クリスマスだから考えちゃう、愛とセックスって別物? 

今日ご紹介するのは恋愛映画『パリ、ただよう花』。過激な性描写で話題を呼んだネット小説が原作で、現代版『ラスト・タンゴ・イン・パリ』と呼ばれる作品です。のっけからこんなん言うのもナンですが、原稿にこんなにたくさん「セックス」って言葉使ったの初めてですー。キャーはずかしーっ!エロサイトからヘンな人がたくさん流れ込んできちゃうんでしょうか、どうでしょうか。

まあそんな事情を押して!この映画を推す理由は、ダメ男と付き合う女子が「わかるよ!そうなんだよ!どうしたらいいのお!」というポイントがいっぱいあるから。もちろんエロな気持ちもヨシとしよう!人間だもの!でもそれだけではあまりに惜しい!ということで、リビューいきたいと思いますー。

さて、物語。主人公の女子は、パリに暮らす中国人留学生のホア。映画はこの彼女が自分を捨てて去っていく男に猛烈にすがっている場面から始まります。

男は北京でホアにフランス語を教えていた教師で、ホアは彼を追ってフランスに来たわけです。でも男はフランス人ですから(←激しく偏見)、ちょっと可愛い女の子に手を出しただけで、「僕に何を期待してるんだ」「君も大学で楽しめばいい」なんて言っちゃって、早い話が全然遊び。その彼にホアは言います。「気持ちなんてなくていいから、最後に一回だけ寝て」。えええマジっすか!っていう捨て身なオファーもむなしく、男は「バカこけ!」と去っていきます。

そんな中、ひょんなことから出会ったのが3歳年下のマチュー。一目惚れの末に猛アタックされたホアは、彼と付き合い始めます。

ふたりの関係は口の悪いマチューの友達が「お前らウサギか!」と言うほど、朝から晩まで所構わずセックスしっぱなし。いやほんとにぃ、私だってぇ花も恥らう乙女なんぇ、「イチャイチャしっぱなし」くらいの描写にしときたい!だけどマジでセックスなんだものこいつら。んでもって「君を失ったら死ぬ」とバンバン言うマチューは、特別な理由もなく薔薇の花束をプレゼントしたりなんかしちゃって、そりゃもう情熱的なわけです。

んでもって「大学の男友達がお前に色目を使うのも許せない」「あの男と会うからワザとケータイ忘れていったのか!」とかめんどくせー嫉妬したりもするんですが、「モメる→出ていく→戻ってくる→仲直りのセックス→燃える」みたいなもんで、嫉妬プレイかよ!ケンカのふりして前戯かよ!犬も食わねえんだよ!と机ひっくり返したくなります。

とーこーろーが。やがてマチューが想像以上のダメ男だってことがわかってくるんですねえ。

はっはっは。世の中そういうもんさ!と高笑いもつかの間、次第に「モメる」の前に起こることがシャレにならなくなってくる。それでいいのか、ホア!ダメだろ!許しちゃいかんだろ!しっかりしろ!という観客の叫びも届かず、ホアは「仲直りのセックス」しちゃって「愛してるから仕方ない」と、マチューのとんでも愛情表現やら掟破りの隠し事やらを次々と飲み込んじゃうんです。確かにマチューは悪人じゃない、でも悪人じゃないからこそコトはこじれまくり、ふたりの関係は袋小路に追い込まれていきます

象徴的なのは、ホアの友人の集まりにマチューが遅れて参加する場面です。

話題は参加者の一人である中国人留学生(男性)の離婚危機について。マチューは言います。「バラの花と優しいセックスで、すべて解決するさ」。これがマチューのいつもの手なんですね。漂う険悪なムードを察知したホアは「いろんな事情があるのよ」と諌めますが、マチューは「あんた、下手なんだろ」とのたまい、大喧嘩になってしまいます。

と、ここで思い出すのは映画の冒頭。「最後に一度だけ」と言ったホアは、実は今のマチューと全く同じなんですね。セックスしちゃえば相手をつなぎとめられる、ほだされてくれると思ってたわけです。でもその一方でホアは、愛とは完全に切り離したセックスもできてしまう。それがイマドキの女子がハマりやすい落とし穴。恋愛至上主義の時代の中で、セックス込みの愛がなければ生きていけず、なのに愛のないセックスもできちゃうホアは、「愛」を見失う典型的なタイプかもしれません。

監督のロウ・イエは中国政府に活動を禁止されている人ですが、それを押して撮った前作『スプリング・フィーバー』では男同士の同性愛を描き、カンヌで脚本賞を獲得しました。今作でも性描写の過激さが話題になっていますが、脚本も素晴らしい。分かる人にしかわからないアート作品ではなく、恋愛に悩む普通の女子が身近に感じられる物語になっていると思います。

ホアが選んだ道を「幸せ」と見るか「不幸」と見るかに、その人の恋愛観がわかっちゃうリトマス試験紙みたいな映画。自分の幸せを見極めたい女子、彼と過ごすクリスマスの前に!過ごしちゃった後に!是非見てほしい作品です。クリスマスを一緒に過ごすの、こいつでOKなの?!なんてこと考えちゃうかもしれません~。

12月21日(土)より、渋谷アップリンク、新宿K'sシネマほか、全国順次公開

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