セ・パ両リーグとも例年にないデッドヒートを繰り広げているプロ野球が前半戦を終え、オールスター戦を迎えようとし、侍ジャパンが金メダルをかけてオリンピックに臨もうかという今、社会人野球では都市対抗と並ぶ大きな大会、日本選手権が行われている。夏に都市対抗が東京で、秋に大阪で日本選手権が実施されるというのが本来のスケジュールなのだが、東京オリンピックのため昨年から両大会の実施時期を入れ替えている。昨年は、コロナ禍でキャンセルされた日本選手権だったが、この夏は無事実施される運びとなった。

高度成長の終焉とともに始まり、今や関西の秋の風物詩となった大会

 この日本選手権のはじまりは1974(昭和49)年。それまであった業種別の日本産業対抗野球大会(産別大会)に代わり、補強選手や合同チームなしの純粋な単独チーム日本一を決める大会として発足したものだった。

 開催場所も産別大会が都市対抗と同じ東京の後楽園球場を使用していたのを、関西圏での実施に改めた。第1回大会は甲子園球場で行い、その後、1980年代は大阪球場、1990年からはグリーンスタジアム神戸(現・ほっともっとフィールド神戸)と開催球場は変わった。そして1997年に大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)が開場すると、以後、ここをメイン会場として社会人野球の1年を締めくくる大会としてアマチュア野球ファンに知られるところとなっている。

 コロナ禍により昨年は中止となったが、今年は京セラドームに本拠を置くオリックス・バファローズの日程とも調整を図るため、1回戦をほっともっとフィールド神戸で実施し、2回戦以後は例年通り京セラドーム大阪で行うこととなった。

コロナ仕様の大会

 昨日13日には準決勝2試合が行われた。第一試合のNTT東日本対三菱重工Eastは6対1で三菱重工Eastが勝利した。

 ホンダと大阪ガスが対戦した第二試合は、ホンダの先発・片山皓心(桐蔭横浜大)が8回まで大阪ガス打線をゼロに封じ込める好投を見せたものの、2対0で決勝進出をほぼ手中に収めたかと思われた9回につかまり3連打を許し、1点を返された上、塁上にランナー2人を置いて降板。リリーフに立った福島由登(青山学院大)が踏ん張れず1アウトも取ることなく、最後は代打に立った大阪ガスのベテラン・青栁匠(亜細亜大)にサヨナラヒットを許した。

サヨナラ勝ちを待ちわびる大阪ガスベンチ
サヨナラ勝ちを待ちわびる大阪ガスベンチ

 見ごたえのある熱戦だったが、今大会の風景は以前とは全く違ったものだった。

 社会人野球と言えば、それぞれの会社が工夫を凝らした応援が見もののひとつだ。学生野球ほどフレッシュではなく、プロ野球ほど洗練されていないものの、若手女子社員による少々音程の危うい(失礼!)応援ソングや、愛社精神に満ちた熱の入った男性社員の拳を振りかざした応援は、ややもすると肝心のフィールドでのプレーから目を離してしまうほど面白い。その応援ぶりからは、日本の繁栄を支えてきた「会社」という存在の日本社会における大きさを感じずにはいられない。

応援合戦もリモートで行われた。
応援合戦もリモートで行われた。

 従来は、内野席に急ごしらえの舞台が設置され、そこで華やかな応援合戦が行われていたのだが、今年はその舞台がなかった。もちろん、応援団も楽団もなし。コロナのせいである。スタンドをみてもいつもの盛り上がりはなく、地元チーム大阪ガスの陣取る三塁側スタンドも決して人は多くない。会社としてもスタンドを密にするわけにはいかず、積極的に応援・観戦を促すようなこともしていないのだろう。

やはりなにかものたりないスタンド
やはりなにかものたりないスタンド

 しかし、その分フィールドの声が驚くほど球場内には響いていた。とくに大阪ガスベンチには「声出し要員」がいるのか、バッターボックスの選手に対し、「当たると思ったら振りに行けー!」などと、まるで少年野球か学生野球のような声がかけられている。

 そして、球音。バットがボールに当たった乾いた音がドームに響く様は、プロ野球が場内放送による応援を再開した今、この大会でしか味わえないものになっている。

 今日、社会人野球日本選手権は、大阪ガス対三菱重工Eastで決勝戦を迎える。「球音」と野球にかける選手たちの「声」を聞きたい野球ファンにはぜひ足を運んでほしい。

(文中の写真は筆者撮影)