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韓国は「4A」、台湾、メキシコは、「2A相当」―2022年全世界プロ野球観客動員データから―

阿佐智ベースボールジャーナリスト
韓国KBOトップの観客動員数を誇るSSGの本拠、仁川球場

 前回に続いて、世界中のプロ野球球団の観客動員についてみていきたい。今回は51位から120位までを中心に見ていく。

このあたりにランキングされるのは、1試合平均8000人台から4000人台の球団だ。70球団中、韓国KBO10球団中の下位5球団、メキシカンリーグ18球団中の6球団、台湾のCPBL5球団中の4球団、北米マイナーリーグの3Aランク30球団のうちのほとんどと言っていい27球団、2Aランクの約半数、16球団がこのランク帯に入っている。マイナーについてもう少し詳しく言えば、5000人を境にそれより上には3Aランク、以下には2Aランクの球団が集中している。MLB傘下のマイナー各レベルの平均観客動員は、3Aが5822人、2Aが4119人、A級が2795人である。韓・台・墨3ヶ国の各トップリーグのそれは、KBOが8420人、CPBLが4903人、LMBが4489人である。

 KBO  8420

 3A  5822

 CPBL 4903

 LMB  4489

 2A  4119

A 2795

(韓国、台湾、メキシコのトップリーグとマイナーリーグの観客動員数の比較)

プレーレベルに応じた観客動員

2022シーズン世界プロ野球観客動員(51-90位)

 順位 チーム      リーグ 1試合平均動員数

  • 51  キア        KBO     8394
  • 52  デイトン      A      7935
  • 53  リーハイバレー   3A     7665
  • 54  コロンバス     3A     7634
  • 55  ナッシュビル    3A     7611
  • 56  インディアナポリス 3A     7425
  • 57  KT         KBO    7393
  • 58  ウースター     3A     7290
  • 59  シャーロット    3A     7280
  • 60  アルバカーキ―   3A     7062
  • 61  ラスベガス     3A     6910
  • 62  バッファロー    3A     6846
  • 63  エルパソ      3A     6714
  • 64  楽天(台湾)    CPBL    6681
  • 65  セントポール    3A     6582
  • 66  ダーラム      3A     6295
  • 67  ロチェスター    3A     6180
  • 68  リッチモンド    2A     6160
  • 69  ハートフォード   2A     6002
  • 70  アイオワ      3A     5913
  • 71  ソルトレイク    3A     5873
  • 72  トレド       3A     5842
  • 73  メキシコシティ   LMB     5830
  • 74  中信        CPBL  5759
  • 75  ポートランド    2A     5744
  • 76  ルイビル      3A     5730
  • 77  オクラホマシティ  3A     5626
  • 78  レディング     2A     5577
  • 79  サルティージョ   LMB     5550
  • 80  ウエストミシガン  A      5527
  • 81  ラウンドロック   3A     5507
  • 82  タルサ       2A     5495
  • 83  アマリージョ    2A     5493
  • 84  ソマセット     2A     5241
  • 85  バンクーバー    A      5135
  • 86  NC         KBO     5125
  • 87  ケーンカウンティ  Indy  5068
  • 88  フォートウェイン  A      5061
  • 89  ロケットシティ   2A      5031
  • 90  タコマ       3A      5020

*"Indy”は北米独立リーグ

 プレーレベルにおいて、一般的にKBOは3A相当、CPBL、LMBは2A相当とも言われているが、観客動員においても、同様の結果となっている。ただ、KBO、LMBは各々の国ではトップリーグと言うこともあって、人気チームの観客動員は、マイナーリーグ球団のそれを大きく引き離している。今回の表にはないが、KBOトップのSSGランダーズ(全体で41位)は優勝したということもあり、MLB下位2球団をもしのぐ、1試合当たり1万3000人を超える動員数を誇り、またLMBトップの強豪、ティファナ・トロス(44位)も1万人超えを達成している。さすがにマイナーリーグにはこの数字を超える球団はない。

 台湾トップは楽天モンキーズ(64位)だが、その数字は6681人。この数字を30球団ある3Aに当てはめると11位と上位ランク相当となる。つまり台湾プロ野球の人気チームはマイナートップの3Aの人気チーム並みの動員力ということだ。一方最下位はこの表にはないが、3959人のCPBL創設以来唯一球団名を変えることなく続く名門球団、統一ライオンズ(129位)。この数字は、2A中位、LMB下位レベルと言ったところだ。やはり、観客動員という視点からも、台湾、メキシコのプロ野球は2Aと同等ということができるだろう。

