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NPB、今シーズンの交流戦中止を発表。新型コロナ禍の中、世界プロ野球の現状はどうなのか?

阿佐智ベースボールライター
他国に先駆けて無観客での開幕を迎えた台湾プロ野球(写真:ロイター/アフロ)

 17日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、プロ野球・NPBは5月26日から6月14日に予定されていたセ・パ交流戦のキャンセルを発表した。当初予定の3月29日から延期されていた今シーズンの開幕については、今後検討し、遅くとも5月上旬に発表とのことだが、緊急事態宣言の対象機関である来月6日までは練習試合も解禁されず、先行きは不透明だ。国内の独立リーグもすでに開幕延期を発表している。

北米プロ野球の状況

 世界最大のプロ野球リーグ、メジャーリーグ(MLB)を擁するアメリカだが、3月末以降急速に感染者数が拡大。累積感染者数は世界最高の70万人に迫っている。

 MLBは当初今シーズンの開幕を3月26日に予定していたが、3月14日になって当時実施されていたオープン戦の中断と開幕の2週間延期を発表。しかし、この後に国内で感染者が急増し、現在のところ開幕の目途は全くたっていない。一部報道では7月に開幕、レギュラーシーズンは100試合に縮小し、日程がずれこむワールドシリーズは寒冷地での開催が危ぶまれるため、中立の温暖地で開催されるとも報じられている。

 トップリーグのMLBが開幕延期とあってその傘下のマイナーリーグも当然のごとく開幕の目途はたっていない。独立リーグも同様で、4月末から5月中旬の開幕が予定されている3大リーグと呼ばれるアトランティック、フロンティア、アメリカン・アソシエーションはともにMLBの方針に追随する方針を表明している。残りのアペンディックス(付録)リーグと呼ばれる短期のサマーリーグに関しては、そもそもの開幕が6月に入ってからということからまだ開幕に関するアナウンスは発せられていない。

 メキシカンリーグは4月6日予定だった開幕を5月11日に延期したが、すでに2度目の延期を発表している。この延期では開幕予定日は設定されず、102試合を予定していたレギュラーシーズンの試合数は削減される模様だ。このリーグは伝統的に前後期制を採用しているので、今シーズンは後期シーズンのみ実施し、その順位に応じてポストシーズンが行われると思われるが、この国では今やラテンアメリカナンバーワンリーグに成長したウィンターリーグ、メキシカンパシフィックリーグが10月末に開幕を迎えるため、夏季のメキシカンリーグの日程をずらせることは難しく、大幅なフォーマットの変更は避けることができないだろう。

開幕へ舵を切りつつある近隣諸国

 中国に続いて感染者が早期に激増した韓国では、3月10日に国内リーグKBOが3月28日に設定していた今シーズンの開幕を延期することを決定。4月中の開幕を目指したが、再延期された。その後、国を挙げてのコロナ封じ込めに成功、4月に入ってからは感染者の増加は激減した。これを受けて、KBOは無観客での5月初旬の開幕を目指し開幕に向けて舵を取り始め、今後のスケジュールについては4月21日に改めて発表される予定だという。

 世界で最も早い3月14日開幕を延期し、ひと月遅れで4月12日に開幕(11 日に予定されていたが雨で延期)を無観客で迎えたのが、台湾のCPBLだ。

 台湾は今回の新型コロナウイルス感染が中国で流行し始めた際、世界に先駆けいち早く対策を講じた国だ。政府は、中国に渡航歴のある外国人に対し中国出国後2週間以上あけねば入国を拒否する方針を打ち出し、検査の徹底などでウイルス蔓延を阻止した。それが功を奏して、いち早い開幕にこぎつけたのだが、400人に満たない感染者の少なさににもかかわらず、いまだ観客を入れての試合開催にはほど遠い状況だ。CPBL当局は、現在のところ現状の防疫対策を維持していく方針である。当初、開幕を迎えるに当たってシーズンシート購入者を150人に人数制限した上、迎え入れる案もあったのだが、これに自治体が難色を示したこともあって、スタンドにファンが戻るにはまだ時間が必要なようだ。

開幕を迎えるためにもステイ・ホームを

 これらの状況を考えると、NPBの開幕は当分難しそうだ。一部報道では、開幕はキャンセルされた交流戦後のリーグ戦再開予定日だった6月19日が有力視されているとも報じされているが、現状を鑑みると、緊急事態宣言が来月7日以降に解除されるとは考えにくく、今シーズンのNPBは大幅な試合数削減とフォーマットの変更を迫られることは間違いないだろう。

 いずれにせよ、球音がスタジアムに響き、スタンドでそれを楽しめるようになるには、可能な人間がステイ・ホームを守ることが必要であるのは間違いない。

ベースボールライター

これまで、190か国を訪ね歩き、22か国でプロ、あるいはプロに準ずるリーグの野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当、WBC2017年大会ぴあのガイドの各国紹介を担当した。国内野球についても、プロから独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。

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