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『殿、利息でござる』で羽生結弦が見せる「殿様力」と「地元愛」

渥美志保映画ライター
ぜんぜん映画のスチールじゃないけども。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

14日から公開の『殿、利息でござる』は、江戸中期に財政難のために民衆から重税を取り立てた仙台藩で、宿場町を守るために奮闘する商人たちの物語。阿部サダヲ、瑛太、竹内結子、妻夫木聡、松田龍平、千葉雄大という豪華な顔ぶれの時代劇です。

こんな感じで、大弱りの庶民たち。
こんな感じで、大弱りの庶民たち。

が、最も大きな話題はフィギュアスケートの羽生結弦選手の銀幕デビュー!ということでしょう。

彼が演じる役は、まさにその重税を課しているお殿様、伊達重村役。はなはだ迷惑な困った人です。でもえらく無体なことを涼しい顔で要求して通してしまう、周囲が困っても全然意に介さないというキャラクターが、そこまで憎々しくならないのはこの人ならでは。

彼の「絶対王者」というキャッチフレーズ、これ、さも羽生選手が自信満々の上から目線で発したかのように誤解されている言葉ですが、まあもしそうだったとしても、羽生くんなら(事実でもあるし)全然OKと思わせる感じがありますね。作品を見ると「ああ、あれは“殿様力”だったんだなあ」とわかります。誤解されても言い訳しない、という余裕も含めて。殿の衣装のキラキラぶりも、着慣れてるんでしょう、堂に入っております。

羽生くんでもうひとつ、すごいなあと思うのは、地元である仙台愛の大きさです。あれだけ世界的に有名でアイコニックな存在だと、活動の中心がしぜんと東京になっていく場合が多いですよね。でも今回のことも含めて、スケート以外の彼の活動は「仙台」というキーワードだらけ。とくに東日本大震災の後は、「地元を元気にするために」と、震災復興のNHKキャンペーンソング「花は咲く」に合わせて演技をしたり、仙台市が無料配布したガイド本「週末仙台」の表紙をやったり、ベガルタ仙台の始球式やったり。日本にいないことも多いし練習も忙しいだろうに、本当に労を惜しみません。

その有り方で「もしかしたら一番似てるんじゃないか」と個人的に思うのが、熊本の大スター「くまモン」。くしくもどちらも大地震の被災地なのですが、彼らのような存在がいてくれたことは両地域にとって本当によかったことだなあと思うのです。

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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