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【希望・民進合流】除外リストとカネを巡って内紛!

安積明子政治ジャーナリスト
「お足元にお気をつけください。いろいろと地雷がありますよ」(写真:ロイター/アフロ)

希望の党の「参加除外リスト」

 2005年の郵政民営化選挙で296議席を獲得した自民党は、2009年の政権選択選挙で119議席と激減した。長年の自民党体質が有権者に飽きられたためである。

 この時、308議席を獲得した民主党は2012年の衆院選で57議席と激減。その政治的リーダーシップの欠如が有権者に嫌われたことが原因だ。

 民主党は2014年の衆院選で73議席まで回復したが、有権者の心を掴むまでは至っていない。森友学園問題や加計学園問題など安倍晋三首相に関わるスキャンダルについて世論の多くは「おかしい」と思いつつも、それを追及する民進党(2016年3月に民主党から党名変更)の支持に繋がっていないことでも理解できる。

 さて希望の党と民進党の“合流”の件だが、選挙目的の野合であることは明らかだ。実際にはそれ以上に露骨な状況が見えている。

 衆議院解散の翌29日、民進党から希望の党に行けない「除外リスト」なるものが流れた。

 その面々を見ると、菅直人元首相、岡田克也元外相などで、そのほとんどは野党共闘派だが、全員ではない。“韓信の股くぐり”の故事を引用して「あえて先に離党していった人の股をくぐるつもりはない」と断言した野田佳彦元首相の名前もあった。

 これを作成したのは細野豪志元環境相だと囁かれたが、さっそく希望の党は候補者調整役は若狭勝氏と発表。28日の細野氏の「(合流には)三権の長にはご遠慮いただく」との発言が小池百合子都知事に否定されたことから、細野氏は公認選別担当から“左遷”されたと見るむきもある。

選挙資金はどうなるのか

 選挙資金でも問題がある。民進党の政治資金が希望の党に“迂回”するのではないかという点だ。

希望の党は各候補に選挙資金として1000万円を準備することを要請しているが、すでに民進党は今週、元公認内定者に500万円を支給した。

 もっとも民進党は公認内定者に「離党した際には全額返済する」との念書を書かせていたが、いまになってはその効力はないだろう。一説には「民進党の公認内定者は、希望の党に上納金を納めなければならない」との話も出ており、それが事実なら民進党は希望の党の財布となり果てかねない。

 こうしたことが国民に理解されるかどうか。その一方で希望の党から拒否された人たちで、新党を作る説も出てきた。共産党は安全保障関連法廃止で共闘できれば、無所属を含めて彼らを支援する意思を示している。

 当初は希望の党に賛同的だった連合も、いまは微妙だ。希望の党が打ち出した「原発ゼロ」に傘下の電力総連が激怒したからだ。

小池知事が国政専念しないとおさまらない

 このような混乱を終止させるには、小池知事が国政に専念するしかないだろう。しかし「初の女性総理」を狙う小池知事は、次期衆議院選で希望の党が政権を獲る可能性がある場合にしか出てこないだろう。

 自民党と公明党はこの状況に静観を決め込んだ。「所詮は野党の勢力争い」と見ているのだ。

 明日から10月が始まるが、この1か月はこれまでにない動乱期として日本の政治史に名を残すことになるだろう。その一切をこの目で見ておきたい。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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