台湾一の人気を誇る楽天モンキーズの本拠、桃園球場(前身のラミゴ時代)
台湾一の人気を誇る楽天モンキーズの本拠、桃園球場(前身のラミゴ時代)

マイナーリーグで見られる「下剋上」

 MLB傘下のマイナーリーグに関して言えば、そのプレーレベルに観客動員数もおおむね比例している。51位から80位までの間には3Aの20球団がひしめいている。3Aトップの(53位)のリーハイバレー・アイアンピッグスはフィラデルフィア・フィリーズ傘下の球団で、2008年にカナダのオタワから移転後、チーム誘致のため本拠ペンシルベニア州アレンタウンに建設された収容1万人のコカコーラ・パークに多くのファンを迎え入れ、以降、マイナーの人気チームとして毎年観客動員数トップを争っている。

 3A中7位(61位)のラスベガス・アビエイターズはメジャー最下位(同45位)のアスレチックスのファームチーム。両者の差は3000人ほどに過ぎない。ラスベガスはこれまで度々メジャーリーグ拡大の際の新フランチャイズやメジャー球団移転先として名前が挙がってきている町だ。アスレチックスも老朽化の激しい本拠に代わる新球場の建設をオークランド市に求めているが、新球場の建設は遅々として進まず、移転がささやかれている。観客動員をみると、将来的にメジャー球団と3A球団の本拠地入れ替えもあるかもしれない。

 2Aトップはジャイアンツ傘下のリッチモンド・フライングスクウォーレルズ(67位)。1試合平均6160人というから3Aにひけをとらない集客力を誇る。本拠のバージニア州リッチモンドは、長らく、アトランタ・ブレーブスの3Aチームの本拠として野球ファンから認知されていたが、2008年限りでブレーブスはこのファームチームを本拠アトランタと同じジョージア州内に移転。1年の空白期間を経て、ジャイアンツが2Aチームを移してきた。本拠地球場は新造することなく、ブレーブス時代のものを使っているが、好調な観客動員からは、リッチモンドという町の野球熱がうかがえる。

 ちなみに移転したブレーブスの3Aチームであるグウィネット・ストライパーズはこのフライングスクウォーレルズの半分にも満たない1試合平均2961人(155位)。これは3A最低の数字である。トップチームとの選手の入れ替えの多い3A球団をメジャー球団近くに置くのは近年の傾向だが、ことビジネスに関しては、ブレーブスの策は失敗していると言える。

サクレメント・リバーキャッツの本拠、ラリーフィールド(アスレチックス傘下の2013年当時)
サクレメント・リバーキャッツの本拠、ラリーフィールド(アスレチックス傘下の2013年当時)

 とは言え、ジャイアンツの方も、3A球団の観客動員には苦戦しており、サクラメント・リバーキャッツの動員数は3A30球団中23位の1試合平均4970人(95位)。つまり3Aと2Aの逆転現象が起こっている。同様の現象は、カージナルス傘下のスプリングフィールド(2A、3754人、136位)とメンフィス(3A、3375人、147位)、ヤンキース傘下のソマセット(2A、5241人、84位)スクラントン/ウィルクス(3A、4666人、101位)、ダイヤモンドバックス傘下のアマリージョ(2A、5493人、83位)とレノ(3A、4801人、99位)の間でも起こっている。

マイナーナンバーワンはA級球団

 マイナーリーグトップの座は当然のごとく3Aの人気球団が占めると思われるのだが、なんとA級のデイトン・ドラゴンズがその座を射止めている。

 親球団のシンシナティ・レッズはMLB24位(全体35位)で、NPB球団と比べても、この球団の1試合平均観客数1万7447人を下回るのは西武だけという「不入り」なのだが、三軍に当たるこのチームは、親球団と同じオハイオ州にあって、2000年の本拠地移転以来、マイナー屈指の人気チームとして上位リーグにひけをとらない観客動員を続けている。このチーム誘致のために建てられたデイエア・ボールパークは、約7000席を備えているが、芝生席にもファンを吸収し、最高9500人の「超大入り」を記録したこともある。2011年にはアメリカプロスポーツ史上最長の815試合連続チケット完売を記録したこともあるこの球団の昨年の1試合当たりの観客数は7935人(52位)。日米以外のトップリーグ顔負けの数字である。

