プレミア12 日韓決戦を侍ジャパンが制し、大団円を迎える。この大会を野球興隆の契機に

大団円を迎えたプレミア12の決勝となった日韓戦

 既報のとおり、野球の国際大会、プレミア12は、二夜連続となった日韓戦を侍ジャパンが制してフィナーレを飾った。日本は、前回大会の雪辱を果たして、第二回WBCで同じく韓国を下して優勝以来プロ主体の国際大会において10年ぶりの「世界一」に輝いた。

前回大会の雪辱を果たし、優勝した稲葉ジャパン
前回大会の雪辱を果たし、優勝した稲葉ジャパン

大団円の日韓戦

 メジャーリーガーが出場しないこの大会では、多くの試合で空席が目立ったり、最後に日韓戦が連続して行われ、とくに15日の試合が「消化試合」になってしまったりしたことに様々な批判があったが、国際野球大会において、ホスト国以外の対戦に空席が目立つのはWBCとて同じこと。また、「消化試合」に関しても、トーナメント方式にでもしない限りはどうしても出てきてしまう問題であり、ある程度仕方がないことのように私は思う。無論、15日の試合に関しては、勝った方を翌日の試合の後攻とする(延長がタイブレーク方式であるこの大会では後攻のメリットは非常に大きい)など、改善の余地があっただろう。そもそも、スーパーラウンド以降、日本はすべて後攻だったが、このようなホスト国にあまりに優位なスケジューリングは、大会の正当性を自ら貶めることになるので、やめるべきである。

 また、現在の非常に険悪な両国間関係にありながらも、韓国選手の入場時や好プレーに対し日韓戦のスタンドからは惜しみない拍手が送られ、スポーツを通した親善という国際大会の意義を感じるシーンが多々あった。一部報道では、両国間の懸案事項である旭日旗がスタンドにあったことを取り上げた記事があったが(ちなみにスタンドから見る分には旭日旗は現認できなかった。件の記事を見た私の率直な感想は、「よくもまあ見つけたな」というものである)、全体的には、日本のファンも、決勝には多く詰めかけていた韓国ファンも今や世界最高峰の戦いと言っていい、日韓戦を楽しんでいた。

満員となった決勝の日韓戦
満員となった決勝の日韓戦

 ともかくも、侍ジャパンが決勝まで進み、その決勝の相手が、「永遠のライバル」である韓国であったことで、今大会も大団円を迎えたと言っていいだろう。なぜならば、MLBの協力を得ることができないこの大会にあって、日本が早々に敗退することは、観客動員、テレビ放送などを考えると、大会存続にかかわってくるからだ。そしてもし、そのようなことになれば、「MLBファースト」という野球界の根本的な問題はそのまま継続し、やがては野球自体の衰退につながりかねないと私は思う。

プレミア12を世界野球になくてはならないものにするために

 この大会の観客動員に関しては、序盤の日本戦を含めて、不入りが指摘されることも多かった。その際に比較対象にされたのが、サッカーやラグビーのワールドカップだったが、これらと野球を直接比較して、だからプレミア12は失敗だということにはならないだろう。両者については、そもそも日本が世界トップというわけではなく、日本戦以外の試合の多くは、世界の強豪の対戦というなかなか日本ではお目にかかれない試合であり、とくにMLB40人枠の選手が出場しない本大会においては、トップレベルの日本戦以外に、サッカーやラグビーのような「プラチナ感」はない。ならば、そのような大会など不要ではという意見も出てくるかもしれないが、野球が真のグローバルスポーツに成長していくためには、この大会は是非とも必要だろう。この大会を通じて、各国のプロリーグのレベルが高まり、日韓の座を脅かすようになれば、ホスト国以外の試合にもファンの目が行くようにもなるだろう。

 また、この大会に関して、メジャーリーガーが出場しないゆえをもって、「本気度が足りない」旨発言していた解説者がいたが、それこそ見当違いというべきだろう。メジャーリーガーを参加させていないのは、MLBであって、各国の野球連盟なリーグではない。そもそも出場している選手は、「世界一」を目指して真剣にプレーしており、件の発言こそ、「MLBファースト」による管見がなせる業なのではないか。

