安倍首相と昭恵夫人を守るためではなかったか。安倍首相は昨年2月17日、衆議院予算委員会で福島伸享衆議院議員(当時)の質問に激高し、「私や妻が関与していたら、総理と議員を辞める」と宣言した。もし決裁文書が公表されれば、昭恵夫人の“関与”が明らかになってしまう。だから“改ざん”したのではなかったか。

 その影響を受けたのだろう。FNNによる世論調査によると、内閣支持率は6ポイントも落ち、45%となった。読売新聞の世論調査でも、6ポイント下落の48%。しかし野党の攻勢は声だけは大きいがいまイチで、おそるるに足らない。むしろ安倍政権の最大の敵は自民党内にあるといえる。

絶体絶命の安倍政権

 今年9月に行われる自民党総裁選では、安倍首相の3選が確実視されている。だがいまになって、状況によって一変する可能性も否定できなくなった。出馬意欲満々の石破茂元幹事長は地方行脚を行っているが、基盤のない大阪での講演会で多数の聴衆を集めている。同じく総裁選を目指す野田聖子総務相は、4月から地元・岐阜で女性の政治塾を開く予定だ。ダークホースの河野太郎外相も、総裁選出馬の経験があるだけに手ごわい相手。安倍首相から禅譲を狙う岸田文雄政調会長も、いざとなれば候補として名乗りを上げるだろう。

 戦後の首相では、佐藤栄作、吉田茂に次いで3位の長期政権となった安倍首相だが、ここにきて運が尽きたのか。いや、奔放な妻にその運気を喰われてしまったというべきか。安倍首相と昭恵夫人への批判は、日に日に高まっている。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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