 ちなみにレッズ傘下の他のクラスの数字を見てみると、3Aルイビル・バッツが5730人(76位)、2Aチャタヌーガ・ルックアウツが3238人(151位)、A級フロリダリーグのデイトナ・トーテュガスが1572人(220位)となっている。

台湾やメキシコトップレベルと同等の動員力を誇る独立リーグトップ球団

独立リーグトップの観客動員を誇るケーンカウンティの本拠、ジェニーバのノースウェスタンメディシンフィールド
独立リーグトップの観客動員を誇るケーンカウンティの本拠、ジェニーバのノースウェスタンメディシンフィールド

 また北米にはMLB傘下のマイナーリーグの他に、独立リーグもあるが、このカテゴリーの観客数はおおむね、3A、2Aの下である。その中で独立リーグトップとして全体順位87位に食い込んでいるのが、アメリカンアソシエーションに所属するケーンカウンティ・クーガーズである。その1試合当たりの数字、5068人は、韓国KBO2球団、台湾CPBL3球団、メキシカンリーグ13球団を凌いでいる。つまりKBOでなら下位に甘んじているが、台湾とメキシコのトップリーグにおいては十分に人気トップレベルと言っていい集客力を誇っている。この人気の背景には、この球団が、メジャー球団2チームを抱え、周辺にも多くのマイナー球団がひしめくシカゴ大都市圏内に位置すること、もともとMLB傘下のマイナー球団で非常に人気の高かったことが挙げられるのだが、独立リーグに「格落ち」しながらもいまだ高い集客力を誇っているのはひとえに球団の努力のたまものだろう。ちなみにこの球団がかつて所属していたA級球団でこの球団の数字を上回っているのは、70球団中3球団しかない。

 ケーンカウンティの後は、3A、KBO、LMBの下位球団が続き、104位に独立リーグ最強と言われるアトランティックリーグのロングアイランド・ダックス(4538人)が顔を出す。そして、そのA級球団が続くが、114位にCPBL5球団中3位の味全ドラゴンズ(4158人)がランクインしている。味全は、1990年のCPBL創設時の名門球団。一旦経営から撤退したが、2019年に復活している。トップリーグの「ドラゴンズ」として、A級マイナーチームを凌ぐ集客を今シーズンは期待したい。

2022シーズン世界プロ野球観客動員(91-130位)

順位 チーム    リーグ 1試合平均動員数

  • 91フリスコ        2A    5018
  • 92ノーフォーク      3A    5004
  • 93ハンファ    KBO 4975
  • 94ジャクソンビル    3A    4974
  • 95サクラメント      3A    4970
  • 96グリーンビル      A     4879
  • 97キウム         KBO    4858
  • 98モンクローバ      LMB 4838
  • 99レノ          3A    4801
  • 100シュラキュース    3A    4793
  • 101スクラントン     3A    4666
  • 102ランシング      A     4659
  • 103ユニオンラグナ    LMB 4564
  • 104ロングアイランド  Indy 4538
  • 105ウィンストンセーラム2A    4493
  • 106アーカンソー    2A     4478
  • 107サウスベンド    A     4468
  • 108ニューハンプシャー 2A     4346
  • 109アルトゥーナ    2A     4330
  • 110テネシー      2A     4328
  • 111ジャージーショア  A     4269
  • 112グリーンズボロ   A     4221
  • 113ペンサコーラ    2A     4209
  • 114味全        CPBL 4158
  • 115ドスラレド     LMB    4158
  • 116オマハ       3A    4148
  • 117サンアントニオ   2A    4123
  • 118キンタナロー    LMB    4101
  • 119オーガスタ     A     4096
  • 120フレデリクスバーグ A     4071
  • 121シャンバーグ    Indy  4041
  • 122フレズノ      A     4025
  • 123カンペチェ     LMB    4004
  • 124シカゴ       Indy  4000
  • 125チャールストン   A     3992
  • 126ビンハムトン    2A    3978
  • 127シュガーランド   3A    3970
  • 128富邦        CPBL   3961
  • 129統一        CPBL   3959
  • 130マートルビーチ   A     3935

(文中の写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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