リオ五輪開会式総監督、フェルナンド・メイレレスってどんな人?

気さくなおじさん。って感じ。(写真:REX FEATURES/アフロ)

リオ五輪がついに開幕しましたねー。開会式は毎回感動してしまいますが、今回はかつて原爆が投下されたその時間に合わせて日系人を登場させ、「本当は黙とうをささげたかった」と言ってくれた総監督のフェルナンド・メイレレスに、多くの日本人の心が温まったのではないでしょうか。

とはいうものの。つーか、フェルナンド・メイレレスって誰?って、みなさん思いましたよねー。

彼はブラジルを代表する映画監督で、もともとは建築を志していたらしいのですが、仲間と一緒に映画を撮り始め、80年代は主にテレビで人気の子供番組を製作していたようです。

そして世界的な知名度を獲得したのが、開会式の放送でも触れられていた作品『シティ・オブ・ゴッド』

ブラジル、リオの「ファベーラ」と呼ばれる世界最大のスラム街を舞台に、ギャングとなった子供たちの抗争と、そこでどうにか生き抜く主人公を描いた作品なのですが、もう大大大傑作。

無邪気さと残酷さを表裏として持つ子供たちの弱肉強食の世界、そのスピード感と乾いた感覚、そんな中に、ギャングに入らない普通の少年の青春を描き、盛者必衰の歴史のダイナミズムのようなものまで感じさせ、「なんてすごい監督が出てきたんだろう!」と大興奮したことを覚えています。

さて『シティ・オブ・ゴッド』で世界中の映画祭を席巻し、アカデミー賞監督賞ほか4部門にノミネートされたメイレレス監督が、次に撮った作品が『ナイロビの蜂』。アフリカに駐在する外交官が、医療救援活動をしていた妻テッサの死の真相を探るうち、新薬開発の利権に絡む陰謀につきあたるという物語です。

テッサの死には様々な人々が「そんなことになるとは思わなかった」と弁解しながら加担しているのですが、彼女はまさに様々な国や大企業が食い物にしているアフリカそのものを象徴しています。彼女の死を悔やむ夫の最後の愛情に胸が締め付けられる作品で、ヒロインを演じたレイチェル・ワイズはアカデミー賞で助演女優賞を獲得しています。

3作目の『ブラインドネス』は、日本の映画会社GAGAコミュニケーションズも出資した作品。罹患すると目が見えなくなる謎のウィルスの流行により、ある病院に隔離された患者たち。その閉鎖空間の中でやがて起こる対立に、人間性を失ってゆく人々を描いた作品で、日本からも伊勢谷友介と木村佳乃が出演しています。

この作品の際には来日も果たしていて、私は伊勢谷友介さんとの対談を取材させていただいたのですが、すごーく印象に残ったのは、オーディションの時のエピソード。メイレレス監督の大ファンだった伊勢谷さんは、「二度と会えないかもしれないから話したい!」と、オーディションの合否などお構いなしにランチに誘い、監督もそれに乗っかって、ふたりで回転ずしを食べに行ったんだそうです。

メイレレス監督「東京に来たけれど、知人はプロデューサーの酒井さんしかいないし、誘ってもらえてすごくよかった。オーディションだと、やはり俳優は「試されている」という意識が強いけれど、食事ならばもっと楽しむことができるし、親近感もわきますし。でも、彼を選んだのは一緒に食事したからってわけじゃありません。演技が良かったから。もちろん英語も上手でしたしね」

映画では、結構人間の醜い部分にぐいぐいと切り込んでいき、グロテスクな暴力描写などははあまり描かないのに、なんか怖い作品が多いメイレレス監督。もしかしてちょっと怖い人かなと思っていたのですが、誘われて回転ずしって……どれだけ気さくなの!

伊勢谷さん、実は映画の自身のエピソードの一部分の脚本を手伝っているのですが、彼が書いた脚本を見たメイレレス監督に「へー、ユースケ、結構脚本書けるじゃん」と言われ、「ええと僕、実はすでに1本映画を撮ってるんですけど…」と苦笑するしかなかったとか。メイレレス監督、面白いです。

アンソニー・ホプキンス、ジュード・ロウ、レイチェル・ワイズなど豪華出演の4作目『360』以降、ブラジル国内での活動が続いているようですが、このオリンピックを機に、また国際的な作品を取る機会も増えるかもしれませんね。