3位決定戦で先制HRを放ったアデル(アメリカ)
3位決定戦で先制HRを放ったアデル(アメリカ)

 その出場国の本気度は、3位決定戦に集約されていた。

アメリカとメキシコの関係は、ある意味、日本と韓国に似ている。メキシコは建国以来の歴史において、領土の多くをアメリカに奪われている上、長らく政治的経済的にその従属下に置かれていた。メキシコ人が北の大国に抱く感情には複雑なものがある。また、アメリカには、メキシコにルーツを持つ住民が多数おり、その歴史ゆえに彼らは、「アメリカ市民」でありつつも、「メキシカン」のアイデンティティを根強く持ち続けている。今大会のメキシコ代表チームにもそういうメキシコ系アメリカ人が複数いた。銅メダルとオリンピック出場がかかったアメリカ戦の9回裏土壇場でディクソン(オリックス)から起死回生の同点ホームランを放ったマット・クラーク(元中日・オリックス)や10回裏にバットを折りながらもサヨナラヒットを放ったエフレン・ナバーロ(元阪神)がまさにそうだ。

 決勝戦に先立って行われた試合には、1万人弱の観客しか訪れていなかったが、150キロ台の速球を投げる投手や座ったままの送球で盗塁を刺すマイナーの有望株をそろえたアメリカに、メキシカンリーグの選手中心のメキシコが勝利したこの試合が、見ごたえという点では今大会のベストゲームだったかもしれない。

アメリカとの決戦を制し、東京五輪行きを決めたメキシコ
アメリカとの決戦を制し、東京五輪行きを決めたメキシコ

 この大会、打倒侍ジャパンが各国代表の目標であったことは間違いない。侍ジャパンと相まみえた世界の強豪たちは、MLB以外にレベルの高い、見本とすべき野球があることを痛感し、今後の自国の野球の発展に生かすことを決意したことだろう。その代表例が、前回の4位から3位に順位を上げ、来年の東京オリンピックへの出場を決めたメキシコだ。

 プロリーグと野球連盟の足並みがそろわず、メンバー招集にも難儀した反省を生かし、この4年、メキシコは、トップリーグ、メキシカンリーグと野球連盟が二人三脚でナショナルチームの「挙国一致体制」を整えてきた。その過程で、2016年秋と今年の春の侍ジャパンとの強化試合を行った。この動きは、それまでトップリーグがMLB傘下の3Aクラスリーグという扱いを受けてきたメキシコの「独立」への第一歩かもしれない。今回、メキシコが国内リーグ、メキシカンリーグの選手を中心にメンバーを組み、将来のメジャーリーガーたちの集うアメリカを破ったことは、大きな自信となったことだろう。

 また、日本のファンの声援は、各国の選手、関係者に世界に「もうひとつのメジャーリーグ」があることを知らしめた。この大会の主催者である世界野球ソフトボール連盟の、記者Riccardo Schiroliは、日韓戦の応援席を見て、母国イタリアのサッカーファン以上の熱狂だと、日本における野球熱を絶賛している。

 侍ジャパンの緻密なプレーに、熱心ファンの存在は、ネットを通じて参加国の野球のファンに伝わっている。逆に、他国のパワーとスピードあふれるプレーに日本球界も学ぶ点はあるだろう。今後野球が発展していくためには、野球の面白さを世界中に伝え、各国がプレーレベルを向上させる必要がある。つまりは、この大会をさらに盛り上げていくには、日本が優勝しにくい状況を作っていくことが必要なのだが、それまでは、プレー面、大会の運営面で日本がリーダー的な役割を果たしていくべきだろう。

 聞くところによると、北米におけるMLBの繁栄にも陰りが出てき始めているという。スポーツのグローバルな繁栄に、一極集中はありえない。野球の持続的発展には多極化が必要なことは間違いないだろう。将来的に、一定の条件付きであっても、メジャーリーガーの参加も認められる日が来ることも祈りつつ、それまでは、日本がリーダーシップをとってこの大会を先導していってもらいたいと切に願う。

 最後に、稲葉監督と侍ジャパン、そして世界最高レベルのゲームを見せてくれた韓国代表チームに敬意を表す。

(写真はWBSC提供)