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サンドラ・ブロック&ジョージ・クルーニー、今年最高の映画『ゼロ・グラビティ』

渥美志保映画ライター

12月13日公開の『ゼロ・グラヴビティ』のプロモーションで、サンドラ・ブロックが来日していましたねー。

いいんですよ、サンドラ・ブロックも素晴らしい女優だし、この作品はほぼ全編サンドラのひとり芝居なんで。でもさー、来て欲しかったんだよ、ジョージ・クルーニーにさー。そりゃあ筋肉見ればポッ…となるし、若いイケメンにもビャ~~ってなりますけども、ジョージ・クルーニーのカッコよさってなんて言うんですかまあ陳腐ですけどライターとしてどうなのレベルの言い方ですけど大人の男っていうんですか。最近流行りの美少年系ポロンな唇とは対極の0ミリ唇だし、眉毛とかヒゲとかゴワッと濃い、どうやらアゴも割れてる系で、あんまり日本人女子にウケるタイプじゃないんでしょうが、彼の魅力をわかってもらいたい!というわけで、『ゼロ・グラビティ』、いかせていただきまっす!

物語は、事故でシャトルから宇宙に投げ出された女性飛行士が、漂流しながらどうにか地球への帰還を目指すお話。

サンドラ・ブロック演じる主人公は科学者のライアン。彼女が船外活動している最中に、廃棄のために他国の衛星が爆破されたという情報が飛び込んできます。当初は「まあ影響ないと思うけど」程度だったんですが、これが想定外の事態を引き起こし、無数の巨大な破片となって彼女のシャトルへ押し寄せてきます。彼女はそのもらい事故に巻き込まれ、宇宙の彼方にポーンと投げ出されてしまうわけです

宇宙は空気抵抗がないので、なんかが飛んでくる時は猛スピードだし、途中で止まってもくれません。宇宙服を着た彼女が1分もすれば点にしか見えなくなっちゃうくらいの猛スピードで、真っ暗な宇宙の中になすすべもなく吸い込まれていく。さらに空気のない宇宙の無音は、地上の静寂とは全く違うしろもので、その閉塞感とか圧迫感はものすごく――てか、お前実際に行ったんか!と言われそうですが、そんな人に私は反論したい。映画館の暗闇で3Dで見てみ!冒頭から、ホントすごい映画になっとります。

カメラが時々ライアンの視線になるのが、これまた怖いんですね。

宇宙飛行士が頭にかぶってる金魚鉢の内側が吐息で曇り、モニターになった視界の片隅に酸素残量10%とか数字が出てきて、聞こえるのは過呼吸気味の自分の息遣いと心拍音だけ。でも自分で何も出来ません。そんな完全なパニック状態に、不意に飛び込んでくるんです。ジョージ・クルーニーの声が!彼が演じるマットは科学者でなくコマンダー、シャトルを率いる宇宙飛行士で、事故のときも一緒に船外活動をしていたんです。

その声に必死ですがるように「たすけて、たすけて」と連呼するライアンを落ち着かせながら、マットは言います。「何が見える。ゆっくり息をしろ。助けに行く。懐中電灯を触れ」。そして彼女を見つけ出して「アイガッチュ」と抱きかかえる。惚れる完全に惚れる絶対に惚れる惚れるしかない!って展開です。惚れないにしても、働く女子100人中120人くらいが「うちの上司と取り替えてくれ!」と叫ぶに違いないね!断言!

以前、ジョージ・クルーニーにインタビューしたことがあるんですが、二枚目だしおしゃれだし、答えに困る質問にもシャレたジョークで切り替えす、それを嫌味なくサラッととできちゃう人で、その場にいたライター女子みんながメロメロになっておりました。その一方で『グッドナイト&グッドラック』などのインテリジェントで男っぽい気骨のある作品や、『コンフェッション』など遊び心たっぷりの作品を作り、監督としてもオスカーにノミネートされちゃうくらいの才能もある。女だけじゃなく、男性にとっても理想の男性像でしょう。

この作品のマット役はそんなジョージ・クルーニーの魅力、そのまんまの役。ジョークが効いててチャーミングで、冷静で余裕がある頼れる男です。

冒頭では無線でつながるヒューストンに「耳にタコだから!」といなされながらも次々とお約束のバカ話を繰り出し、助け出したばかりで恐慌状態のライアンには「俺に惚れそうだろ?」なんて言うんですが、それもすべて周囲をリラックスさせるため。途中、映画がよりテンパってくる場面でも、おおお!という意外な展開で和ませてくれます。ほんとに美味しい役ですが、ジョージが演じることで美味しさ倍増。自分が永遠に宇宙を彷徨うことになるかもしれないという時にも、「地球はなんて美しいんだ」と惚れ惚れしながらのたまい、「行かなかきゃいけない旅なら楽しむべきだ」と、くじけそうになるライアンと観客に希望を与えてくれます

さてこの映画の映像のスゴさは、誰もがそこらじゅうで言ってるので置いといて。私の専門である脚本から作品を見て行きたいと思います。

宇宙を彷徨いながらのふたりの無駄話から、ライアンはかつて幼い娘を亡くしていることが分かります。ひとり宇宙ステーションにたどり着いたライアンが宇宙服を脱ぎ捨て、誰もいない小さな無重力空間で胎児のように身体を丸めて心地よく浮かぶ場面がとても印象的です。彼女は自分が生きる世界から目を背け、誰もいない「宇宙」に引きこもったわけです。原題は「グラビティ(重力)」。「生きることの素晴らしさ」は「生きることの重さ」をも背負っていくことであり、映画はそれをあらゆる人間を地上につなぎとめる「重力」になぞらえているわけです。無重力空間の果てしない孤独の先に描かれるのは、「重力」を感じられる喜びであり、ラストは本当にぐっと来ます~。サンドラは必ず、下手すりゃジョージも、オスカーに絡んじゃう気がします

映画はサイドストーリーのショートムービー「アニンガ」も公開されています。映画を見た後にこれ見ると映画の世界が広がってまた面白いと思います。ヒューストンからの声をやっているのがエド・ハリスで、こちらのショート・ムービーもあるという噂を聞いたのですが、まだ見つかってないので見つかったら貼りますね。必ず3Dで、できればアイマックスで見てください、全く違う映画体験になると思います。宇宙遊泳ですよ、マジで!行ったことないけどな!

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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