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NPBスカウト注目の大卒ルーキー・馬渕歩空の力投で愛媛が大勝【四国アイランドリーグplus】

阿佐智ベースボールジャーナリスト
NPBスカウト注目の右腕・馬渕歩空(愛媛マンダリンパイレーツ)

 昨日9日、松山のマドンナスタジアムで四国アイランドリーグ公式戦、愛媛マンダリンパイレーツ対徳島インディゴソックスの一戦が行われた。

月末にプロ野球オールスター戦が行われる坊っちゃんスタジアムに隣接するマドンナスタジアム
月末にプロ野球オールスター戦が行われる坊っちゃんスタジアムに隣接するマドンナスタジアム

 アイランドリーグは先月25日から後期シーズンが開幕しているが、雨などで試合が流れ、愛媛にとってはこの日が後期2戦目。徳島を迎えてのこの日の一戦に、ここまでチームトップタイの3勝を挙げている馬渕歩空(ほだか・同朋大)が先発のマウンドに立った。今年復帰した弓岡敬二郎監督イチオシの身長186センチの長身右腕は、140キロ台後半のストレートとカットボール、ツーシーム、フォーク、スライダーなどの多彩な変化球とのコンビネーションが持ち味。ストレートのスピードがもう少しほしいところだが、堂々たる体躯から投げ下ろされる球には数字以上の威圧感がある。

試合前には、前期シーズン優秀選手賞に輝いた大城雄一郎選手(小林西高)の表彰式が行われた。
試合前には、前期シーズン優秀選手賞に輝いた大城雄一郎選手(小林西高)の表彰式が行われた。

 しかし、この日は本調子ではないようだった。初回、徳島打線相手に簡単にツーアウトを取った後、3、4番にレフト前ヒットを許しピンチを迎えてしまった。ここは後続を打ち取ったものの、2回には、下位打線を迎えながら先頭の6番平尾蒼凱(そうが・明桜高)にツーベースを許してしまう。さらにはバント処理を誤り自らピンチを広げ、続く8番古川颯(大商大堺高)には死球でノーアウト満塁のピンチを招いた。

2回のノーアウト満塁後の攻撃がこの日の勝敗を分けた。
2回のノーアウト満塁後の攻撃がこの日の勝敗を分けた。

 このピンチを馬渕はタイムリー1本による2失点でなんとか切り抜けるのだが、この踏ん張りがこの日の勝敗を分けたと言っていいだろう。ピンチの後にはチャンスありの言葉通り、その裏、愛媛も徳島先発平安山(へいざん)陽(松山聖陵高)からノーアウト満塁のチャンスを作る。ここで愛媛は8番山崎雅史(順天堂大)のレフト前タイムリーなどで大量5点を奪い、あっさり逆転した。

徳島先発の平安山陽だったが2回の大量失点が致命傷となった。
徳島先発の平安山陽だったが2回の大量失点が致命傷となった。

 その後両軍とも5回に1点ずつを挙げ、両先発投手もこの回でお役御免となるが、その後のリリーフ陣の出来が勝敗を決定づけた。

 選手層の決して厚くない独立リーグでは、リリーフがしばしば試合を壊してしまうが、とくにリードを許している場合は、いわゆる「勝ちパターン」を投入することができないため、傷口を広げてしまうことが多い。この日はその典型のような試合で、徳島は6回に、2番手投手が1アウトも取れず3四死球1安打を許して降板すると、ここで3失点。さらには9回にはこの回からマウンドに上がった4番手投手が5失点と試合を壊してしまった。今日も同じカードが組まれていることを考えると、徳島としては後に響く敗戦だったと言っていいだろう。

 結局試合は14対4で愛媛の大勝。猛暑の中、4時間を超える試合だったが、後期初勝利を挙げたベンチは大盛りあがりだった。試合後のヒーローインタビューの際には、ベンチの弓岡監督から「早よしてや、明日は船で島にいくんやから!」とジョークさえ飛んでいた。

 愛媛マンダリンパイレーツは、今日10日は、同じ徳島インディゴソックスを迎え、上島町生名島のいきなスポレク公園蛙石野球場で公式戦を行う。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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