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【2017年衆院選】なぜ小池百合子東京都知事・希望の党代表は失速したのか

安積明子政治ジャーナリスト
希望の党のパンドラの箱には、希望は残っているのだろうか(写真:ロイター/アフロ)

国政に出られない理由

 進むも地獄、退くも地獄―。いまの小池百合子東京都知事はまさにこの心境に違いない。小池知事は10月5日、民進党の前原誠司代表に次期衆院選への出馬を勧められたが、「出馬はないということを改めてお伝え申し上げた」と記者団に語っている。

 本音は国政に転出したいに違いない。しかしそれができないのにはわけがある。

 まずは公明党との関係だ。都議会公明党は東京都議会では「与党」だが、国政では自公連立を堅持している。小池知事の国政進出を懸念して、かねがね「国政に関与するな」と警告していた。

 それなのに9月25日には小池知事は希望の党を立ちあげ、その代表に就任。激怒した都議会公明党は連携解消まで口にした。

 現在のところ、連携解消はなくなったようだ。公明党本部の意向らしい。背景に小池知事との「密約」でもあるのだろうか。

 しかし好機ならばそんな「密約」があっても、小池知事は国政に転出するだろう。小池知事は2009年の衆議院選で、幸福実現党と共闘した。創価学会を支持母体とする公明党にとってとうてい許せないことだったが、2016年の都知事選では公明党は自民党が推す増田寛也氏を応援したものの、創価学会婦人部は事実上小池知事を支持。勝利に導いた。

まさかの反逆

 音喜多駿・上田玲子の2人の都議が10月5日に都民ファーストを離れたことも、希望の党には痛かった。彼らは小池知事が都知事選に出馬した時、まっさきに駆け付けて応援したファーストペンギンたち。都民ファが結成された時は音喜多氏が幹事長に就任するなど、その恩恵は受けたものの、後になって冷遇された。それも離党の原因だろう。同日に行われた離党会見では、党内の人事決定や資金の使途が不明瞭である点が暴露されている。

きれいごとではない内情

 だが何よりの原因は、希望の党に逆風が吹き始めている点だろう。国政に転出する限りは、希望の党が政権を獲らなければならない。実際に小池知事は「タダの国会議員ではいや」と言ったという。

 だからというわけだろうか、希望の党の候補者とポスター撮りの撮影には3万円を徴収した。また上納金の納入義務まで入れた「政策協定」を民進党からの転向組に課している。確かに「タダ」ではない。

 そもそもその「政策協定」が課されたのは安全保障や憲法改正についての思想チェックを行うためで、2015年の安保法制に反対した前職らにとっては「踏み絵」どころか「降伏文書」といえる。もっとも政党とは同じ政治信条の者が集まるものだが、ここまで「選挙のために新党に入りたいという駆け込み組」と「それを見透かしてハードルを上げようとする受け入れ組」の本音が出ているのも珍しい。

 こういうことが希望の党への国民の嫌気を招いているのか、同党に対抗するように設立された立憲民主党がすがすがしく見えてくる。10月4日夕方に中野駅前で行われた街宣では、枝野幸男代表と長妻昭代表代行が演説。確かに動員もあったのだが、多くの人が集まり、彼らをたのもしげに見ている。時代は変わったと感慨深い。

 一方で急激に失速している希望の党。唯一のよりどころは代表の小池知事だが、最終的に小池知事が出馬すれば、ある程度の情勢の挽回はありえるだろう。

 公示日まであと4日。果たして小池知事は腹をくくれるのか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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