韓国野球レポート:ボールパークブームの火付け役、光州・キア・チャンピオンフィールド

光州にあるキアタイガースの本拠地球場、キアチャンピオンズフィールド

 すでに2つの記事で紹介したが(「韓国野球レポート2019:『身売り』はしないが、名前は変わる不思議な球団、キウム・ヒーローズ 」、「韓国野球レポート2019・NCダイノス、新球場、昌原(チャンウォン)NCパークで開幕 」)、2010年代になって韓国では野球場のイノベーションが急速に進んでいる。この年代になって4つの新球場が韓国プロ野球界に誕生したが、その先陣を切ったと言えるのが、2014年春に開場したキア・タイガースの本拠地、キア・チャンピオンフィールドだ。内野の高層スタンドに低い外野席というアメリカのボールパークに多い形状は、その後、開場した大邱(テグ)のサムソンライオンズパーク、先日紹介した昌原(チャンウォン)のNCボールパーク馬山にも受け継がれており、その意味で韓国のボールパークブームの火付け役と言える。

キアチャンピオンズフィールドの偉容
キアチャンピオンズフィールドの偉容

KBO優勝最多の11回。名門、キア・タイガース

 朝鮮半島南西部の全羅南道の道都、光州(クワンジュ)。この町の野球チーム、タイガースは、韓国プロ野球創設以来、11回の優勝を誇るまさに「チャンピオン」だ。発足当初は食品工業を中核とする財閥が所有し、ヘテ・タイガースを名乗っていたが、このヘテ時代に9回の優勝を飾っている。とくに日本でもクローザーとして活躍した宣銅烈(ソン・ドンヨル)を擁し4連覇を含む7回の優勝を成し遂げた1986年から95年の10年間はまさに黄金時代で、ソンが中日に移籍した96年以降も、「風の子」と称された俊足好打の外野手、李鍾範(イ・ジョンボム)が打線を引っ張り連覇を成し遂げた。李もまた98年には中日に移籍したが、黄金期を支えた投打の主力の背番号はともにチームの永久欠番となっている。

上層スタンドに飾られているふたつの永久欠番、李鍾範の7と宣銅烈の18
上層スタンドに飾られているふたつの永久欠番、李鍾範の7と宣銅烈の18

 

 しかし、97年に韓国を襲った通貨危機は、親会社が比較的小規模なヘテ・タイガースを直撃、チームは選手をトレードマネー目的で放出するなど壊滅状態になった。そこに、新たなオーナーとしてやってきたのが、光州を企業城下町にしている自動車産業の大手、起亜自動車だった。2001年シーズン途中、起亜はタイガースを買収、潤沢な資金をもってチームの再建を図った。その効果はすぐに現れ、翌02年には5年ぶりにポストシーズン進出を果たし、09年には悲願のV10となるキア球団初優勝を飾っている。そして14年には、それまで使用していた無等球場に代わる本拠地を隣接する地に建設、17年にはその新球場、チャンピオンズフィールドで初となる11回目の韓国シリーズ制覇を成し遂げた。

旧本拠、無等球場に隣接して建てられた新球場チャンピオンズフィールド

旧本拠、無等球場から新球場チャンピオンズフィールドを望むと、その壮大さがよりわかる
旧本拠、無等球場から新球場チャンピオンズフィールドを望むと、その壮大さがよりわかる

 新球場・キアチャンピオンズフィールドは、それまでの本拠、無等球場横の競技場を取り壊した跡地に建てられた。旧スタジアムに隣接して新スタジアムを建てるというやり方は、メジャーではおなじみの方法で、日本でも、東京ドームが同じやり方で後楽園球場からの移転を行った。韓国でも、今年新球場に移転したNCダイノスの本拠、昌原(チャンウォン)が同じ方式を採用している。新球場建設の決まったハンファイーグルスの本拠、大田(テジョン)も同様に現在球場に隣接する競技場を取り壊して新球場を建設の予定だ。

