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「独身でいること」は、アラフォーよりもアラサーにとって、より大きな問題なのかもしれない。

渥美志保映画ライター

今回は『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』をご紹介します。「ブリジット・ジョーンズ」といえば、アラフォー世代にはバイブルと言っていいラブコメディですが今回は、おそらく完結編と言っていいんでしょう。私実は全然期待していなかったんですが、これが結構面白く、っていうか、前作よりも振り切ったアラフォーのブリジットに爆笑できる映画になっています。ということでこちらから!

まずは物語。アラフォーになったブリジットはニュースの番組のプロデューサーとしてバリバリ働いていますが、恋愛は相変わらずで未だ独身。43歳の誕生日もテーマソングの「オール・バイ・マイセルフ(全部一人ぼっち)」で過ごすことになるのですが、見かねた30代の友人に連れ出され野外ロックフェスに参加することに。「最初に会った男と寝ろ!」と指令され、ひょんなことからそれが実現しちゃうんですね。これが今回の王子様、アメリカ人のイケメン、パトリック・デンプシー演じるジャックです。

さてフェスから帰った翌日に参加した友人の子どもの命名式で、かつての恋人、もはや腐れ縁といってもいいダーシーと再会。別の女と結婚したもののいまや離婚調停中。「君が恋しかった」と言う彼の言葉に焼け木杭には火が付いたものの、朝日とともに我に返ったブリジットは「あなたは結局仕事ばかりで、以前と同じ結末になる」と置手紙を残し、去ってゆきます。

お約束の「オール・バイ・マイセルフ」の熱唱も、今回は途中で一転、ノリノリに。
お約束の「オール・バイ・マイセルフ」の熱唱も、今回は途中で一転、ノリノリに。

ところが2か月後、ブリジットの妊娠が発覚。ブリジットが用意したコンドームが古すぎた……っていうのが爆笑ですが、要するに父親がどっちなのかわからないんです~。

さて。ぶっちゃけ言えばこの作品、脚本的には本当に穴だらけです。働くヒロインが40歳(つまり妊娠にはギリギリに近い年齢)前後で恋人もいないまま妊娠というのはやりつくされたストーリーだし、ブリジットが意味不明に子供のDNA鑑定をしないのも、二人の男で迷うという流れを維持するためのご都合主義的展開にしか見えません。

にもかかわらず、この映画が面白くないかといえば、実のところすごく面白いんです。これはもう長年この作品に関わる人たちが、ファンのツボを心得ていることにほかなりません。特にベタな笑いを恐れず身体を張ってボケまくるレニー・ゼルウィガーの演技は、もはや名人芸。

これが最もカッコいいシーンで、相変わらず全編ダメダメなブリジット
これが最もカッコいいシーンで、相変わらず全編ダメダメなブリジット

映画が始まってほんの15分、ご丁寧に上から下まで真っ白な服で訪れた雨上がりのロックフェスで泥だまりに突っ込むのを「挨拶代わり」に、自虐ネタも含めてありえないボケを次々とかましまくり、その愚かさと懲りない笑顔に「アホすぎる!」と笑っているうちに、観客はブリジットのことを憎めなくなっちゃうんです。シワシワでユルユルだけど、レニー、相変わらず女子の共感は抜群だと思います。

そして女子にとって何よりの眼福は、二人の大人イケメン、ダーシーことコリン・ファースと、ジャックことパトリック・デンプシーでしょう。

こんなに理解のあるいい男、ふたりもいるわけないけども
こんなに理解のあるいい男、ふたりもいるわけないけども

実はアメリカのIT長者だったという、これまたあり得ない設定のジャックは、これまで結婚なんて考えたこともないのにブリジットを押しまくりで、花束をはじめとするプレゼントや、ふたりの恋を素敵な物語にするやり方もスマート。ファッションもデニムに皮ジャンとバイクだし、ブリジットが妊婦スイミングで溺れかければ、すぐに(もちろん脱いで)プールに飛び込み助けるというヒーロー癖なんかも、いかにもアメリカンな男です。

対するダーシーは、これまたいかにもイギリス人の堅物で、不器用すぎてすべてにおいて後れを取りまくり。意地っ張りだわ、腰は重いわ、プライドは高いわ、素直じゃないわ、愛想はないわで、こうして見るとぜんぜんいいとこナシなのですが、時折チラッ、チラッ、と覗く、そういう自分へのコンプレックスや情けなさが、なんとも可愛く、苦虫を噛み潰したような顔で照れ隠ししながら見せるさりげない優しさもグッときます。

個人的にはダーシーがあまりに素敵すぎて……と思ったのですが、皆さんはどう思うかなー。女子何人かで見たら、この話題でめっちゃ盛り上がりながら延々飲めると思います。

まあラストはおとぎ話的ですが、私は何よりも40歳になったブリジットが自虐しながらも楽しい毎日を送っていることが、なんか嬉しかったなあ。例えばアラサー時代の「オール・バイ・マイセルフ」の誕生日には、一緒にいる友達がいても「ヤバイ」と思っていたブリジットが、「オール・バイ・マイセルフ」上等とばかりに、一人盛り上がる冒頭場面を見ると、独身であるという事実は、どちらかといえば30代の方が深刻だったのかもしれません。

音楽なんかも80年代が中心で、これは今を生きるアラフォーの世代映画かなーなんて思いますが、試写では私の前に座っていた20代の女の子二人組がすごく盛り上がっていましたから、世代を超えて楽しめる映画になっているのかな~と思います。

ブリジットの恋の行方――そうそう、ヒュー・グラント演じるかつての恋人ダニエルのその後も――見届けて、ぜひぜひハッピーに笑ってくださいませ~!

『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』公開中

(C)Universal Studios.

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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