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ファン垂涎!オリックス・バファローズ激励パーティーの「歩き方」

阿佐智ベースボールジャーナリスト
シーズン前の激励パーティーで決意を新たにするオリックス・バファローズ一同

 梅の花が満開になるこの時期、オリックス・バファローズは激励パーティーを例年催している。通常、この手のパーティーは、スポンサーをはじめとする地元財界とメディアを招いて行うが、オリックス球団の場合は、年間シート購入者や入会金十数万円という高級ファンクラブ加入者もファン代表として参加することができる。

 大阪市内の高級ホテルのパーティー会場をふた間借り切っての盛大なパーティーには、選手、指導者はもちろん、球団フロント一同が参加者1600人を前に会し、ファン、サポーターの声をじかに聞く。オープン戦のさなか、選手にはかなりの負担になるだろうが、ファンを大切にするこの姿勢が、今や閑古鳥とは無縁の球団を作り上げたと言える。

 このパーティーの様子については、すでに他メディアで報道されているが、ここではファン目線に立ったパーティーの様子をお伝えしたい。

オープニングの挨拶でスピーチする選手会長のT-岡田
オープニングの挨拶でスピーチする選手会長のT-岡田

華やかなオープニング

 大阪の玄関口、大阪駅からは市内北部各所に散らばる主要ホテルへの無料シャトルバスが出ている。ここから会場へアクセスしようとバス乗り場へ向かう。ちょうど小型バスが停まっていたが、20分後のバスに乗るよう指示される。振り向けば、バス待ちの長蛇の列。運転手は申し訳なさそうに、「すみません。今日はオリックスのパーティーがあるもので」と満席のバスを出発させた。私は、電車で向かうべく駅へ戻る羽目に。

 会場に着くと、ちょうどパーティーが始まっていた。オープニングは例年、オリックス球団が誇るチアダンスチーム、「B’sガールズ」のパフォーマンスから始まる。美女揃いのこのチームには、今や固定ファンがついており、スタンドには野球を見に来ているんだか、彼女たちを見に来ているんだかわからないようなオタク系ファンも多い。さすがにこの日は、「それ系」のファンはいなかったが、会場中央奥のステージ前に陣取る報道カメラマン人が、なぜか「カメラ小僧」に見えてしまう。某社のカメラマンが、「チアの撮影、嫌なんですよね。カメラ小僧に間違われるんで」と笑っていたことを思い出す。

 華やかなオープニングが終わると、いよいよチーム一同が壇上に上がる。参加者のボルテージは一挙に上がる。そのあとは、財界を代表しての後援会長と宮内球団オーナーの挨拶。ともに、「毎年同じことを言って申し訳ない」と言うところにこのチームの苦悩が見て取れる。それでも、今年も「期待十分」との例年通りのコメント。会場の盛大な拍手に、オリックスファンの「温かさ」を選手、スタッフ一同感じたことだろう。

 挨拶の後は、鏡割り。この後の、乾杯からいよいよ宴が本格的にスタートする。

鏡割りで宴はスタートする
鏡割りで宴はスタートする

盛大な料理に酒、それよりも選手とのふれあい

腕によりをかけてつくられた料理が提供される
腕によりをかけてつくられた料理が提供される

 パーティーは立食形式。ふた部屋ある会場ホールの両端には、大阪風の押し寿司やうどん、焼きそば、たこ焼きといった大阪のソウルフードから肉料理、カレー、そしてデザートが並ぶ。しかし、これらに目を奪われる参加者は多くない。場内各所に置かれた円卓テーブルには、乾杯時点ですでに多くのファンが陣取っている。来場時に各選手の配置図が公開されているので、参加者はテーブルでお目当ての選手を待ち構えているのだ。私がたまたまいたテーブルは着飾った女性がほとんど。彼女たちのお目当ては、イケメンで人気急上昇中の武田健吾選手。高卒4年目の昨シーズン、97試合に出場した若手のホープだ。

 選手たちは、球団から手渡された各々の野球カードを手にテーブルへ向かう。そのカードや来客の持参したグッズに彼らはペンを走らせ、記念撮影に応じ、そしてファンの声に耳を傾ける。プロ野球選手といえどもファンあっての人気商売。この日の1時間ほどだけはファンサービスに専念だ。

 ファンは、料理に手を付けるのと、選手にサインをもらうのとのバランスを考えながら、場内をめぐる。長打の列にならんでも主力選手のサインをゲットするのか、とにかく数を集めようと、若手選手中心に回るのか。はたまた、マニアックなファンは、かつての名選手であるコーチ陣にサインをねだっていくが、これは少数派だ。

 この場は、ある意味選手が自身のステイタスを痛感する時間である。主力選手のテーブルには例年長蛇の列ができる。とくに今年は、伊藤、中島という「イケメン・ツートップ」が同じテーブルとあって、そこだけはまさに修羅場と化していた。その一方、無名の若手選手たちは、手持ち無沙汰にしている。主力選手が手をつけることもない料理も、彼らにとってはごちそうだ。焼きそばをほおばりながら、時折やってくるファンに応じている。長蛇の列を前にして、ペンを走らせるのは、主力選手にとって、この時期、決して本意ではないのかもしれないが、その長蛇の列こそが、自らのステイタスを表している。そういえば、今や、パーティー開始直後に並んでも、サインをもらえないこともある、選手会長の主砲T-岡田も、かつては、自身の姿が載ったベースボールカード片手になすすべなくたいくつそうに突っ立っていたものだ。

 

 選手に対し、すでに現役を引退したコーチ陣は、のんびりしている。かつては自分の前に長蛇の列があったような人も、いまでは、テーブルの前でひまそうだ。人気商売のプロ野球。選手こそが華なのだが、あるコーチは、「この方が楽ですよ」と笑っていた。

見どころ満載!と様々なイベント

 先述したように、このパーティーは隣接したふた部屋で行われる。サブ会場はイベントスペースとなっており、メイン会場で主力選手と移籍者を含む新入団選手のインタビューが行われるのと並行して、若手選手主体のくじ付きのトークショーが行われていた。この部屋全体が若手選手が陣取る場所のようで、場内の円卓テーブルには、若手や育成選手など「金の卵」たちが、どう振舞えばいいのかとまどいながらファンを待っていた。こちらにはビッグネームは少ないものの、メイン会場よりものんびりしており、選手とのふれあい度という点では、ポイントは高い。数も少ないこともあり、サインや写真撮影に応じる選手の応対もより丁寧だ。初々しい選手の中からお気に入りを見つけようというコアなファンにお勧めの場所と言える。盛り上げ役の宮崎選手中心の進行により舞台上で行われていた抽選会では、主力選手のものを含む様々なサイン入りグッズが、集まったファンにプレゼントされていた。

第2会場で催された抽選会
第2会場で催された抽選会

 夢のような約1時間の選手との交流もあっという間に過ぎてしまう。最後は、メイン会場の舞台に再びチーム一同が全員集合。今シーズンの健闘をファンに約束してパーティーは中締めとなった。

 そして最後、帰りにはB’sガールズの見送りの後、手土産をもらって解散となる。これから開幕まで3週間ほど。ここでひいき選手を見つけた、あるいはひいき選手への思いをますます強くした「オリ達」、「オリ姫」は、期待に胸をときめかせながらオープン戦を見守ることになる。

(写真は全て筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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