 ただ韓国の場合、新球場への移転後も旧球場を取り壊さないパターンが多いようだ。二軍本拠として利用することになった昌原の旧馬山球場もそうだが、光州でも旧球場である無等球場は取り壊さずそのまま活用する。ただし、旧球場を二軍の本拠として使用するNCとは違い、キアは本拠地光州近郊の咸平郡に二軍施設を建設しているので、無等球場は今後、アマチュア専用球場として利用される。

旧球場は今後アマチュア用の球場として利用される予定だ
旧球場は今後アマチュア用の球場として利用される予定だ

球団の歴史を振り返る博物館

タイガースの歴史を残す博物館
タイガースの歴史を残す博物館

 この新球場のレフト外野の傍にはスタンドに沿って細長い建物が建っている。ヘテ時代も併せたタイガースの歴史を振り返る「殿堂博物館」で、試合前に来場者は入場無料で入館できる。館内には、タイガースの歴代のユニフォームに優勝トロフィー、それに球団が表彰する永久欠番の2人を含む「タイガース殿堂」入りした選手に関する展示がなされている。これに加えて2階には、新球場・チャンピオンズフィールド完成の過程を描いた写真パネルの展示もあり、回遊性のある新球場とともに試合開始前の時間を有意義に過ごすことができるようになっている。

タイガースの歴代ユニフォーム
タイガースの歴代ユニフォーム

ボールパーク様式の新球場

 球場内に入ると、まるでメジャーリーグのボールパークに来たかのような錯覚を覚える。

 収容は2万7000人。しかし、座席数は約2万2000席、そのほとんどが高くそびえる内野スタンドにある。外野には芝生席とその背後にグループ用のピクニックテーブル席があるだけだ。それでも旧本拠の無等球場より9000席ほど増えている。将来的にはここにスタンドを設置して収容人数も増やすことができるが、光州の人口150万と現在のKBOの市場規模を考えれば、この規模が適正だと、キアの広報、イ・スンブン氏は言う。

「メジャー仕様」の内野高層スタンド
「メジャー仕様」の内野高層スタンド

 内野スタンドは3層。中層はラグジュアリーシートになっている。急傾斜の上段スタンドからは広大なフィールドの向こうに旧球場の名の由来となった国立公園ともなっている名峰、無等山を望むことができる。

 時として危険だと批判を浴びる急傾斜のスタンドだが、前の観客がフィールドへの視線の妨げになることはほとんどなく、非常に見やすい印象だ。

バックスクリーン上にある遊戯施設。子供をここで遊ばせ、親たちは思い思いの方法でボールパークを楽しむ
バックスクリーン上にある遊戯施設。子供をここで遊ばせ、親たちは思い思いの方法でボールパークを楽しむ

 外野の芝生席だが、ここにこのボールパークの特徴が集約されていると言っていい。「ボールパーク」という言葉には、単にフィールド上の競技を観る場を示す「スタジアム」以上の、休日を家族で一日過ごす場とでもいうべき意味が含まれている。野球は人々が日永を過ごす触媒でしかない。プレーに集中したい者はフィールドに目を凝らし、友と食事を楽しみたい者はピクニックエリアでバーベキューを楽しむ。そして、まだ野球のルールがわからない子どもたちも、バックスクリーン下にある遊戯施設やその両脇にある砂場で遊びに夢中になることができる。

外野は基本的に芝生席となっている。バックスクリーン横の砂場は高いネットで覆われ、子供たちが試合そっちのけで砂遊びに興じていた
外野は基本的に芝生席となっている。バックスクリーン横の砂場は高いネットで覆われ、子供たちが試合そっちのけで砂遊びに興じていた

 北海道でのボールパーク構想が動き出しているが、日本では2009年の広島・マツダスタジアム以降、プロ野球一軍の新球場は新造されていない。スタジアムのイノベーションに関しては韓国は日本の一歩も二歩も先を行っていることを象徴するような球場が、このキア・チャンピオンフィールドであると言っていいだろう。

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