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10月こそ映画を!この秋見るべき「面白い映画」10本【個性派編】

渥美志保映画ライター
『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』より

バラエティに富んだ作品が目白押しの10月「見るべき面白い映画」第一弾では【イケメン編】とも言うべき5本をご紹介しましたが、続く今回は「個性派作品」を中心にした5作品をご紹介します。ドキュメンタリーにロシア映画にノルウェー映画にと、いつも見る映画とは違うスケール感やリズム感、笑いのツボや想像を超えるオチなど「毛色の違うカルチャー」に、この機会に是非触れて下さいませ!

謎のおばさん天才写真家の正体は?
謎のおばさん天才写真家の正体は?

ネットで公開されるや熱狂的な賛辞を獲得し、世界中で写真展を成功させた50~70年代の無数のポートレイト。その優れた写真を撮った埋もれた天才ヴィヴィアン・マイヤーは、ただの無名の「ナニー(乳母)」だった。オークションでたまたま彼女のネガを手に入れた本作品の監督が、様々な関係者のインタビューによってその実像を追ったドキュメンタリー。現像さえされていない15万枚もの写真のネガを残し、洋服から古新聞まで無数のモノをため込み、子供たちに愛されると同時に恐れられ、人との関わりを欲しながら結局は誰一人寄せ付けなかった奇妙な人物像は、彼女が切り取った人々の表情とともに、一言では言い表せない人間の複雑さを思わせ興味深い。心に隠した孤独や秘密を想像し、そこから生まれた芸術の素晴らしさに、奇妙な感慨を覚えます

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10月10日公開

ビノシュ嫌いの人にも(人にこそ?)おすすめ!
ビノシュ嫌いの人にも(人にこそ?)おすすめ!

若き日の出世作である舞台作品「マローヤのヘビ」のリメイクで、出演オファーを受ける大女優マリア'''。だが彼女の役は、かつて演じた若く奔放なヒロインではなく、ヒロインに翻弄され自殺する中年女の役だった。50歳過ぎて今だ「女」を演じ続けるジュリエット・ビノシュを主人公に、女優の老いをテーマに描くという生々しくも恐ろしい物語。「私だってまだまだイケてる」と抗うマリアが、やがて現実を受け入れ始め、諦めの1歩を踏み出す――という過程は同じような場所にいるアラフォー女性にはリアルに厳しい展開かもしれないけれど、ラストの数分で示される価値観、発想の転換を見れば、ビノシュがこの映画に出演したのかがわかるはず。共演の若手女優役クロエ・グレース・モレッツが、初めての意地悪役でビノシュをコテンパンにする'''のも見もの。

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10月24日公開

●『アデライン 100年目の恋』

ブレイク・ライブリーがすてき~!
ブレイク・ライブリーがすてき~!

29歳で遭った事故がきっかけでなぜか老化が止まって以来、その謎を利用しようとする人々から逃れ、10年ごとに名前と住居を変え生きてきたアデライン。唯一の肉親である自分より年老いた一人娘に乞われ、久々に訪れた本当の恋に一歩踏み出そうとするが……。ファンタジックかつサスペンスフルに描かれるのは、「本当の姿を知れば誰も自分を愛してはくれない」という恋に臆病な女性に共通する気持ち。設定の妙が生み出す意外なストーリー展開や、洗練されたヒロインと彼女を巡る男性陣、ほどよい匙加減のロマンティックさなど、このタイプの作品にありがちな安っぽさがない、大人のおとぎ話としてすこぶる魅力的。時代ごとに変わるアデラインのファッションはグッチが担当し、着こなす主演ブレイク・ライブリーもすごーく素敵!

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10月17日公開

●『1001グラム ハカり知れない愛のこと』

へんてこでお洒落な北欧映画にほっこり
へんてこでお洒落な北欧映画にほっこり

ノルウェー国立計量研究所に勤める科学者のマリエは、国の重さの基準である貴重な「キログラム原器」を携えて、パリの「国際度量衡局」のセミナーに出席。帰国後、父の死と離婚した夫の暴挙に動転した彼女は、誤って原器を破損。密かに修理してもらうために再び訪れたパリで、物理学者のパイと再会する。唯一無二の設定とミニマルな表現、北欧雑貨そのままのおしゃれな映像センスで、ほんわかした和みの世界観を作り上げるノルウェーのベント・ハーメル監督は、個人的に大好きな監督。無味乾燥な日々から抜け出し、自分の「幸せの基準」を見つけ出す30代女性の物語は、働く女性にこそ見てほしい幸せな気持ちになれる1本。

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10月31日公開

●『裁かれるは善人のみ』

クジラの骨が打ち上げられる浜辺って!
クジラの骨が打ち上げられる浜辺って!

小さな入り江の再開発による土地の強制買収を巡り市長と対立するコーリャ。その友人で訴訟を担当する弁護士ディーマと、彼と関係を持ってしまうコーリャの若い後妻リリア。罪なき小さな人々の悲劇を「義人の苦難」を描いた聖書のヨブ記になぞらえて描き、ラストには世の理不尽と神の無慈悲を思い知らされます。こっぴどく打ちのめされること間違いなしですが、ヘビーな映画好きにはたまらない重量感のロシア映画。まるで地の果てのような町の鉛色に沈む風景が圧倒的で、特に巨大なクジラの骨が打ち上げられ放置される浜辺の荒涼には、壮大な何かに飲み込まれてゆくしかない人々の無力感がずしーんと胸に響きます。ハリウッド映画には絶対真似できない世界観を是非。

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10月31日公開

ということで、第一弾【イケメン編】もあわせて、10月は是非映画を見て下さいねー。

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映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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